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あんぜんプロジェクトの平成29年度第2回職場見学会を、2018年2月20日に東レ株式会社千葉工場にて実施しました。

Asahi
日  時 平成 30 年 2 月 20 日(火) 13:00 ~ 16:00
場  所 東レ株式会社 千葉工場
 あんぜんプロジェクト掲載ページ
内  容

① 東レグループおよび東レ千葉工場における、安全衛生活動の取り組み紹介

② 工場見学

③ 意見交換(質疑応答)

東レ株式会社千葉工場は、39年間無災害継続を達成し、平成29年度「安全衛生に係る優良事業場、団体又は功労者に対する厚生労働大臣表彰」の奨励賞、2017年日本化学工業協会日化協安全最優秀賞を受賞しました。

今回、あんぜんプロジェクトメンバー6社から10名にご参加いただき、約3時間にわたって、安全衛生活動の取り組み紹介や現場見学、また意見交換などを実施しました。


東レグループおよび東レ千葉工場における、安全衛生活動の取り組み紹介

東レ・東レ千葉工場の”安全”<ご紹介>

最初に、東レグループおよび東レ千葉工場について、工場長から全体概要と安全への取り組みに関する概要をご説明いただきました。

  • 東レグループの概要、および安全管理・活動の特徴
    東レグループは1926年にレーヨン繊維製造会社としてスタートしました。現在では、ナイロン、ポリエステル、アクリルという三大合成繊維をはじめとして、高機能フィルム、プラスチック、炭素繊維複合材料、電子情報材料、高機能膜、医薬・医療材など、素材の製造、環境・エンジニアリング分野からライフサイエンスまでのさまざま事業を国内99社・海外156社でグローバルに展開しています。
    企業理念のなかで安全と環境が第一という企業行動指針を堅持し、安全を最優先する経営を行っています。安全最優先の例として、東レグループ安全大会を1982年から一度も中断せずに毎年開催していること、毎月第1月曜日を「全社安全の日」と定め、全工場で安全衛生環境委員会を開催(委員会メンバ-の出張を全社で禁止)していること、取締役会や全社・工場の会議・打ち合わせ、月報の冒頭には必ず、安全の指示・報告をすること、始業・終業ミーティングを2004年から全社的に展開し、作業安全・交通安全・健康状態の確認などを徹底していることなどが挙げられます。
  • 東レ千葉工場の概要、および安全の歴史と思想、活動の状況
    東レ株式会社千葉工場は1970年に操業を開始し、ABS樹脂「トヨラック」を生産しています。従業員数は約100名(関係会社・構内協力会社を含めると約800名)で、2020年3月には操業開始50周年を迎える予定です。
    危険物の取り扱いが多く、潜在災害として火災・爆発、薬傷などがありますが、無災害継続39年、完全ゼロ災継続8年を達成しています。
    • 東レ千葉工場における安全の思想の歩み
      • 東レ千葉工場では、1974年に第2代工場長が「樹の成長に負けぬよう無災害の大樹を育てる」と最初に本館前に植樹して以来、歴代工場長が人間尊重(1998年頃からは「人間愛」と呼ぶ)を基本思想とした安全に関する理念を表明、1990年には「千葉工場安全理念」と「安全行動指針」として整備・制定。それに基づく安全管理・活動を展開し、今日に至っています。また、歴代工場長が全員そのシンボルとなる安全記念植樹をしてきました。大きく成長した記念樹は、東レ千葉工場の安全への取り組みを象徴する存在になっています。
    • 東レ千葉工場の安全理念、安全方針
      • 「1. 安全は全てに優先する」「2. 事故、災害はすべて防止できる」「3. 一人ひとりの生涯無災害を目標とする」という安全理念3項目、および安全行動指針10項目を常に念頭において行動しています。
        工場長安全メッセージをはじめ、安全方針や「安全」という文字の時計や扉への表示や「とまれ」、「ヨシ君」などの安全標識などを構内の目立つところに掲示し、工場のどこに居ても常に「安全」を一人ひとり全員が意識する活動を実施しています。
    • 東レ千葉工場における潜在危険撲滅活動
      • 不安全状態と不安全行動の両面から潜在危険を撲滅するために安全管理・安全活動を継続して行っており、最近では以下を重点的に実施しています。
        • 掛長・主任層を核とした安全意識・考動改革活動
        • 類似災害防止活動、ヒヤリハット/安全提案
        • 赤ヘル・対話パトロール
        • 3S(整理・整頓・清掃)活動
    • 東レ千葉工場における安全の概念
      • 東レ千葉工場では、災害防止の最後の要は「人」であるとし、安全工学会の安全の概念(仕組みとなる「安全基盤の整備」とその機能を発現させ活性化するための「安全文化の醸成」)を基本としながら、「安全な人」の育成が非常に重要であると考えています。
東レ千葉工場安全活動の取り組み事例紹介

