乾燥設備が爆発
業種 | プラスチック製品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 乾燥設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.406
発生状況
本事業場は、事務機部品の電着植毛、塗装を行っている。電着植毛は、パイルと称する長さ0.5mm程度の毛を接着剤によりプラスチック表面に付着させ、ベルベット風に加工するものである。当日の作業は次のとおりであった。
[1] 事務機部品の定着板(プラスチック製)を電着工程に入る前処理として、定着板に付着している油脂とラッカーシンナー(成分、トルエン64.0%、メタノール25.0%、エステル系溶剤5.0%、ケトン系溶剤5.0%、グリコール系溶剤1.0%)で脱脂する。
[2] まず、ラッカーシンナーをポリボックス(四角の容器)に入れ、その中に手袋をして直接定着板数枚を浸し洗浄する。
[3] 洗浄した定着板はかごに入れ、下にポリボックスを置き2〜3分かけてラッカーシンナーをきる。
[4] 次いで、かごをダンボール板の上に積み、しばらくして乾燥設備の中に移していく。
[5] 乾燥設備に定着板約3,000枚を入れ、乾燥温度50℃乾燥時間30分にセットして乾燥する。
爆発は、乾燥設備の起動スイッチを入れてから約20分後に乾燥設備内の乾燥室で発生した。なお、この脱脂作業は従前はなく、この1カ月くらいの間に油脂が付着するようになり行われていたものである。
乾燥設備の概要は次のとおりである。
[1] 焼付塗装を主目的に製造されたもので、当事業場には昭和59年4月に設置されたもの。乾燥物を入れる乾燥室の内容積は約8.3m3、熱源はプロパンガスで最大消費量は約1.3m3である。
[2] バーナーでプロパンガスを燃焼、燃焼ガスは熱交換器で空気と熱交換され温風となり、これを乾燥に用いる。熱交換後の燃焼ガスは排風器により屋外に排出される。
[3] 温風は乾燥室の床部分から三方に吹き出し、天井部に吸い込まれ、循環ファンを介して熱交換器を経て循環する。循環量は毎分80m3。
[4] 乾燥室内で発生する有機溶剤の蒸気は温風とともに循環しているが、一部(約10%)は天井部の吸い出し口からバーナーブロワーによりダクトを通してバーナーに導かれ、プロパンガスとともに燃焼され排出される。
[5] 乾燥室内の温度制御は、天井部に温度センサーがあり、設定温度になるとバーナーが消え、排気ファンとバーナーブロワーが停止し、循環ファンのみ回る。
原因
[1] 爆発したのは、ラッカーシンナーに含まれた有機溶剤の蒸気と考えられる。当日消費したラッカーシンナーは16l缶の約半分であり、この有機溶剤の蒸気は一部は燃焼され排出されるものの、その大部分は温風とともに循環していたことと、乾燥室の内容積から、爆発下限界濃度2.4%(ル・シャトリエの式から概算)を十分超えていたものと推定される。[2] 着火源については、バーナー部で循環している有機溶剤を含む温風と火炎が直接接触し、火炎が乾燥室に逆火したものと推定される(バーナー部は温風と直接接触する構造となっていた)。なお、乾燥設備は接地されていたこと、乾燥室に接して電気設備はなく、モーター類はすべて外部に設置されていたことから他の着火源の可能性は考えにくい。
[3] 本乾燥設備は、乾燥に伴って発生する有機溶剤蒸気等の危険物に対して安全な構造となっていないこと。また、爆発の際にその圧力を安全に逃がす構造となっていなかった。
対策
[1] 本乾燥設備は、労働安全衛生法でいう危険物乾燥設備であり、次の点を改善すること。 | |
イ. 周囲の状況に応じ、その上部を軽量な材料で作り、または有効な爆発戸、爆発孔等を設けること。 ロ. 乾燥に伴って生ずる有機溶剤蒸気を安全な場所に排出できる構造とすること。 ハ. 有機溶剤蒸気を温風とともに循環させる場合には、バーナー等の火炎が、温風に直接触れない構造とすること。 | |
[2] 乾燥室内の有機溶剤蒸気の濃度は、爆発下限界の30%以上とならないようにするとともに、警報装置を設置すること。 [3] 乾燥設備作業主任者、有機溶剤作業主任者を選任すること。 |