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労働災害事例

建設資材の鉄筋の組立中に傍の作業台等が倒れ下敷きになる

建設資材の鉄筋の組立中に傍の作業台等が倒れ下敷きになる
業種 セメント・同製品製造業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 金属材料
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100690

発生状況

 この災害は、プレハブ建設会社の構内において建設資材用の鉄筋を切断加工する作業中に発生したものである。
 被災者の所属する会社は、大手のプレハブ建設会社の工場内で建設資材用の鉄筋を切断加工して型枠を製造する業務および型枠にコンクリートを打設する業務を行っており、被災者(中国籍)は主に鉄筋の組立作業を行っている。
 災害発生当日、午前7時頃、型枠セット場において、責任者、職長、クレーン運転士の3名で当日の作業内容の打ち合わせを行い直ちに作業を開始した。
 クレーン運転士は、7.65tの天井走行クレーンを使用して前日に組み立てた鉄筋を工場から屋外に搬出し、責任者はクレーン運転士が搬出した鉄筋をフォークリフトで建屋から約100m離れた鉄筋置場に運搬していた。
 この作業は、午前8時頃に終了したが、この時刻に被災者が出勤してきたので、クレーン運転士は被災者とラジオ体操を行った後、被災者は切断前の鉄筋を置く作業台に傍でしゃがんだ状態で加工済みの鉄筋を結束線で組み立てる作業を開始し、クレーン運転士は再びクレーンを運転して作業台のところに置いてあった鉄筋4束(1束50本)に玉掛けし、吊り上げて作業台の上に載せた。
 その後、クレーン運転士は、自分で玉掛けロープを外し、クレーンを建屋の端のクレーン置場まで移動させるため作業台から走行させていたが、このときに作業台が倒壊し、作業台の傍で作業を行っていた被災者が作業台と鉄筋の下敷きになった。
 直ちに、被災者を救出して病院に移送したが、内臓破裂のため死亡した。
 なお、作業台の片側には鉄筋棒で4か所に転落防止用の止め棒が設けられていたが、4束の鉄筋束の落下防止としては効果がなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  クレーンを移動するときに作業台にフックを引っ掛けたこと
 作業台は溝つき鉄板で幅70cm、長さ600cm、高さ87cm、質量450kgのものであったが、脚は10本(6.5cmx12cm)取り付けられていたものの床には固定はされていなかった。
 この作業台の上に鉄筋4束(180kg)を載せた後、クレーン運転士がクレーンを所定の位置に移動するときに、クレーンのフックが作業台に引っかかったことを気づかずに巻き上げ操作を行ったため、作業台が横方向に引かれて鉄筋とともに倒壊したものと推定される。
2  作業計画が明確でなかったこと
 朝の作業打ち合わせでは、クレーンを使用した鉄筋等の運搬についての打ち合わせは行われたが、その作業範囲の他の作業を含めた全体の作業計画についての打ち合わせが行われなかったため、被災者が作業台の傍らで通常の自分の作業を行っていて、倒れた作業台と落下した鉄筋束の下敷きになった。
3  安全管理が行われていなかったこと
 作業の場所が狭隘でクレーンを使用した重量物の取り扱い作業と鉄筋の組み立て作業などが混在して行われていたのに、全体の作業指揮、作業計画の作成、安全教育など安全管理が実施されていなかった。
 また、安全衛生推進者などの安全担当者も選任していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  当日の作業計画について十分に打ち合わせること
 毎日の作業が定型的な場合であってもクレーンを使用した重量物の取り扱い作業等においては常に危険が伴うので、作業開始前に必ず作業員全員の参加の下に当日の作業計画を確認、徹底する。
 また、作業員の中に外国籍で日本語会話が不十分な者がいる場合には、特に作業指示を的確に行う。
2  作業台の構造を改善すること
 鉄筋等の重量物を載せる作業台については、脚部を確実に固定するとともに、質量に十分に耐える強度と十分な広さを有するもの、落下防止の措置を行ったものに改善する。
3  クレーン作業を行うときには立ち入り禁止を行うこと
 クレーンを用いた作業を行う場合には、吊り荷の落下等により危害を受ける範囲に他の作業者が立入ったり、その範囲内で平行して作業を行わないように立ち入り禁止の措置を行う。
 また、合図者を指名してその者の合図によりクレーンの操作を行う。(クレーン則第25条関連)
4  安全管理を十分に行うこと
 規模の小さい事業場の場合には、安全衛生推進者を選任して安全管理計画の作成、作業手順の作成、安全教育の実施、作業場所の巡視等を行わせるとともに、親企業の構内で作業を行う場合には親企業などとの連絡調整を十分に行う。(安衛法第12条の2・安衛則第12条の2〜4関連)