次に、東レ千葉工場の安全管理体制と安全活動への取り組みについて、環境保安課長からご説明をいただきました。

  • 類似災害防止活動
    • 東レグループで災害が発生した場合、発災から2日以内で届く災害連絡書により各部署長経由で課員に情報が共有されます。災害発生の原因や防止策について課員が考えたことを記入し、部署長がフィードバックを記載します。災害連絡書は見易い位置に掲示して、安全を常に見える化しています。また、これとは別にライン活動として、着眼点を明確にした上で実施した類似災害防止のための緊急点検結果とその対応を類似災害防止確認書としてデータベースに蓄積し、使用しやすい形式にまとめています。
    • 無災害が続くと安全に対する感受性が低くなりがちなため、東レグループ国内外の他事業場の災害事例や東レ千葉工場で過去に発生した災害事例を現場教育に役立てています。
  • ヒヤリハット撲滅運動と危険ゼロへの挑戦
    • ヒヤリハット(以降、HHT)活動は1998年から本格的に取り組んでいましたが、2009年にHHTを見落として不休業災害が発生したことをきっかけに、量から質重視へと方針を変更しました。
    • 現在では、課員がHHTを提出して上司がコメントし、必要な対策を講じるとともに100%本人へフィードバックするとともに、重要・有用なHHTは工場内に展開して改善・周知につなげています。また、提出した本人自身が改善策を考えて「安全提案」へと発展させる仕組みがあります。安全提案では、基本は本人自ら実施していますが未実施のものについても確実に完了させるようにしています。
  • 赤ヘル・対話パトロール
    • 赤ヘル・対話パトロールとは、管理職と現場リーダー(掛長・主任層)が工場全ての現場の安全状態と安全行動を自分の目で確認することです。現場で作業している人との対話を重視し、対話者の安全意識の確認と危険感受性向上の訓練をその場で行います。パトロールに同行している若手層には、潜在危険への気付きを具体的に指導します。
    • 2017年度は重点月間を設けて実施し、実施のない月も自主的に自部署のパトロールを行ったり、赤ヘル・対話パトロールの指摘事項をフォローしたりするなどして、有効に活用しました。
掛長・主任層を核とした安全活動事例紹介

続けて、環境保安課の方から掛長・主任層を核とした安全活動事例のご説明をいただきました。

  • 東レ千葉工場の安全体系と本活動の位置付け
    • 東レ千葉工場では、トップダウンの安全管理・活動と、それに融合した全員参加のボトムアップ活動により、不安全行動と不安全状態の両面から潜在危険を撲滅しています。そこで重要な役割を担うのが、ボトムアップ活動のリーダーである掛長・主任層です。
    • 2015年から2017年にかけて、掛長・主任層の安全意識改革活動を実施し、毎年内容を深化させて活動してきました。
  • 2017年の活動事例
    • 東レ千葉工場全体における活動:構内中央道路のルール遵守・マナー向上運動
    • 各課独自の活動例
      - トヨラック技術室・品質保証課 ONG(お願いします)活動 (先輩・上司にも相互注意できる職場環境の醸成)
      - トヨラック生産課 災害連絡書を活用した意識向上活動、KY能力向上活動、3S活動の活性化
      - 工務保全課 災害連絡書の読み込み、過去の災害連絡書の読み込み・報告、安全基本ルールと各自の安全考動の指差呼称
東レ千葉工場 構内協力会社との安全活動

