岸壁に停泊中の運搬船の船庫内で、パルプ原木の荷上げ作業中に船倉底部に残留していたくん蒸用ガスに作業者が中毒
業種 | 港湾運送業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.168
発生状況
本災害は、岸壁に停泊中の原木運搬船から、デッキクレーンを用いて、原木を岸壁に荷揚げする作業中に、船倉内で原木をまとめ、ワイヤーロープ掛けを行っていた作業者が、原木をくん蒸するために使用し、船倉底部に残存していた臭化メチルガス(CH3Br)により、作業者二人がおう吐などの中毒症状を示し、休業に至ったものである。本災害を発生させた事業場は、港湾における荷役作業や清掃などを主たる事業としていた。
災害発生当日の作業の内容は、作業者十七人が四つの船倉に分かれ、デッキクレーンを用いて船倉から原木を岸壁に荷揚げし、さらにそれらの原木をフォークローダーを用いて別の場所に運搬するというものであった。作業手順は、
[1] 船倉内の結束バンドで固定された原木に、ワイヤロープスリングを取り付け、デッキクレーンにより岸壁に卸す。
[2] 結束バンドが外れ、散乱した原木をまとめ、ワイヤロープ掛けを行い、[1]と同じくデッキクレーンにより岸壁に卸す。
[3] 岸壁に仮置きした原木を、フォークローダーで一時保管場所に運搬する。
[4] 作業場所を清掃する。
というものであった。
本災害は、[2]の作業を行うために、三人の作業者が第一船倉に降り、作業を開始してしばらくして、そのうちの二人がおう吐、呼吸器の不調などの症状を示したものである。
また、同じ船倉に入った作業者一人と別の船倉で作業をしていた作業者については異状は認められなかった。
本運搬船は、事故が発生した港に接岸する三日前に、他の港で原木のくん蒸を行うために船倉に臭化メチルを24時間投薬し、その後安全を確認したうえで出港したものである。
なお、船倉に立ち入る前に、酸欠予防対策については、あらかじめ酸素の濃度の測定を行い、安全を確認した上で作業を開始していたが、臭化メチルの濃度については測定していなかった。
原因
[1] くん蒸作業に用いた臭化メチルがガス状で第一船倉内に残留していたこと。[2] 臭化メチルの濃度を測定していなかったこと。
[3] 臭化メチルを使用済みであることを関係する作業者にあらかじめ周知していなかったこと。
である。
対策
[1] 荷揚げ作業の開始前に、くん蒸作業に用いた臭化メチルの残留濃度を測定し、安全な濃度であることを確認した上で作業者を立ち入らせること。[2] 作業を行うに当たっては、風向きに十分注意すること。
[3] 作業者にあらかじめ臭化メチルを使用済みであることを周知すること。
[4] 作業者に異状が認められた場合には、速やかに作業者を退避させること。
[5] 送気マスクまたは空気呼吸器を備えること。