溶接作業中に発生した酸素欠乏災害
業種 | 金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.639
発生状況
本災害の発生した工場では、タービンコンプレッサーの潤滑油の清浄、冷却用の装置の組立作業を行っていた。この作業には、溶接工である被災者をはじめ、パイプの取付け工2名、仕上げ工3名、電気計装工2名の合計8名が従事しており、被災者は潤滑油貯蔵タンクに通じるパイプの溶接作業を指示されて、1人で溶接作業に従事していた。通常パイプとパイプを溶接する場合にはパイプ内に酸化を防止するためにアルゴンガスを流して、パイプの外からTIG溶接(アルゴンガス使用)をすることになっていた。
災害発生当日、被災者は、午前9時45分頃から、潤滑油貯蔵タンクに取り付けるパイプの接合部の溶接作業を始めた。
被災者は2インチのパイプ3カ所、4インチのパイプ1カ所を溶接し、次に4インチのパイプ2カ所の溶接をしようとし、その前に何らかの理由でタンク内に入ったところ、すでにタンクの中に充満していたアルゴンガスにより酸素欠乏症になり死亡したものである。
昼食時になっても被災者が食堂に現れないので、上司が捜したところ、タンク内で倒れている被災者を発見したものである。
原因
[1] パイプの溶接をする時は、酸化防止のためパイプ内をアルゴンガスで置換をする。本来の作業手順では、タンクの頂部のフランジ部分をはずし、アルゴンガスを流した後、端をガムテープで閉止し、パイプ内をアルゴンガスで置換するものであったが、被災者は、フランジをはずす手間を省くため、アルゴンガスを流しながらタンク内のパイプの端をガムテープで閉止しようとし、既に酸欠状態となっていたタンク内に入ったこと。[2] 被災者が従事していた溶接作業は単独作業であり、作業標準が適切に守られているかを誰も確認していなかったこと。
対策
[1] タンク等に通じるパイプの内部を不活性ガスで置換する場合は、タンク内部への不活性ガスの漏洩を防止するため、閉止板を施す等の措置を講ずること。[2] 酸素欠乏災害等を防止するために作業標準を作成し、関係作業者に対して十分な教育を行うこと。
[3] 複数の職種の作業者が混在して作業を行う場合は、責任者を定め、作業標準に従って作業が行われているかの確認を行うこと。