最後に、工務保全課長から工事安全への取り組みについてご説明をいただきました。

  • 工事安全への取り組み
    • 工務保全課では、工事による災害ゼロ継続を目指して、構内工事協力会社と密接にコミュニケーションを取りながら、一体となって安全活動を行っています。現在、工事協力会社は27年間の完全ゼロ災を達成・継続中です。
    • 毎月1回開催の工場安全衛生委員会には協力会社代表者も出席し、会社・工場トップの指示、伝達事項や必要な情報などは関係者に伝えています。
    • 年間活動計画を立案し、それに基づいて活動しています。活動内容や結果は、工務保全課長も出席する工事安全衛生協議会で報告しています。工事安全衛生協議会も毎月1回開催しています。
  • 作業者教育と工事見える化
    • 作業者(特に新規入場者)への教育に「工事安全ガイダンス」を活用しています。「工事安全ガイダンス」は、機器の名称や作業の注意点、禁止事項、工場の達令報や基準書のルールなどを分かりやすく図解した説明書です。
    • 工事現場には「グリーンシート」を掲示し、周辺作業者への工事内容の周知を図っています。「グリーンシート」のポケットには、「工事依頼書」・「工事許可証」・「施工届」・「ゼロ災作業指示書」・「化学物質安全シート」の5つを入れています。
    • 作業者への危険物質・薬品教育に「化学物質安全シート」を活用しています。「化学物質安全シート」には、薬品名や取り扱い時の注意点などが一目で分かるように記載されており、その日の工事許可証を発行する際に必ず工事責任者に手渡すこととしています。工事によって扱う危険物が異なるため、該当する薬品の「化学物質安全シート」を「グリーンシート」のポケットに入れて見えるようにしておきます。

工場見学

工場見学04工場見学03工場見学02工場見学01バスに乗車し、中央道路を進みながら、構内のご説明をお聞きしました。横断歩道などの各所に、安全考動に対する注意喚起の標識や表示があります。
バース
東京湾に面した埠頭があります。原料を積んだ船が着岸し、パイプでタンクヤードの大きなタンクに原料を流し込みます。このタンクは浜タンクと呼ばれ、東レ千葉工場で使用する主原料3種類を貯蔵しています。大きなタンクに入った原料は、ここからパイプで工場内各所のタンクに流し込まれます。
また、この埠頭には東レ千葉工場の最終排水口もあり、自動排水分析計、監視カメラ2台などで常時監視しています。環境保全の仕組みとして、万が一、場内で廃液が流出したときは、工場内側でバル-ンを膨らませ廃液を堰き止めるとともに地下のプールで貯蔵できるようになっています。
安全展示室
工務棟
工場見学05安全展示室は2013年に設置されました。
プラント装置等のカットモデルなどを展示し、若い世代の教育に使用しています。千葉工場の過去災害事例も展示し、発生した災害を風化させずに教訓として役立てています。
参加各社の皆さんも、展示物に熱心に見入ったり、事例について活発に質問をしていました。
工場見学06今どこで工事が行われているかがすぐに分かるように工場平面図を用いて、壁に掲示されています。ファイルを開いたり、パソコンを起動したりしなくても、構内で工事が行われている場所が一目瞭然です。
工場見学07見学前に工務保全課長からご説明いただいた「化学物質安全シート」や「グリーンシート」の実物を工事許可を出す場所で見せていただきました。
純水製造装置、消火設備
東レ千葉工場では、東レ製のUF膜装置やRO膜装置を使用して工業用水を純水にしています。東レの工場の中で最も大量の純水を製造できる装置の前で、浄水・純水装置についてご説明いただきました。
消火設備は赤色で統一しており一目で区別が付くようになっています。
重合工程
PRTR対象物質自主削減対策(第8期)
原料を混ぜ合わせて加熱し、ABS樹脂をスパゲティーのように長く伸ばします。この後、冷却・乾燥を経て細かく切断し、ペレットにします。
製造工程は自動化されていますが、「立入禁止」など、安全に関する注意喚起が各所に大きく分かりやすく表示されています。この工程の一部は騒音管理区域なので、耳栓を着用して見学しました。
東レ千葉工場では、2001年5月から第1期PRTR対象物質自主削減対策として蓄熱式燃焼脱臭装置を設置し、現在では第8期までの蓄熱式燃焼脱臭装置が稼動しています。

※ PRTR (Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)

総務棟玄関
トヨラック生産課事務所前掲示板
工場見学09工場見学08総務棟の玄関には、東レ千葉工場が受賞した各種の表彰状や記念の盾などが展示されています。平成29年度厚生労働大臣奨励賞もありました。

