ビル増築工事でガス管を切断中、ガスが爆発
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築設備工事 | ||||
災害の種類 | ガス等の爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.489
発生状況
この災害は、市街地に位置するビルの増築工事に伴って、ガス供給配管の切替工事を行っていたところ、ガス管を切断しようとしてガス爆発が発生し、作業者2名が被災したものである。災害が発生した当日は、被災者の所属するA設備(二次下請)の作業者4名および一次下請のB工業の1名(請け負った工事についての現場責任者)が朝から現場におり、午前中は現場の片付けを行っていた。
A設備は、本来、給排水設備工事を請け負っていたのであるが、B工業が事前にガス会社と話し合ったところ、ガス会社の関連業者は都合がつかず、B工業が施工することとなったものである。
このため、A設備は、午後から地下2階駐車場管理室天井内の直径80mmの鉄製のガス管を切断し、バルブ止めにする作業を行うこととなっていた。
被災者P、Q(補助)のうちQは、地下階にある主弁を閉止した(図)。この主弁の位置〔4〕については、既設ビル内のため、事前に施設管理事務所の立会いのもとに確認が行われていたが、図面上では確認されていず、それは、実は、冷温水発生器用の主弁〔2〕であった。したがって、Qの閉止したのは、実際には、ガスの主弁ではなかったため、工事をしようとしていたガス管自体は活きていた。
ここで、建物の引き込み主弁〔1〕を閉止しようとしなかったのは、建物の所有者側から、当日はボイラーを使用するので、ガスを止めないでほしいと言われていたためであり、〔1〕および〔2〕は開放しておくことにしていた。
Qは、この後、上の階の厨房にあるコンロの下方の元栓を開け、コンロに点火し、管内に残留しているガスのガス抜きを始めた。ところが、厨房のガスメーターのコック〔3〕は閉じられたままであることにQは気づかず、結果的には、コック〔3〕からコンロまでのガスが抜かれただけであった。
PとQは、これでガス抜きが完了したものと思い、実際には切断しようとしていた部分を含むガス管の間にはガスが通じていたのであるが、Pは駐車場管理室の天井内に入り、Qは下で補助をして、切断作業に取りかかった。
切断作業は、電動のパイプカッターを使用して行われ、これをパイプに取りつけ、スイッチを入れ、切断を始めた。
管を5分の2くらい切ったところで、ガスの匂いがしたような気がしたので、一度スイッチを切り、カッターの歯を管からはずし異常がないかを調べたが、音もせず、匂いもしなかった。このため、再びスイッチを入れようとしたところ、「シュー」というガス漏れの音が聞こえた。スイッチを入れまいとしたが間に合わず、スイッチが入り、漏洩したガスが爆発した。
着火源は、スイッチの火花と見られる。
災害発生後、直ちに、管理事務所の者が建物の引き込み主弁〔1〕を閉止した。
原因
[1] 本来できないはずの作業をそれと分からずに行ったこと[2] 主弁〔4〕の位置を誤認したこと
[3] コンロにつながるガスメーターのコック〔3〕が閉じられたままであり、これを確認しなかったこと(確認していれば、いつまでもガスが出るので、手順がおかしいことに気づいたはずである)
[4] 施工した者が、ガス工事の専門業者ではなかったこと
このようなこととなった背景には、作業の計画および指揮が図面と実物を対照して綿密に行われたものとは思われないことがある。