原酒貯蔵タンクの溶接作業中に爆発
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | ガス等の爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.521
発生状況
焼酎製造メーカーであるA酒造では、原酒の貯蔵タンク2基の保温のため外側を断熱材で覆う工事を行うことにし、B建設に約3週間の工期で工事を発注した。B建設では、まず最初に外部足場の設置を終了し、災害発生当日は、断熱材取付け用のアングルをタンクの周囲に溶接する作業を行うことにしていた。アングルは、タンクの周囲に沿って鉢巻き状になるように溶接されるものであり、6本をつなぎあわされてタンクを一周し、1段分になる。また、計9段分を取り付けることになっていた。
当日は、B建設の現場責任者である甲からの前日の指示に基づき、下請けのC工業の乙、丙、丁、戊の4名で作業にとりかかったが、B建設の甲は、別の現場の用件があり、朝から不在であった。
作業は、乙がアーク溶接を受け持ち、他の3名はアングルを足場の上に運びあげるとともに、溶接時にアングルを持って支えることにして、まず1基目は下から順に溶接を行い、昼食をはさんで午後すぐに完了した。引き続き2基目の作業に入ったが、こちらは上から順に作業を行っていったところ最上段6本のうち3本目を溶接中に爆発が起こり、タンクが破裂し、爆風により1名が火傷を負った。たまたま、破裂した箇所が溶接していた場所と反対側であったため、被害者が少なかったが、多数の死傷者が出てもおかしくない災害であった。
なお、タンクには、エチルアルコールの濃度44%の原酒がタンク容量の約8割入っていたが、作業者はそのことを知らなかった。
原因
[1] タンク内にエチルアルコールがあったにもかかわらずアーク溶接を行ったため、その熱が原因となり、エチルアルコールが爆発した。[2] タンク内を空にすべきことについては、事前の打ち合わせの段階で、B建設の現場責任者である甲が、『工事中はタンク内を空にしておかないと危険である』旨を発注者であるA酒造に伝えてあり、前日のA酒造との打ち合わせにおいても、溶接を行う予定であること、また、その際貯蔵タンクの中は空にしておいてほしい旨話をしたため、当日は当然タンク内は空になっていると思い、それを前提に作業指示を行っていた。
そのため、作業者乙らは、タンク内が空であるかどうかの確認をすることなく、溶接作業を行ったこと。
特に、本タンクは酒造法により保税タンクとされており、A酒造の者しか、タンクのふたを開けることができず、それ以外の方法でタンク内の残量を確認する方法はタンク残量計によるしかないが、部外者であるB建設、C工業の者には残量計の見方が分からなかったという問題点もある。
[3] 発注者であるA酒造が、タンク内をあらかじめ空にしておくことを怠ったこと。
対策
[1] エチルアルコールなどの危険物が入っているタンクは、危険物を除去するとともに、内部を洗浄する等により爆発火災の危険をなくしてから、溶接等の作業を行うこと。[2] また、その場合、発注者との連絡を密にし、あらかじめタンク内を空にしておくことについて十分説明しておくとともに、溶接作業の開始前に、タンク内が空であることの確認に立ち会ってもらうなどの措置を講ずること。