また、東レ千葉工場で生産している製品とその紹介なども展示されています。
工場見学10掲示板には、全員の安全宣言、工場長安全メッセージ、安全活動報告、災害連絡書など、安全に関する掲示物がいつでも見られるように貼られています。更新したものはその日付も目立つように書かれており、常に最新情報とする工夫もされていました。
工場見学11過去からの検討結果の蓄積も壁に掲示されています。
若い世代は実際の災害に遭遇していないため、過去に千葉工場で発生した災害について取り上げ、現場教育に活用しています。
また、東レグル-プ国内外の他事業所で発生した類似災害を周知し、速報版と詳細版で徹底的に原因を究明し、課長、安全推進委員および課員が一緒になって対策を検討しています。
中央道路
安全記念樹
工場見学12中央道路には、安全理念、安全行動指針、安全方針、工場長安全メッセージ、無災害記録表、完全ゼロ災記録表など、安全に関するさまざまな掲示があります。 工場見学13歴代工場長が植樹した記念樹がすくすくと成長しています。

意見交換(質疑応答)

意見交換(質疑応答) 見学終了後、参加各社から東レ千葉工場に質問する形式で、安全活動に関する質疑応答を行いました。
参加者との質疑応答
Q 当社でも安全活動を行っているが、なかなか災害が減少しない。ゼロ災を継続している秘訣のようなものがあれば教えていただきたい。
A 全員が意識を高く持つことが必要である。
  • 無災害が続くと、実際の災害から学ぶことができなくなるため、過去事例、想定HHT、東レグル-プの災害などを活用し、全員で災害の芽の摘み取り活動を継続している。
  • 安全活動では、フィードバックや対話を重視している。
  • 管理職よりも現場のことをよく知っている掛長・主任層を中心とした活動を重点的に行っている。
Q 災害が減少すると、危険に対する感受性が低下してくるのではないかと思われる。危険に対する感受性低下をどのように防止すればよいか。
A 工場長、部署長、掛長・主任層が常に安全に関することを繰り返し熱く語り、注意喚起し続けることが重要である。特に管理職は率先垂範する必要がある。
Q 当社でも安全活動を実施し、今年からKYを開始したが、表面的なもので終わっているように感じている。東レ千葉工場では、実際に作業ごとにKYを行っているのか。また、KYにはどのように取り組めばよいか。
A
  • KYは必要であり、作業ごとに行っている。まずKYの手法を学習し、その後で災害事例などから災害のパターンを知るようにすれば、作業開始前のKYがスムーズに行えるようになる。
  • 年に1回、外部講師によるKYTセミナーを実施している。
  • KYT基礎4R法では、「1ラウンド 現状把握 どんな危険が潜んでいるか」が重要である。4Rすべてに時間をかけるのが難しい場合は、1ラウンドを重点的に検討することが危険感受性向上の訓練になるのでよい。
Q 災害対策の深掘りのポイントは何か。
A 類似災害を防ぐために、東レグループでは、昨年から、発生した災害について経験豊富で詳細な知識のある人が原因と対策を考える「着眼点」を設定した上で類似災害防止を検討するという方式を採用している。千葉工場では着眼点は工場長と環境の課長・掛長・主任で設定している。また、災害が発生した場合は原因と対策とともに、必ず横展開してグループ内で情報共有する。
Q 「5S」はよく耳にするが、「6S」の最後の「S」は何を指しているのか。
A 「しっかり」を指している。したがって、「6S」とは「5S」+「しっかり」で、「整理・整頓・清掃・清潔・躾・しっかり」となる。

参加者の声

参加者からは、以下のような声が聞かれました。
参加者の声
  • 今回、安全衛生委員会の事務局3名で参加させていただいた。自社と比較して、東レ千葉工場の安全活動は規模が非常に大きく、原因の深掘りを徹底的に行っていると感じた。まねできるところはどんどんまねして、取り入れていきたい。
  • KYの能力向上活動は自社でも行っているが、回数をこなすことが目的になってしまっているところがある。「安全な人」の育成につながるように、見直したい。
  • 「赤ヘル・対話パトロール」での「対話」がポイントであると感じた。自社でも安全パトロールは行っているが、対話という視点が欠けていた。パトロールの実施内容を再検討したい。

