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労働災害事例

アーク溶接中、直下のドラム缶にスパッターが入り、金属粉等が災上

アーク溶接中、直下のドラム缶にスパッターが入り、金属粉等が災上
業種 電気通信工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) アーク溶接装置
災害の種類(事故の型) 火災
建設業のみ 工事の種類 電気通信工事
災害の種類 爆発・火災等
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.623

発生状況

本災害は、工場内に新生産設備を導入するのに伴う電気工事中に発生した。
 この工事は、工場内の2ヶ所に分電盤を設置するとともに、これらと電気室を結ぶ電気配線のための配管ダクトの中に約100mにわたって通すというものであった。この工事の主な作業は、配管取付け作業とプールボックス(配管の点検ボックス)据付け作業の2つであった。
 災害発生当日、朝から作業者A、B、Cは、プールボックス取付け作業にとりかかった。この作業は、配管ダクト内にある既設のアングルに2本のアングルを新しく溶接し、このアングルから各2本ずつ4本のボルトで保守点検用のプールボックスを吊るというものであった。
 まず、配管ダクト内への出入口をつくるため、地上から3.7mの高さにある配管ダクトにはしごをかけ、95×145cmの穴をあけた。配管ダクトは銅製のアングルで骨組みされ、その外側にたる木が組まれ、外部を耐火スレート板で覆ってあるもので、奥行190cm、幅145cmの矩形をしている。次に、A、Bの2名は、プールボックス据付けのための新しいアングルの溶接作業にとりかかった。
 この溶接作業は、Aがアーク溶接のホルダーを持ち、Bがアングルを支えるという分担で行われた。このとき、2人は、配管ダクトの骨組みアングルを足場に作業を行っていた。新設アングルの片側を仮付けして、もう一方の溶接を行っていたとき、作業箇所のほぼ真下にあったドラム缶の内容物が炎上した。
 この火が、真上で作業していた2人にも及び、Aはすぐ飛び降りたが、Bは作業着に着火し、地上に落下、全身火傷で死亡した。事故時に工場の担当者と打ち合わせのため現場を離れていたCも消火作業中に火傷を負った。
 炎上したドラム缶は容量200lのもので、現場に2本置いてあり、消火後はいずれも内容物が全て燃えてなくなっていた。このドラム缶には、蓋がなく、工場の生産ラインの研磨工程で発生する研磨粉等以下の廃棄物がはいっていた。
・ アルミニウム合金ダイカストの研磨粉
・ 加硫ゴムの研磨粉
・ 切削油
・ 水
 この廃棄物は、通常、廃棄物処理業者にその処理を委託しているが、事故当日は2ヶ月間の廃棄物が貯蔵されており、2本のドラム缶が満杯になっていた。この廃棄物の発火性については、工場側の担当者も全く認識がなかった。

原因

本災害は、発火のおそれのある物質の近くで、火源となる可能性のある溶接作業を行っていたことが直接の原因であるが、工事業者のみならず、工場側にもドラム缶の内容物の発火性について認識がなかったことも原因の1つである。
 ドラム缶の内容物の燃焼については、
[1] 研磨粉が溶接のスパッターにより直接燃焼した。
[2] アルミニウムの研磨粉が水と反応して水素が発生し、これが溶接のスパッターにより、発火した。
 の2通りが考えられる。

対策

[1] 事業場内で貯蔵する物質等については、原料、材料のみならず、廃棄物等についてもその物理的性状、化学的性状を把握し、適切な貯蔵方法をとること。
[2] 作業内容については十分打ち合わせを行い、作業場所、作業内容からみて危険と思われる、もしくは、未知の物質がある場合は、事前に確認、撤去等を行うこと。
[3] 危険予知訓練等、災害防止のための活動の活性化に努めること。