1.応募について
応募数は、320件であった。この件数の多寡は一概に論ずることはできないが、応募企業・事業場の新しいアイデアによる活動や相当な試行錯誤の結果として取り組まれている活動が多く、それがこれだけ収集できたことは、大変評価できるものである。
これは、労働災害防止が企業や事業場の関係者の共通の願いであり、安全衛生を高めるための活動は、自社だけでなく広く参考にしてもらいたいという気持ちの表れと言うことができると思われる。
一方、応募された企業等は建設業、製造業や大企業に偏ったが、労働災害の発生状況を見ると、陸上貨物運送事業、第三次産業等の業種や中小企業における「見える」安全活動も重要であることから、これらの業種や企業規模の企業等における活動の活性化を図る必要がある。
2.優良な活動について
応募された活動を見ると、「見える」安全活動として考えられるものには、活動の手法、「見える化」した対象、実施者・関係者、直接・間接の効果等に関してさまざまなものがあり、それぞれの企業等において現場にあったもの、効果的なものとなるよう創意工夫されていることが明らかとなった。今後、これらの活動を水平展開し、活性化させるためには、それぞれの活動の特長等により類型化し、具体的な活動例とともに示していくことが必要である。
この観点から、今回公募された「見える」安全活動を分析し、以下のような活動の特長ごとに類型化し、同様の活動の中で活動のねらいがより明確化されている、さらに一歩工夫している、簡易な取組であるが効果的である等と思われる点で優良であると評価できる活動を選考した。また、それらの中には、少数ではあるが、比較的規模の小さい企業等がターゲットを絞って取り組んでいる活動もあった。
厚生労働省では、これらを建設業や製造業だけでなく、それら以外の業種あるいは中小規模の企業等に広く周知し、企業・事業場における「見える」安全活動のさらなる活性化などの自主的な安全衛生活動を促進することにより、企業内の安全文化の醸成に努めることが必要である。
3.「見える」安全活動に取り組むに当たっての留意点について
安全衛生対策としては、安全衛生管理体制を確立し、機械設備に対する安全措置、作業の安全化、安全衛生教育等を的確に実施することが必要である。「見える」安全活動は、これらの安全衛生対策の実施に当たって、より効果的な対策となるような取組手法の一つであって、もととなる対策を的確に実施することなく、取組手法たる「見える」安全活動だけを好事例をまねて実施したとしても、十分な安全衛生対策とはならないことに留意する必要がある。