閉会

閉会に当たり、工場長より以下のようなお話をいただきました。
  • 「安全な人」づくりに向けて
    工場の安全確保と向上のためには、仕組みとなる「安全基盤」を整備するとともに、その機能を発現させ、強化・活性化させるための「安全文化」の醸成が基本であるが、災害を発生させないための最後の要は人であることから「安全な人」の育成も極めて大切である。この方策として、東レ千葉工場では、すべての作業(生産課では全約1600作業)について作業認定を取得することが必要で認定がない人は1人では作業できない仕組みとしている。また、作業を「定常作業(約1300作業)」と「非定常作業(約300作業)」に分けており、両方の作業認定を取得しなければならない。認定に向けて作業を指導する人も、経験3年以上で十分な力量が要求され認定された人が行っている。このような育成方法により、作業者の安全を確保するようにしている。
  • 安全に永遠はない。常に危険の芽を摘み潜在危険の無い工場を目指し努力することが必要である。
閉会
東レ千葉工場は、ABS樹脂「トヨラック」の生産工場として、構内に多くの危険物や潜在危険の起因物があります。トップダウン活動とボトムアップ活動の融合による徹底した安全管理をもって、ゼロ災継続が実現していることを実感した見学会でした。参加各社は、東レ千葉工場が行っている安全基盤の整備と安全文化の醸成、そして安全な人の育成について強い感銘を受け、自社での取り組みへの大きな手がかりを得たようです。「安全は全てに優先する」を組織が一丸となって実践し続けることの重要性を確認し、本日の見学会は閉会となりました。

あんぜんプロジェクトの今年度第1回職場見学会を、2017年11月29日にアサヒビール株式会社神奈川工場にて実施しました。

Asahi
日  時 平成 29 年 11 月 29 日(水) 13:45 ~ 17:00
場  所 アサヒビール株式会社 神奈川工場
 あんぜんプロジェクト掲載ページ
内  容 ①工場見学
 ・一般見学
 ・現場見学
②5Sを中心とした取組の紹介、質疑応答

アサヒビール株式会社神奈川工場は、2002年に竣工し、生産量は年間約17万KLで約41万㎡(12万5千坪)という緑豊かな広大な敷地の中にあり、グループ会社・協力会社含めて318人が勤務しています。ビールはとことん自動化された設備で徹底した品質管理のもと仕込・発酵・熟成・ろ過・パッケージングまでの一連の生産工程を経て作られています。
今回、あんぜんプロジェクトメンバーは、13社から22名の方々に参加いただき、約3時間にわたって工場見学や5Sの取組紹介などを実施しました。


工場見学

一般見学エリア

工場見学案内スタッフの説明で、まず一般の方のコースを見学しました。

はじめに
映写室でアサヒビール神奈川工場の紹介ビデオを見て、製造工程の概要や工場独自の取り組みを理解します。 一般見学コースでは、各所で大きなガラス窓から製造現場を一望することが出来るようになっています。工場見学案内スタッフからパネルやモニターなどを使った説明を受けます。
一般見学エリア01 一般見学エリア02 一般見学エリア03
仕込室
原料展示・ろ過
仕込室では、大きな釜で麦芽やホップなどの原料を煮込み、1回の仕込で350ミリリットル缶 約36万本分のビールのもととなる麦汁を作っています。 一般見学エリア04 ビールの原料である麦芽やホップの実物を触ったり香りを嗅いだりした後、ろ過工程の説明へ進みます。ろ過されたビールは、透き通った黄金色になります。 一般見学エリア05
発酵・熟成
発酵・熟成工程では、容量500キロリットルの屋外発酵熟成タンク45本が設置されています。外気に左右されることなく、熟成したビールは0℃に近い温度で管理します。 一般見学エリア06 隣のエリアにはノンフロン冷凍設備や原料水などのユーティリティーのタンクも見えます。エンジニアリング部の原動部門が365日24時間体制で運転管理しています。 一般見学エリア07
缶詰
びん詰
ビールを自動的に缶へ詰める工程です。1分間に1500本も充填することが出来ます。そのスピードに参加者からは驚きの声があがっていました。 一般見学エリア08 びん詰工程です。市場から回収されてきたリターナブルびんを自動的に選別して洗浄した後にビールを詰める工程です。1分間に600本充填できます。缶製品や樽製品に比べてびん製品の需要は年々少なくなっているそうです。 一般見学エリア11
缶のふたをビールが酸化しないように素早く巻き締める工程です。新鮮なビールを充填するために欠かす事の出来ない設備であり、こちらも完全に自動化されています。 一般見学エリア09 一般見学エリア12
ふたを巻き締める工程では異常が発生した場合、機械が自動で止まりオペレーターに知らせる仕組みとなっています。 一般見学エリア10    
環境への取組や製品紹介
アサヒグループの環境への取り組みやグループ各社の製品について紹介しています。
神奈川工場は「環境創造工場」を目指し、数十種類にごみを分別して再資源化を行っています。また敷地内にビオトープを設け、5月下旬から6月上旬にかけて蛍の鑑賞会も開催されており、地域の森林保全活動などにも取り組んでいます。
一般見学エリア13 一般見学エリア14

