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安全衛生キーワード(用語集)

安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。

社会福祉施設

1 概要

社会福祉施設には、高齢者福祉施設、障害者福祉施設、保育施設等があり、お年寄り、子ども、障害のある方々への様々な福祉サービスの提供を通じ、これらの方々が自立してその能力を発揮することができるよう、必要な日常生活の支援、技術の指導等を行うことを目的としています。

しかし、近年、これらの業務に関わる介護系職員及び保育士等に労働災害が多発しています。

2 社会福祉施設における労働災害発生状況

労働災害(休業4日以上)による死傷者数は、労働者総数占める割合が減少傾向にある一方で、社会福祉施設における労働災害発生件数は、雇用者が過去10年で2.5倍近くになっていることもあり、年々増加傾向にあります。平成17年における労働災害発生件数は3,621件でしたが、平成26年には7,224件発生し、雇用者数の伸びに比例しほぼ倍増しています。そのため、労働災害発生件数を減少させるための取り組みが一層求められています。

社会福祉施設における労働災害の主な特徴は、事故の型別では、腰痛を主とする「動作の反動、無理な動作」及び「転倒」という行動災害が多く、業務上疾病では、腰痛の占める割合が高く、かつ増加傾向にあります。また、年齢別の災害発生率では、50歳以上の中高年齢者の割合が高くなっており、経験年数別の災害発生率では、死傷者の47%が、経験年数3年未満の未熟練労働者となっています。

【社会福祉施設における労働災害発生件数の年推移】
社会福祉施設における労働災害発生件数の年推移
出典:「労働者死傷病報告」
【平成26年度 社会福祉施設における年齢別労働災害発生状況】

50歳以上の中高年齢労働者が、全労働災害発生件数の50.1%を占めている

平成26年度 社会福祉施設における年齢別労働災害発生状況
出典:「労働者死傷病報告」

3 社会福祉施設における労働災害防止

■ 腰痛対策

厚生労働省では、平成6年に「職場における腰痛予防対策指針」を策定しましたが、社会福祉施設における腰痛が10年前の2倍に急増していることを踏まえ、平成25年に同指針を19年ぶりに改訂し、福祉・医療分野における適用範囲を介護・看護作業全般に拡大するとともに、介護・看護作業について、リスクアセスメントの実施、対象者の残存能力を活用した移動移乗方法等を取り入れる等、指針の充実を図っています。

また、同指針の周知を図るため、厚生労働省が中央労働災害防止協会に委託し、社会福祉施設等の衛生管理を担当する方等を対象に、腰痛予防対策講習会を全国で開催していますので、積極的に受講することをおすすめします。

【社会福祉施設における腰痛発生の年次推移(人)】
社会福祉施設における腰痛発生の年次推移(人)
出典:業務上疾病発生状況

■ その他労働災害防止対策

社会福祉施設においては、休業日数が比較的少ない労働災害や、中高年齢労働者、未熟練労働者の災害が多く、職場における労働災害防止活動を担当する安全管理担当者等の選任の義務付けもないことから、事業者及び労働者双方の安全に対する意識を高めることが重要な対策となります。

(1) 安全衛生管理に関する組織的な取り組み
労働災害防止のためには、経営責任者、施設長等のトップが、労働災害防止活動を推進するための方針を率先して表明し、職員全員で組織的、継続的な取り組みを行うことが大切です。
(2) 安全担当(安全推進者)の配置
社会福祉施設を含む第三次産業の大部分は、これまで安全管理者等の選任義務はありませんでした。しかし、昨今の労働災害の増加に伴い、安全管理の取り組みを促進するため、厚生労働省は「労働安全衛生法施行令第2条第3号の業種における安全推進者の配置等に係るガイドライン(平成26年3月28日)」を策定し、安全管理体制の整備に取り組むように求めており、各事業場における安全推進者の配置を推進しています。
(3) 自主的安全活動の取り組みの例
職場内の危険に対する客観的な評価や、対策の優先順位の明確化等を通じ、職場内の危険の「芽」をつむリスクアセスメントは、労働災害の防止に効果的です。このため、事業者には、介護労働者の腰痛予防チェックリストを活用したリスクアセスメントを行うことが求められます。
また、職場に潜む危険有害要因を発見、把握、解決していく危険予知訓練(KYT)は、転倒災害や交通労働災害の防止に有効な手段です。
更に、4S活動(整理、整頓、清掃、清潔)では、作業の効率化が期待され、「見える化」による危険個所の可視化等、危険の認識を共有することができ、これらの活動を通じ、各事業場における自主的な安全活動の推進が大切です。

4 関連資料(法令、通達、ガイドラインなど)