ホイスト式昇降機の修理中に搬器とともに落下
業種 | その他の食料品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.611
発生状況
食料品製造工場において、午前9時ごろ、パートタイマーのAが、1階の操作盤のボタンを押すことにより原料や製品の揚げ下ろしに使用していたホイスト式昇降機(積載荷重:240kg、昇降路の高さ:10m)の搬器を3階から1階に降ろそうとしたが、それまで支障無く動いていた搬器が動かないため、このことを製造課長である被災者に連絡した。これを受けて、被災者は、工場長に相談したところ、本昇降機を製造したメーカーにすぐに来てもらうよう指示を受けた。このため、被災者がメーカーに電話をしたが、都合が悪く夕方にしか行けないとのことであった。1階には冷凍庫があり、通常の作業では、3階で出来上がった製品をすぐに本昇降機を用いて1階に降ろし、冷凍保存していたが、本昇降機の故障により、出来上がった製品が3階の作業場に溜まった状態となった。このままでは、製品の品質に影響するため、被災者は、単独で、3階の昇降機の積卸口の上部(床面から約2m)にある点検孔から踏み台を利用し、工具を持って昇降路内に進入し、搬器の上部に上がって作業をしていたところ、搬器とともに1階まで落下し、死亡した。災害発生直後の巻上機の状態は、ワイヤロープが逆巻きで、乱巻きになった状態で切れており、また、ガイドレールが途中で少し曲がった状態になっていたことから、搬器を降ろす途中で搬器がガイドレールの歪みにより引っ掛かり、これによりワイヤロープが弛み、巻上機に逆方向に巻き込まれ、搬器が最上部まで巻き上げられ、ワイヤロープが損傷し、さらに、被災者が乗ったことから、ワイヤロープが切断し、落下したものと考えられる。原因
[1] 昇降機の定期的な点検がなされておらず、保守についてもメーカー任せにしていたこと。また、ガイドレールが曲がっていたにもかかわらず、補修等を行わずに使用していたこと。[2] 昇降機の安全装置としては、ドアロックのほか、巻過防止装置が設けられていたが、棒状のものであり、動力を遮断する機構にはなっていなかったこと。
[3] 点検孔から昇降機の昇降路内にだれでも容易に入れる構造となっていたこと。
[4] 昇降機にかかわる作業手順が定められておらず、作業者に対する教育も不十分であったこと。
[5] 故障時等の連絡体制等が確立されていなかったこと。
対策
[1] 点検項目および実施者を定め、定期的に点検を行い、その結果に基づき補修等を確実に行うこと。[2] 昇降機には、適切な安全装置を設けること。
[3] 昇降機の点検孔には、鍵を取り付けること等によって容易に立ち入ることができないようにすること。
[4] 故障時等の対処方法等も含め、昇降機にかかわる作業手順を定め関係者に周知すること。また、作業者に対して、機械の危険性、取扱方法、事故時等の措置等の教育を行うこと。
[5] 事業場における安全衛生管理体制を確立させること。