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安全衛生キーワード(用語集)

安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。

メンタルヘルス推進担当者

1 概要

昨今、我が国の労働現場では、終身雇用制度の崩壊、就業形態の多様化、IT化、成果主義、男女の役割分担の変化などが起こり、結果として多くの人がストレス過多となり、2012年の労働者健康状況調査(厚生労働省)においては、働く人の仕事や職業生活に強い不安、悩み、ストレスを抱える割合が60.9%に達しています。また、自殺を含む精神障害等に係る労災補償は請求件数、認定件数共に年々増加しています。

こうしたなか、労働者の安全を守り、健康障害の発生を防ぐことを目的として制定された労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づく指針として、2006年3月に「労働者の心の健康の保持増進のための指針 」が新たに示され(旧指針2000年公布)、職場におけるメンタルヘルス対策が、法令の面からも求められるようになりました。

指針では'4つのケア'の中の「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」に関し、事業者が講じる措置として5項目を挙げていますが、その1つが「事業場内メンタルヘルス推進担当者」の選任です。指針は、事業場内メンタルヘルス推進担当者を「産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの実務を担当する」者として位置づけ、衛生管理者や常勤の保健師等から選任することを勧めています。ただし、すべての事業場で選任されることが望ましいため、50人未満の規模や、保健師・看護師等不在の事業場では人事労務管理スタッフを充てることも想定されています。

【4つのケア】

◆セルフケア
労働者自らが心の健康保持増進のために行う活動
◆ラインによるケア
管理監督者が部下である労働者の心の健康の保持増進のために行う活動
◆事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等(産業医、衛生管理者、衛生推進者、保健師等)が労働者の心の健康の保持増進のために行う活動
◆事業場外資源によるケア
事業場外の様々な機関が事業場に対して心の健康づくり対策を支援する活動

2 職場におけるメンタルヘルスの現状

心の健康度は、他の疾患と異なり数値で計ることはできず、本人のいつもと違う様子に周りが気づくことがきっかけのひとつと言われています。このような難しさゆえ、職場でのメンタル不調は休み始めてから問題が表面化するなど、重症化に伴い長期休職となってしまうケースが多く認められています。また、周囲の理解不足もあり、病気ではなく、性格やなまけの問題などと判断されてしまい、解決をより難しくしてしまうという事態も多々見受けられます。

労働者の心の健康の保持増進のための指針により、組織的な取組は強化され2013年労働安全衛生調査(実態調査)によると60.7%の事業所が取り組んでいるとのことですが、規模別にみると小規模事業場での取り組み率が低いことが調査結果からも伺えます(表1参照)。

メンタル不調者の増加に伴って精神疾患も多様な病態が出現し、健康管理担当者のみならず、管理監督者や経営トップまで、的確な対処が出来ず職場全体が混乱してしまう事業場も見うけられます。こうした状況下ですべての職場においてメンタルヘルスの取組みが円滑に進められるよう、メンタルヘルス推進担当者の配置が望まれています。

表1 メンタルヘルスケアへの取組状況
全体 1,000人
以上
500〜999人 300〜499人 100〜299人 50〜99人 30〜49人 10〜29人
60.7% 97.9% 97.3% 94.5% 88.1% 77.6% 63.9% 55.2%
参照:「平成25年労働安全衛生調査(実態調査)」

3 事業場内メンタルヘルス推進担当者の役割

事業場内メンタルヘルス推進担当者の主な役割は、次の4点です。

  1. [1]心の健康づくり計画の策定・労働者への周知・実行状況の把握の実務
  2. [2]セルフケア、ラインによるケアを推進するための労働者教育、管理監督者教育の計画・立案・実施・評価の実務
  3. [3]事業場内のメンタルヘルスに関する相談窓口
  4. [4]事業場外資源との連携の窓口

尚、事業場内メンタルヘルス推進担当者には、教育や相談そのものを直接担当することまでは求められておらず、事業場内で行われるメンタルヘルス対策がスムーズに推進されるよう調整する機能を果たすことが求められています。

4 関連資料(法令、通達、ガイドラインなど)