職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

静電粉体塗装ブース内で吹付け装置の取替え作業中に出火

静電粉体塗装ブース内で吹付け装置の取替え作業中に出火
業種 その他の繊維工業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の装置、設備
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.570

発生状況

本災害は、静電粉体塗装ラインの塗装ブース内で粉体塗装装置の吹付けガンの取替え作業中に突然出火し、ブース内で作業を行っていた作業者3名とブース外で作業を行っていた作業者1名が火傷を負ったものである。
 災害が発生した事業場は、従業員数約30人で、プレハブ住宅用スチール部材を製造している(以下「A社」という)。また、構内下請事業場は7事業場で、その合計従業員数は約60人である。
 災害が発生したのは、粉体の塗料に静電気を帯びさせて部材に吹き付ける粉体塗装ラインで、この工程には構内下請事業場の作業者14人を含む18人が従事していた。
 災害発生当日は、粉体塗装装置の吹付けガンの交換作業を行った後、ラインを稼働させることになっており、8時30分からミーティングを行い、8時35分から作業を開始した。作業に従事したのは、A社の粉体塗装課の主任およびオペレーターならびに構内下請事業場であるB社およびC社の作業者であり、A社主任がこの作業の指揮を行った。
 はじめに、吹付けガン交換の準備作業を行い、次にA社の主任、オペレーター、B社の作業者の3人が塗装ブースの中に入り、吹付けガンの交換作業等を開始した。
 塗装ブース内で作業が始まってから20分ほどして突然ブース内から炎が吹き出し、中で作業を行っていた者が衣服に火がついたまま飛び出してきた。その際、塗装ブースの傍らでタンクから床にこぼれた粉体塗料を回収していたC社の作業者も火傷を負った。
 そして、A社主任は火傷が原因で死亡し、オペレーターおよびB社作業者も火傷による重傷を負ったものである。
 塗装ブース内には、壁、床等に粉体が付着しており、その厚さは5〜6mmほどであった。これが炎上したものであるが、その焼け跡から焼け焦げた投光器ホルダーが発見されたことから、持ち込まれた投光器が落下しランプが割れ、これが点火源となったものと推定される。
 燃えた塗料は、2種類でその成分等は次のとおりである。
[1] 樹脂58% 硬化剤4% 添加剤1% 顔料37% 引火点280℃ 発火点550℃
[2] 樹脂、硬化剤70% 添加剤1% 顔料29% 引火点300℃以上 発火点392℃
 このように、粉体塗料は可燃性の粉じんということができる。
 投光器ホルダーに付いていた投光用ランプの性能等は次のとおりである。
[1] 省電力型屋外投光用反射型電球
[2] 表面温度(露出部)36℃〜185℃
[3] フィラメント温度 約2,500℃
 また、本投光器は防爆構造ではなかった。ランプが割れフィラメントが露出した場合、引火点を超える温度に容易になることが推定できる。

原因

[1] 塗装ブース内の壁、床等に粉体塗料が付着していたこと。
[2] 吹付けガンの交換作業のために、塗装ブース内に防爆構造でない投光器を持ち込んだこと。
[3] 投光器が落下、破損し、露出したフィラメントが点火源となり、粉体塗料が炎上したこと。
[4] 吹付けガンの交換に係る作業標準が策定されていなかったこと。

対策

[1] 可燃性の粉じんである粉体塗料による火炎を防止するため、除じん等の措置を講じること。
[2] 粉体塗料が存在して火災のおそれのある場所においては、高温となって点火源となるおそれのある機械等を使用しないこと。
 この場合における「点火源となるおそれのある機械等」は、落下により電球が割れた投光器である。本事例のような場合は、落下等により電球が割れることのないものを使用することが必要である。
 なお、防爆構造のものであればさらに望ましいものである。
[3] 吹付けガンの交換その他の点検整備作業を行う場合の作業方法や注意事項等を定めた作業標準を策定し、作業に従事する者に周知、徹底すること。