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労働災害事例

ガラス圧着用圧力容器内に閉じ込められて被災

ガラス圧着用圧力容器内に閉じ込められて被災
業種 ガラス・同製品製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 圧力容器
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.420

発生状況

A株式会社は、ガラス製品製造業を営む事業者であり、業務の一環としてガラスの圧着加工を行っている。圧着ガラスを製造するにあたっては、その工程にかかわる業務の一部を同社構内において作業を行うB株式会社に請け負わせている。B社は5名の作業者を常駐させており、これらの作業者はA社の作業者とともにオートクレーブを用いたガラスの圧着作業に従事している。
 ガラスの圧着は、第2種圧力容器に該当する内径1.5m、奥行き4mのオートクレーブ(以下「容器」という)の中で加圧、加温した後、一定時間圧力と温度を保持して行う。圧着すべきガラスの種別により、温度および圧力の最高値ならびにそれらの昇降速度は異なっている。
 通常、加工材は加えるべき温度・圧力条件が同一のものを1台の台車に載せ、台車のままで容器への出し入れと加熱および他工程作業場への運搬を行っている。
 災害発生当日、CらB社の作業者3名は、A社の作業者Dリーダーの指示を受けつつ、ガラスの圧着工程作業に従事していた。災害発生前には3台の台車に載せた製品を一挙に処理し、その処理は16時45分ころに終了し、1人1台ずつ次の工程に運んでいくことになっていた。当日処理すべき加工材は甲および乙の2台車分残っていたが、両台車に載っている加工材は温度・圧力条件が異なっているので設定条件を変えて2度の処理を行う必要があった。
 Dは、この2度の処理を自分1人で行う心積もりでおり、処理の準備をしていたところ、被災者Cが戻ってきて作業を手伝おうとした。Dは、終業時刻が迫っていることから、Cに対して手伝いは不要であるので、運搬途上の台車を指定場所に運搬し、それをもって当日の業務を終わるよう指示した。
 Dは、Cが自分の指示通り行動したものと認識し、1度目の処理を開始した。まず甲台車を容器に入れた後、容器左側のコントロールパネルのところへ行き、条件設定を行った後、送風機とヒーターのスイッチを投入した。その後容器右側にあるデータ記録装置のところへ行き、所要事項を書き込んだ。容器のふたは右側に蝶番があり左から右に開く構造になっている。
 Dは記録用紙に記入した後、ふたを閉め、加圧用コンプレッサーのスイッチを投入した。ふたを閉める際は、ふたの外側から押す形であり、容器の内部は見えない姿勢であった。また、Dは自分1人で行っている作業であるとの認識であり、ふたを閉める前に容器の中をことさら点検することはせず、また一連の行動を行う際に容器内に人がいる気配は感じなかった。
 6時ころになって処理が終了したので、Dは容器のふたを開けたところ、既に帰宅しているものと思っていたCが容器内の入口に近いところに倒れ、死亡しているのを発見した。
 Dは甲台車を容器内の入口に近いところに入れて処理を行ったが、災害発生時には、その台車は容器内の奥で発見された。

原因

Cは、Dの指示に従わず、好意により独自にDの作業を手伝おうとしたものと思われ、甲と乙とは異なる熱処理を行うべきことを知らず、2台を同時に処理するものと誤認し、甲台車を奥に押し入れ、その後に乙台車を入れようとしていたものと推定される。その間、Cが別の場所で作業をしていると思っていたDは、容器のふたをして加熱・加圧を行い、結果としてCが熱傷死した。

対策

[1] 具体的な作業手順を定め、当該作業に従事する作業者に教育を行い、作業に関する手順の周知・徹底を行う。
 作業手順は、特に容器のふたを閉め、加熱・加圧を行う前の容器内の点検について重点を置く。
[2] 容器内に入って作業する場合には、他の作業者が見やすい位置にその旨表示する等、容器内に人がいることが容易に確認できる措置を講じる。また、万一手違いで人が容器内に閉じ込められた場合に、内部から外部へ知らせる装置を設置する。
[3] 作業の指示系統および指示を明確にし、それを確実に順守させる。