安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
「情報機器作業」とは、パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業のことをいいます。
「情報機器作業」は、以前は「VDT作業」と呼ばれていました。「VDT」とは、Visual Display Terminalsの頭文字を取ったものです。具体的には、ディスプレイ、キーボード等により構成されるコンピュータの出力装置の一つで、文字や図形、グラフィック、動画などを表示する装置のことです。「VDT機器」を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業を「VDT作業」と呼んでいたものです。
この「VDT作業」は、近年のIT(情報技術)化の進展により広く職場に導入されてきましたが、その作業に長時間従事する者の中には、身体的疲労や精神的疲労を感じるものが高い割合に上るとの調査結果などがあり、労働衛生上の問題も指摘されています。
このような「VDT作業」に伴う労働衛生上の問題は、わが国の産業現場にコンピュータが導入され始めた1980年代半ばからとりあげられるようになり、当時の労働省は、昭和60年12月に「VDT作業のための労働衛生上の指針について」(昭和60年12月20日付け基発第705号、平成14年4月5日付け基発第0405001号により廃止。)を定め、行政指導を始めました。
その後、マイクロエレクトロニクスや情報処理を中心とした技術革新により、さらにIT化が進み、VDT機器がより広く職場に導入されるようになりました。それに伴い、労働者の誰もが「VDT作業」を行う(行わなければならない)ようになり、VDT機器を使用する者が急速に増大しました。また、ノート型パソコンや携帯情報端末の普及、マウス等入力機器の多様化、様々なソフトウェアの普及に見られるようにVDT機器はますます多様化してきました。
このような事態に対処するため、厚生労働省は、平成14年4月に昭和60年に定めた指針を全面的に改め「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日付け基発第0405001号、令和元年7月12日基発0712第3号により廃止。)(以下「VDTガイドライン」といいます。)を定めました。
さらに、VDTガイドラインが策定されて以降も、ハードウェア及びソフトウェア双方の技術革新により、職場における IT 化はますます進行しています。ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器のみならずタブレット、スマートフォン等の携帯用情報機器を含めた情報機器が急速に普及し、これらを使用して情報機器作業を行う労働者の作業形態はより多様化していることを踏まえ、厚生労働省はVDTガイドラインを見直し、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」 (令和元年7月12日基発0712第3号)を策定しました。
情報機器作業を行う事業場では、このガイドラインに基づいた労働衛生管理が求められます。
以下にこのガイドラインの概要を示します。
ガイドラインでは、事務所において行われる情報機器作業を対象として、作業環境管理、作業管理、情報機器等・作業環境の維持管理、健康管理、労働衛生教育、配慮事項等について定めています。
また、ガイドラインでは、情報機器作業を「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの」か否かの2つに区分し、それぞれの作業区分ごとに労働衛生管理を行うこととしています。