次亜塩素酸ソーダ送給時に発生した塩素ガスで中毒
業種 | 道路貨物運送業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.618
発生状況
被災者の雇用されていたA運送は、主としてB社の塩酸、硫酸、次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ等を運送しており、ローリー、トラック10両を所有している。製品の誤送給を防止する対策として、B社の製品だけを購入している事業場に対しては、タンク側の送給口と事業場側の受入口の口径を物質ごとに違えて別の物質が入らない構造になっている。また、他社の製品も購入している事業場で、受入口の口径が合わない場合には、補助パイプを用いて送給を行っている。
災害発生当日、被災者はB社でトラックの専用タンクに次亜塩素酸ソーダ水溶液900kgを積み、C社に向かった。C社に到着した被災者は、業務課の係員に送り状等を示したところ、係員は、同日、塩酸が入荷することになっていたので、送り状を確認せずに塩酸が到着したものと錯覚し、塩酸納入用の書類を被災者に渡して検査課と動力課に行くよう指示し、動力課に電話で塩酸が入荷したと連絡した。
検査課では、常時購入している製品については品質試験を省略し、書面検査のみを行っているが、当日も業務課で渡された書面を見て塩酸が入荷したものと了解し、送り状の確認はしなかった。
動力課では、業務課からの電話を受け、塩酸が入荷したとの先入観にとらわれ、タンク後部の標示(品名と容量が記載してある)を確認しなかった。被災者が「動力課に来たのは初めてであったが、構内の他課には行ったことがある」と言うと、動力課の担当者は送給作業についてはまかせておいて大丈夫と判断し、受入側のパイプの位置を示すとボイラー室に戻った。
C社は塩酸、硫酸、次亜塩素酸ソーダおよび苛性ソーダを全てB社から購入しているため、補助パイプ無しで送給できるようになっていた。したがって次亜塩素酸ソーダの送給口と動力課の塩酸タンクの受入口は口径が合わないようになっていたが、被災者はこれらを補助パイプでつなぎ、次亜塩素酸ソーダを塩酸タンクに送給した。この時塩酸タンクには塩酸が約550l残っていた。
送給開始後7〜8分(送給量約600l)すると、排水中和タンクから、黄色い煙(塩素ガス)が出てきた。被災者は煙に気付きすぐに送給を止めたが、間もなく塩酸タンクのマンホールが破損し、多量に噴出した塩素ガスを吸入し、被災したものである。
なお、被災者は被災1.5カ月前にA運送に入社し、最初の1カ月は先輩運転手に添乗してもらい、指導を受けていたが、その後は単独で運送に従事していた。
原因
[1] A運送の運転手に対する安全衛生教育が不十分であったこと。[2] C社業務課で送り状を確認せずに誤った書面を被災者に渡し、被災者もその内容を確認しなかったこと。
[3] 検査課、動力課でも業務課から渡された書面と送り状との照合を行わなかったこと。
[4] 動力課担当者がトラック誘導の際タンクの標示を確認しなかったこと。
[5] 動力課担当者がパイプの接続を確認せずに現場を離れたこと。
対策
[1] 製品納入に係る作業規定を定めるとともに、運転手に対し定期的に安全衛生教育を実施すること。[2] 製品納入時には、各部署で品名を口頭で告げるとともに、送り状と納入先の書面との照合を行うこと。
[3] B社の送り状、C社の納入用書類等は、製品の種類により色分けし、B社、C社色を統一しておくこと。
[4] 製品の受入口には、品名を見やすい方法で標示しておくこと。
[5] 指差呼称を徹底すること。