有機過酸化物の製造工程において、熱交換器が爆発
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 圧力容器 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.441
発生状況
本事業場は、有機過酸化物のほか、産業用爆薬、ロケット発射・推進薬等を製造している。災害が発生したのは、ポリエチレン等のプラスチックの重合架橋触媒となる有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)の製造工程であった。この製造工程では、クメンハイドロパーオキサイド(C6H5C(CH3)2OOH)、α−クミルアルコール(C6H5C(CH3)2OH)を原料にして、これに反応促進剤および安定剤を加え、脱水縮合反応でジクミルパーオキサイド(C6H5C(CH3)2OOC(CH3)2C6H5)を製造している。反応に伴う生成熱はほとんどない。
装置としては、2段の反応槽(2段目は「熟成槽」と呼ばれている)からなり、それぞれの反応槽では、反応液を熱交換器により温水または冷水で一定温度に調節しながら循環させている。
災害当日、反応中であった熟成槽における循環流量を示す流量計(計器室にある)の針が振れ出したことから、被災者は点検のため現場へ向かった。被災者が、現場近くまで来た時、熟成槽の熱交換器が突然爆発し、噴出した反応液が発火炎上し、火傷を負ったもの。
災害発生後の調査では、
[a] 反応槽および熟成槽には破裂板が設けられているが破裂しておらず、本体にも損傷は認められないこと
[b] 反応温度・圧力は爆発発生時まで異常は記録されていないこと(各記録計で)
[c] 爆発した熱交換器の内部には過塩素酸カリ(KClO4)を高濃度に含んだスケールが堆積していたこと
などが確認された。
原因
[1] 過塩素酸カリを主成分とするスケールの生成や、このスケールと反応液との反応が想定されていなかったこと。[2] 熱交換器内部の状況が十分把握されていなかったこと。
対策
[1] 原料、中間製品、副生成物、製品等、取り扱う化学物質については、それ自体の危険性に加え、相互の反応危険性についても事前に十分検討すること。また、これらの検討はプラント全体にわたって行うこと。
[2] 熱交換器等内部にスケールが生じやすい設備については、その堆積状況を定期に点検し必要に応じ取り除くこと。
[3] 熱交換器、特に反応系に組み込まれた熱交換器については、温度計、圧力計等の計測装置により内部の状況を常時監視できるものとし、異常時に対応する警報装置、安全弁等の安全装置を設置すること。