エレベーターに閉じ込められた乗客を助けようとして昇降路内へ転落
業種 | ビルメンテナンス業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 危険場所に近づく |
No.1109
発生状況
この災害は、オフィスビルのエレベーターに閉じ込められた人を救出しようとして、出入り口の扉を開けた時に昇降路に墜落したものである。被災者は、このビルの設備の保守管理、警備等を行っている会社に所属し、主に冷暖房設備の運転・停止、消費電力の記録、各テナントから依頼を受けての蛍光灯・電球の交換等の業務に従事していた。
災害発生当日、午後1時25分頃、ビルに設置されている2機のエレベーターの2号機が6階付近で停止し、テナントの従業員が閉じ込められた。
乗っていた者は、階床選択ボタンを何度も押したが全く動かないので、エレベーター内のインターホーンを使い、管理事務所に連絡した。
そこで、被災者は、警備員と二人で6階に行き、非常解錠キーでドアを解錠し、エレベーターに向かって左側のドアを警備員、右側のドアを被災者が手で引き開けた。
しかし、その時エレベーターは、6階には停止しておらず、1階まで降りていたため、ドアの開放と同時に飛び込んだ被災者は1階まで墜落した。
原因
この災害は、オフィスビルのエレベーターに閉じ込められた人を救出しようとして、出入り口の扉を開け昇降路に墜落したものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。1 直接的な原因
エレベーターに閉じ込められた乗客を救出するため、停止階として表示されている6階において、非常解錠キーでドアを解錠し、開けた扉の中の状態を確認せずに被災者が昇降路に飛び込んだこと。
なお、エレベーターの停止原因は、搬器の昇降と連動している階床選択器内のスライダーの摺動部が異物を噛み込み、階床選択器が停止したため、それに搬器が連動して停止したものと考えられる。
2 間接的な原因
エレベーターの故障事例、その対処方法については、エレベーターの設置業者からビルの所有者に対してインジケーター(指示書)が手渡されていたが、被災者の所属するビル管理会社には渡されていなかった。
対策
この災害は、オフィスビルのエレベーターに閉じ込められた人を救出しようとして、出入り口の扉を開け昇降路に墜落したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 エレベーターの制御機能等の改善
階床選択器に異物が入り込んで機能に異常を生じないような構造とすること。
2 点検整備・改善の徹底
エレベーターの点検・整備については、制御機構を中心に徹底して行うこと。
3 異常事態発生時の役割分担の明確化
この災害のようにエレベーターが途中で停止した場合の救助等については、ビルの所有者、ビルの管理者、エレベーターの設置者及び保守点検者との間であらかじめ定めておくこと。
4 教育訓練の実施
エレベーターに異常事態が発生した場合の緊急連絡方法、救助の方法については、手順を明確にした安全作業マニュアルを作成し、関係者に十分教育しておくこと。