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労働災害事例

建材等の化粧板の検品中に「はい」が崩壊

建材等の化粧板の検品中に「はい」が崩壊
業種 その他の卸売業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 荷姿の物
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.100668

発生状況

 この災害は、木材半加工品の倉庫においてツキ板の検品を行っているときに発生したものである。
 この倉庫は、広さが32m×18m、高さが8mの建物でコンクリート床の中央に通路があり、その両側にはツキ板(木材を厚さ0.12〜0.6mmに薄く加工して家具、建材等の表面化粧に使用するもの)の束(1束は数百枚、質量にして20〜50kg)が積まれている。
 災害発生当日、午前8時から朝礼があり、専務から営業部の者は恒例の展示会に出品するツキ板の検品(ツキ板の束を点検し、出庫品の選定と品質確認)を行うので手の空いている者は手伝うよう指示があり、朝礼に参加した5名(専務、常務を含む)に新たに1名が加わって午前9時頃から検品作業が開始された。
 検品作業は、2名一組となって「はい」から降ろした束を解き、20〜30枚のツキ板をまとめて床においてその一番上の表面を検査することによって、全体の束の品質を確認していくものであったが、予定の半分ほどの検品が済んだ午前9時25分頃、倉庫の北側にある「はい」の一つが「ガサツ」という音ともに突然崩壊した。
 近くにいた常務が「危ないー」と叫んだが間に合わず、その近くで作業をしていた専務と作業員1名が崩壊してきた約30束のツキ板の下敷きになり、専務は前頭部を強打して約10時間後に頭蓋骨骨折で死亡し、他の1名は顔面擦過傷等で7日の休業となった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  「はい」が不安定な形で高く積み上げられていたこと
 この倉庫に積み上げられる「はい」は通常は1.5m程度の高さであったが、3日後から3日間は毎年恒例の大規模な展示会が開かれることになっていたため、在庫が増えていて通路も狭くなっており「はい」の高さも3〜4m程度になっていて、りん木を噛ませてはいたが非常に不安定な形であった。
2  作業開始前に「はい」の状況を確認していなかったこと
 当日の作業の指示を行ったのは専務(実態は管理職である労働者)であったが、作業に先立って倉庫内の「はい」の状況を確認して作業者の配置、作業の手順等の指示を行ってはいなかった。
3  「はい」の崩壊を防止する措置を行っていなかったこと
 崩壊した「はい」は被害者でもある専務が積み上げたものであるが、通常よりも高く積み上げたことにより「はい」が不安定な状態であることが明らかであったのに、崩壊を防止するために網を張ること、ロープで縛ること等の措置を行っていなかった。
 なお、専務は、フォークリフト運転の技能講習を修了していたが、「はい作業主任者」技能講習は受講していなかった。
4  「はい」の危険性等について認識がなかったこと
 当日の作業指示は専務が行ったが、「はい」の崩壊危険とその防止等に関する指示は全く行っておらず、また、作業者らも崩壊危険等についての認識はなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  「はい」は安定した形で積み上げること
 「はい」を積み上げるときには、荷の種類、形状等を十分に検討し、ツキ板の束を井桁状に組むなどの配慮を行うとともに安定性のある高さに制限する。
2  倉庫内の整理整頓を行い「はい」の高さの調整等を行うこと
 倉庫内にはほとんど使用することのないいわゆる死蔵品が「はい」のまま放置されていることも少なくないので、一定の期間ごとに倉庫内の整理整頓を行い、フォークリフトの走行路等の確保を行うとともに、「はい」の間隔の拡幅、高さの調整等を行う。
3  「はい」の崩壊防止措置を行うこと
 「はい」の崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、「はい」をロープで縛り、網を張り、くい留行い、「はい」替えを行う等の措置を講ずる。(安衛則第432条関連)
4  「はい作業主任者」を選任し作業指揮を行わせること
 安定した「はい」付け又は「はい」くずしを行うためには、一定のカリキュラムにより教育を受けた「はい作業主任者」を選任し、その者の直接指揮のもとに作業を実施する。(安衛則第428,429条関連)
5  安全管理を実施すること
 倉庫における検品等の作業を行う者に対しては、あらかじめ「はい」の崩壊、荷の落下の危険等について安全衛生教育を実施する。
 また、経営トップは、定期および随時に作業場所を巡視し、作業の実態を把握するとともに、必要な指示、指導を行う。