溶剤回収工程で火災
業種 | 石油製品・石炭製品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.454
発生状況
本事業場は、石油化学製品の基礎原料となるエチレン、プロピレン、C4留分および熱分解ガソリン等を製造している。災害が発生したのは、ポリプロピレン製造装置の溶剤スクラバー塔底循環系においてであった。この設備は、原料のプロピレンを触媒により重合する工程において、溶剤として使用されるヘプタンを回収・循環して再使用するため、回収したヘプタンの洗浄に用いられるものである。災害が発生したのは、溶剤スクラバー塔底の循環系にある流量計が指示不良であったため点検および清掃を行うべく次の手順で準備作業を行っていた時のことである。
[1] 流量計を取り外すため、流量計のバイパス弁を開、入口弁を閉とし、次いでドレン弁を開としドレン抜きを行い、再び閉とした。
[2] 安全確認のため、ドレン口とドレン受容器を接地しドレン弁を開としたところ、少量の漏れが認められた。流量計の入口弁を確認したところ、完全に閉まっていない状態であった。
[3] 入口弁をハンドル操作で完全に閉めようとしたところ、ドレン口から勢いよくヘプタンが流出したので、慌ててドレン弁を閉めようとしたが、ドレン受容器付近でヘプタンが着火、火災となり被災した。
原因
ヘプタンの漏えいは、入口弁をハンドル操作で閉める際、ハンドルが弁のステムトップを包み込む形式のため、閉止状態が確認できないことに加え、ストッパーに変形があり、完全に閉止できなかったこと。さらに、入口弁の閉止が確認できない状況でドレン弁を開けたことが原因である。また、着火源としては、同設備付近に火源はなく、ヘプタンの発火温度(223℃)を超える取扱いの状況ではないことなどから、漏えいの際に発生した静電気と推定された。なお、発生したと想定される放電エネルギーはヘプタンの最小着火エネルギーを大きく超えるもので、ドレン口に取られていた接地は十分でなかったものと考えられる。
対策
[1] 化学設備またはその配管に取り付けるバルブ等については、点検実施体制および検査基準を整備し、定期的な点検を行い、異常を認めた時は直ちに補修すること。また、バルブ等は耐用期間を定めるなど必要に応じ取り換えること。[2] 配管にあって取り外すことのある計測器等と化学設備との間にあるバルブ等は二重に設けること。また、開閉の状態が確認できるものであること。
[3] 修理、清掃等の定常作業以外の作業(非定常作業)についても、作業標準を定め教育訓練を実施すること。
[4] 危険物のドレンアウトについては、密閉式で行う等、安全な作業方法とすること。
[5] 火源管理を徹底すること。特に、接地等の静電気対策は確実に行うこと。