パチンコ玉の研磨作業で有機溶剤中毒
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.636
発生状況
パチンコ店の地下室において、有機溶剤(テトラクロロエチレン61.5%、トルエン33.8%)を含有する研磨液を用いて、表面の汚れたパチンコ玉を自動研磨機にかけて磨いていた作業者が、発生した有機溶剤蒸気を吸入し、被災したもの。同パチンコ店は、1階が遊戯場で、地下は自動研磨機のある小部屋(縦、横、高さともに1.8mの広さ)になっていて、パチンコ玉は、適宜、地下へ搬送され、研磨される。
設置されている研磨機は、径40cm、長さ90cmのドラムが回転する構造になっており、このドラムの中に玉をコンベアにより搬入し、さらに研磨液と、古くなった革(研磨材)をドラムの中に入れ、30分から40分間ドラムを回転させることにより玉を研磨するものである。地下室では研磨材として用いられる革を交換する作業が行われる。
地下室には天井部分(1階床部分)に0.6m×1.1mの大きさの昇降口(通常はふた板で覆われている)が設けられていたが、窓や通気孔はなく、設置されていた扇風機も換気装置として十分役割を果たしていなかった。
被災者は、事故当日の午前11時30分ごろ、はしごを利用して、地下室へ行き、研磨機のドラムに、研磨液をコップ8分目入れ、さらにコップ1杯分を追加してから自動研磨機を起動させた。
なお、被災者は、事業者から、研磨液の使用量は盃2杯程度でよいと説明を受けていたが、多く入れるとそれだけ短時間でよりきれいに仕上るものと考えて、多量の研磨液を入れたものである。
起動後、被災者は、引き続き地下室にとどまり、1階から地下室の玉受け箱に玉が送られる際に飛散して地下室床上に散乱している玉をマグネット工具を利用して拾い集めたり、研磨機を止めて、研磨材の革を交換したりしていた。
昼食時になっても、被災者が地下室から戻らないのを不審に思った同僚が、地下室をのぞいたところ、地下室の床上に横になっている被災者を発見し、近くの病院に収容したものである。
なお、後日、事故当時の状況を再現し、作業環境測定を行ったところ、テトラクロロエチレンについては、許容濃度の約6倍(検出値315ppm、許容濃度50ppm)、トルエンについては、許容濃度の約2.6倍(検出値263ppm、許容濃度100ppm)の高濃度の有機溶剤が検出された。
原因
[1] 地下室中の換気が十分でなく、高濃度の有機溶剤が室内に充満したこと。[2] 指示されていた使用量を超えて、有機溶剤を使用したこと。
[3] 有機溶剤の人体に及ぼす影響等について認識が低かったこと。
対策
[1] 研磨設備の密閉化、局所排気装置の設置等発生する有機溶剤が地下室内に充満しない措置を講ずること。[2] 有機溶剤作業主任者を選任し、作業者の指揮等を行わせること。
[3] 雇入れ時の安全衛生教育及び有機溶剤業務従事者の労働衛生教育を実施すること。
[4] 研磨液を有害性の低い物質に代替すること。
[5] 地下室に入らないで研磨機を操作できるようにするなど、作業方法等を改善すること。