最後に品質管理室を見学します。ビールの味、香り、泡立ち、色などを分析して管理しています。徹底的に自動化された工場でも最終確認は機械ではなく人が行っており、人の手無くしては美味しいビールを作る事は出来ないそうです。

現場見学

工場総務ご担当者、および現場ご担当者の案内で、物流倉庫と醸造棟エリアを見学しました。

物流倉庫
ロボットでパレットに積み付けられた製品は無人フォークリフトにより決められた場所に積み上げられます。無人フォークリフトは全て自動制御で運転されています。走行エリアはフェンスで仕切られ稼働中の立入りは禁止されています。緊急時にフェンス内に入る時は扉に設置された進入許可申請ボタンを押して入るルールになっておりそれにより走行が停止する仕組みになっています。このボタンを押し忘れた場合でも無人フォークリフトに取付けられた人感センサーにより止まる仕組みになっています。また、走行中はメロディを流すことで周囲に注意喚起をしています。現場見学01
醸造棟1階(貯酒タンク下部)
発酵タンクではビールの温度コントロールやタンクや配管の洗浄に至るまで全て自動化されています。そのため発酵中のビールの分析用サンプルを取ることや点検業務以外の目的でこのエリアに入ることは殆どありません。タンク下は、低温空調されていますが夏場の外気の温湿度が高い場合はビール配管に結露が発生するため、床にたれた結露水で作業員が滑り転倒しないように足元の注意を喚起するステッカーが要所要所に貼られています。

5Sを中心とした取り組みの紹介、質疑応答

工場見学の後は、神奈川工場パッケージング部での5Sの取り組みについて説明いただき、質疑応答を行いました。

アサヒビールにおける5Sの取り組みについて
アサヒビールでは、「工場の6つの使命(PQCDMS)を支えるものは5Sです」との考え方のもと、5S活動を推進しています。PQCDMSとは、「P (Productivity) 生産性」「Q (Quality) 品質」「C(Cost) 原価」「D (Delivery) 納期」「M (Morale) モラール」「S (Safety) 安全」という、工場における基本的かつ重要な6項目です。
■いつもキレイな職場に事故はなし
  • 自動化により無人の工程が大半のビール製造現場で、労働安全の下支えをしているのが、正しい5S活動
  • 正しい5S活動とは、5Sの定義に基づいて全員が行動し成果に結びつける活動
    <5Sの定義>
    整理 要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てる。
    整頓 要るものをすぐに取り出せ、すぐに元に戻せるようにする。
    3定(定品・定位・定数)で表示する。
    清掃 汚れ、ゴミ、ほこりを細部まで取り除く。
    清潔 3S(整理・整頓・清掃)を維持する。
    決めたこと、決められたことを守る。
5Sの取組について01
■整理・整頓の重要性
  • 整理・整頓の重要性を参加者に実感してもらうため、3種類の【体感シート】を配布し、シート上で1から40までの数字に順番に○をつけ、つけ終わるまでの時間を比較するというゲームを行った。
5Sの取組について02

【体感シート①】乱雑な状態
  シートの全面に無秩序に数字・平仮名・英字が記入されている。

【体感シート②】整理された(要・不要に分別した)状態
  シートの上段には1~40の数字。ただし、順序性がない(「要るモノ」)。
  シートの下段には1~40以外の数字・平仮名・英字(「捨てるモノ」)。

【体感シート③】整頓された状態
  シートの上段には1~40の数字が順番に入っている(「整頓済み」)。
  シートの下段には何も入っていない空枠(「空スペース」)。

