工事用モノレールの台車を電動ウインチで引き上げ中、ワイヤーロープが切断し、落下した台車が作業者に激突
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の動力運搬機 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | その他の飛来・落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 老朽、疲労、使用限界 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 合図、確認なしに車を動かす |
No.100779
発生状況
この災害は工事用モノレールの台車を電動ウインチで引き上げる作業を行っているときに発生したものである。 この工事は、急傾斜地頂上の岩盤亀裂および落石痕の覆工ならびに木製階段の設置を行うものであった。 災害発生当日、午前7時頃工事現場に到着し、作業責任者(被災者A)は、急傾斜地の中腹に設置した中段作業台に接着剤の空缶が溜っていたので、これを仮置場に移動させるよう作業者らに指示した。 この指示を受けた運転者は、工事用モノレールの目視点検および試運転(台車を上下一往復すること)を実施した後、中段作業台から空缶をおろすべく、下方側端部近くに置いてあった台車を空の状態で上方の中段作業台に向けて約50m移動させた。 そのとき、台車付近から「ギギ」という音を発して、台車に接続していた電動ウインチのワイヤロープが切断し、台車が下降し始めたので、運転者はペンダントスイッチを反射的に押し直したが、台車は一層加速して下降し、台車ストッパーを破壊して空中に飛び、立木に激突した。このはずみで、レール下方側端部で作業をしていた被災者(B、C、D)ともども台車に激突されたか、転倒して被災した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 工事用モノレールの電動ウインチに使用していたワイヤロープのストランドおよび鋼心の素線が50%近く切断していたこと。 ワイヤロープのストランドおよび鋼心の素線合計が205本のうち、111本が潰れ切れと斜め切れの状態で50%近く切断していた。これは、ワイヤロープ切断前に生じており、台車自重280kg以上の張力がワイヤロープに働き、また、台車のガイドローラーの欠陥とレールの蛇行による台車とレール間の摩擦力の増大という複合的な原因が重なってワイヤロープが切断に至ったものと推定される。 特にワイヤロープが損傷した主な原因は、台車がレール下方側端部のストッパー位置で停止して、たるんだワイヤロープがレールジョイントと接触した状態で運転を開始したため、ワイヤロープが張る瞬間にそのワイヤロープがレールジョイントと激しく接触して損傷したものと考えられる。 |
2 | 工事用モノレールの点検が不十分であったこと。 |
3 | レールの後方等、台車が逸走する危険のある場所で作業を行わせたこと。 |
4 | 元請による下請事業場を含む安全管理体制が整備されていなくて、現場における安全管理が徹底していなかったこと。 |
5 | 工事用モノレールの運転者に対し、点検方法等の安全教育が不十分であったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 工事用モノレールの電動ウインチに使用するワイヤロープは、素線切れなど損傷の有無を作業開始前に十分点検し、確認してから使用すること。 |
2 | 工事用モノレールの台車のガイドローラーは、常に正常に回転しているか定期的に点検し、確認を行ってから使用すること。 |
3 | 工事用モノレールの台車を載せるレールについて、そのレールを支える架台をアンカー等で固定する等、レールが容易に蛇行しない設置方法となるよう適切に固定すること。 |
4 | 工事用モノレールの下方側端部など、台車が逸走する危険のある場所に、立入禁止措置を講ずること。 |
5 | 工事用モノレールを使用して作業を行うときは、電動ウインチ、ワイヤロープ、台車、レールなどの各機器の点検基準を定め、それらに基づいた適正な点検を実施すること。 |
6 | 工事用モノレールの各機器の構造や性能、操作方法、使用時の危険性などに関する安全教育を関係労働者に実施すること。 |
7 | 元請事業場による安全管理体制を整備し、作業現場の安全管理を徹底すること。 |