住宅の太陽熱温水器の交換作業中に風にあおられて墜落
業種 | 各種商品小売業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 屋根、はり、もや、けた、合掌 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100689
発生状況
この災害は、個人住宅の屋上に設置されている太陽熱温水器を交換する作業中に発生したものである。被災者の所属する会社は、建築資材の販売、太陽熱温水器の販売と取り付け、個人住宅の増改築等を行っている。
災害発生当日、被災者は、前日に下請けの2名とともにトラック積載型クレーン(2t)でコンクリートブロック造住宅の2階屋上に吊り上げていた新しい太陽熱温水器の取り付けと古い太陽熱温水器の撤去作業の準備を1人で行うことになり、朝から現場で作業を行っていた。
午後4時20分頃、被災者から会社の工事部長のところに、取り付け作業が終了したので古い太陽熱温水器の撤去作業を行うための人員手配の電話が入った。しかし、人員の手配ができなかったので、部長は自分でトラック積載型クレーンを運転して現場に行き、まず太陽熱温水器のタンクを吊り降ろした。
続いて、パネル部分を吊り降ろすため、パネルの中央部分にベルトスリングを一本吊りの形で玉掛けし、部長がクレーンを操作し、被災者が屋上で建物に傷をつけないようにパネルの端を手で支え1mほど吊り上げた。
そのとき、強風が吹きパネルがあおられて大きく揺れだしたことから被災者が手で振れを止めようとしたので、部長は「危ないから寄るな」と叫んだが、被災者はパネルに押されるような形で約4m下の地面に墜落し、その後、病院に移送したが出血性ショックのため6時間後に死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 墜落防止の措置をせずに作業を行ったこと 墜落の直接の原因は強風にパネルがあおられたことであるが、被災者が立っていたところは屋上の端でわずかに高さ17cmのコンクリートパラペットがあるだけで、墜落の危険があるのに何ら墜落防止の措置を行っていなかった。また、被災者は安全帯、保護帽も着用していなかった。 |
2 | 無資格者が玉掛けを行ったこと パネル等に玉掛けした被災者および部長は、いずれも玉掛け技能講習を修了した者ではなく、無資格のまま一本吊りの形で玉掛けしていたことがパネルの振れを大きくした間接的な原因である。 |
3 | 作業方法を定めずに作業を行ったこと 太陽熱温水器などは相当の重量であり、その上げ降ろしについてはあらかじめ安全な方法、手順を定めて作業を行う必要があったのに、短時間の作業であること、経験があること等の理由で安易に作業を繰り返していた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 移動式クレーン作業について安全な作業方法を定めること 移動式クレーン作業については、あらかじめ作業の方法、クレーンの転倒防止、作業者の配置および指揮の系統等について定めた上で作業を行う。(クレーン則第66条の2関連) |
2 | 玉掛けは有資格者に行わせること 吊り上げ荷重が1t以上の移動式クレーン等の玉掛業務は、玉掛技能講習を終了した者などに実施させることが必要であり、そのためには所有する移動式クレーン等の能力を確認し、計画的に有資格者の養成を行う。(安衛法第61条・安衛令第20条関連) |
3 | 墜落防止措置を講じて作業を行うこと 高さが2m以上の墜落危険がある場所では、手すりの設置、安全帯の使用等の確実な墜落防止措置を講じたうえで作業を行うことが必要であり、短時間作業であってもそれらを省略することは禁止しなければならない。 なお、この事例のような場合には、パネルを手で支える方法ではなく、安全な離れた場所から棒などを介して振れを止める方法を採用する。 |
4 | 担当者を定めて安全管理を実施すること 労働者数が10〜49人の事業場では、安全衛生推進者を選任し、労働者の安全と健康確保のための措置に関する事項、安全衛生教育の実施、災害調査とその原因分析、職場巡視の業務等を行わせる。(安衛法第12条の2・安衛則第12条の2関連) |