<ゲームの結果>
①→②→③の順に、つけ終わるまでの時間が短くなる。③は「対象を使用する順番に並べた場合」に該当し、あっという間に○をつけ終えることができる。
整理・整頓により、物を捜すというムダな時間が無くなり、過剰な在庫もゼロになる。
■パッケージング部の5Sへの取組
  • 「約束事」として、「通路にものを置かない」などの「目指す姿」を具体的に設定し、美しい職場創りを目指す。
  <整理>
  • 工場内にあるものを13種類に分類し、「要るもの」と「要らないもの」の基準を明確にしている。
  • 「不用品の搬出→実施前・実施後の撮影と記録→3ヵ月後にフィードバック」というサイクルの1Sデーを継続的に実施している。
<整頓>
  • すぐに取り出せてすぐに戻せる3定を徹底している。
  • 整頓に関する情報共有や情報発信を継続している。
    掃除用具置場の5Sコンテストを行う。
    神奈川工場の整頓の工夫を、全工場に月1回送付する。
<清掃・清潔>
  • チームごとに毎日・毎週・毎月の目標を設定し、活動を見える化する。
  • チームで相互パトロールを行い、結果を一覧表に記入して伝える。
  • 「ひとりひとりの活動がアサヒファンを増やす活動」と認識する。
<躾>
  • 『5Sの4悪』を設定している。
  • 具体的には「直置き」「チョイ置き」「立てかけ」「テープやシール痕」を禁止としている。
5Sの取組について03

5Sの取組について04
■正しい5S実践の成果
  • 全員参加、部長・職制の率先垂範で5Sを推進したことにより、現場の見通しが良くなった。その結果、職場の安全が確保され、品質・生産性の向上も実現した。

    <2016年1-12月末 結果>
    安全 ゼロ災継続。
    品質  1時間以上不適合品入庫なし。
    稼働 24時間以上の停止なし。出荷確保率全列(決められた製造数量を決められた時間内に製造する事)100%。
■5S成功のポイント
  • 5Sは誰でもできる平凡とも言える活動だが、非凡なレベルまで徹底して行うことが重要。徹底して行うことにより、職場環境が改善し、優れた品質や高い生産性を誇る工場になることができる。
  • 大切なのは「網羅性」と「継続性」。
 

網羅性

現場の隅々まで目を配る。
放置されているエリアをできるだけ減らす。

継続性

100分の活動を1回行うよりも、1分の活動を100回行う。
継続しているうちに習慣になり、習慣が美しい職場の維持につながる。
ただ続けるだけではなく、常に改善を心掛ける。


参加者との質疑応答
Q 5S活動の実践に当たり、全員に共通認識を持ってもらうために、最初に取り組んだことは何か。
A 本物の5S活動を目指して、全員参加のための役割分担と部長の率先垂範を促した。
5Sレベルの高い他社ではベンチマークで定着するのに10年程要するとお話しを聞いた。我々が本物の5S活動を目指して取組み始めて5~6年経つがまだまだ課題もあり伸び代もあると感じている。
Q 職場で無意識に行動してしまったり、安全に対する感度が鈍ってしまったりして、ケガが発生することがある。このような事態を未然に防ぎたい。安全に対する感度を高めるために、どのような取り組みを行っているか。
A
  • 毎朝、KYT宣言(「今日も1日ゼロ災で行こう、ヨシ!」)を行っている。
    • 5Sの取組について05
    • 5Sの取組について06
    • 神奈川工場では、従業員の1日は、安全確認から始まります。現場に入る前に必要な確認を行い、「安全ヨシ!」と声をかけると、音声ガイダンスが「おはようございます!今日も一日ご安全に!」と答えてくれます。
  • KYTトレーニングで、安全に対する感度を高める。
  • 毎月1回、安全ミーティングを実施している。
Q 5S実施の結果、労災は全く発生しなくなったのか。
A
  • 数年前に休業災害が1件発生、今年は関係会社で休業災害が1件発生したが、それ以外は発生していない。
  • 労災発生を防ぐポイントは、「声かけ」と「褒めること」の徹底であると考えている。

参加者の声

参加者からは、以下のような声が聞かれました。
参加者の声01
  • 5S活動について詳しく知りたかったので、丁寧な説明が聞けて良かった。
  • 製造工程が本当に無人化されていたので、驚いた。 さらに、そのラインを管理している従業員が5S活動に熱心に取り組んでいるということで、非常に感銘を受けた。
  • 安全についての取り組みの説明が具体的で参考になった。 自社にも取り入れようかと考えている。

ビールの製造ラインは、仕込工程、発酵熟成工程、ろ過工程、パッケージング工程まで、ほぼ完全に自動化されていました。ラインで人の姿を見かけることはほとんどありませんでしたが、見えないところで従業員が5S活動に徹底して取り組み、きれいで安全な職場環境を実現していることが分かりました。無人のラインの安全性を支える5S活動の重要性が参加各社に伝わった職場見学会でした。