斜面高さ約90mの上部において、ブル・ドーザーにより採石土砂を斜面下方に落とす作業中、路肩から転落して死亡
業種 | 採石業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 整地・運搬・積込み用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 照明の不適当 | |||||
発生要因(人) | 憶測判断 | |||||
発生要因(管理) | 危険場所に近づく |
No.100972
発生状況
本災害は、斜面高さ約90mの上部において、被災者がブル・ドーザーを用いて採石土砂を下方へ落としていたところ、ブル・ドーザーごと路肩から転落して死亡したものである。 当日の作業は、採石場の斜面の高さ約80mに位置するベンチ(幅10mの作業場所)とさらに約10m上方のベンチ(幅14mの作業場所)で、原石山の表土の除去の一環として行われていた。作業方法としては原石山より切り崩した土砂及びズリを「ズリ押土(ズリなどの土砂をブル・ドーザーでベンチの端まで押して下方にズリ等を投下すること)」と言われる方法でベンチから斜面下方へ落とすものであった。路肩からの転落防止対策としては、「一山残し(ブル・ドーザーの排土板(ブレード)で一度に土砂を全部落とすのではなく、路肩に残した山を新たに排土板で押し出した山で落とすことで、常に路肩に一山を残し、ブル・ドーザーが路肩の際まで近づくのを防ぐ施工法)」を取ることとしていた。被災者は単独作業のため詳細は不明であるが、上部のベンチの路肩には土砂がなく、クローラの跡があったことなどから、路肩からブル・ドーザーごと斜面を転落したものと思われる。 なお、この作業は夜間に行われており、当日の天候は雨でかつ濃霧が発生していたため、ブル・ドーザーに取り付けられていた照明だけでは、5m先が見えない程の視界不良状態であった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 採石場の原石山のベンチの路肩でブル・ドーザーを用いて作業を行っており、当該ブル・ドーザーの転落により作業者に危険が生じるおそれがあるのに、当該ブル・ドーザーの誘導を行う誘導者を配置していなかったこと。 |
2 | 掘削面の高さが2m以上となる採石法第2条に規定する岩石の採取のための掘削の作業について、採石のための掘削作業主任者技能講習を修了した者のうちから、作業主任者を選任していないこと。また、作業主任者が作業を直接指揮していなかったこと。 |
3 | 現場における指揮命令系統が確立しておらず、作業指示が徹底していなかったこと。 |
4 | 濃霧により視界が5mと悪いにもかかわらず作業を行ったこと。安全に作業を行うことのできる気象条件の基準が設けられておらず、気象条件の悪化に伴い作業を中止するための段取りが決められていなかったこと。 |
5 | 夜間作業に必要な照度の検討がされていないこと。 |
6 | 採石作業にかかる墜落の危険に関する教育が徹底されていなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 車両系建設機械が転落するおそれのある路肩等の箇所には、立ち入れないような対策を講じること。作業の内容によりどうしても路肩等に接近することが必要な場合には、必ず誘導者を配置し、その者に誘導をさせる、又は「一山残し」を含め、接近できる距離をあらかじめ特定し、それ以上は路肩等に近づけないようにすること。 |
2 | 採石のための掘削作業主任者を選任し、その者に作業を直接指揮させること。 |
3 | 現場の指揮命令系統の確立及び作業主任者の作業指示の明確化を図り、作業者にその作業指示に基づき作業を行うことを徹底させること。なお、作業内容を変更する場合は作業者の判断によることなく、必ず作業主任者の許可を得ることとすること。 |
4 | 気象条件による作業中止基準を設けること。なお、作業開始までに当日の降水量、注意報、警報等気象条件の情報収集の徹底を図ること。 |
5 | 当作業場のような場合では原則的に夜間作業は行わないこと。やむを得ず夜間作業を行う場合は、作業に必要な照度を保つため作業場所全体が把握できるような照明を設置する等の適切な措置を講ずること。 |
6 | 関係作業者に採石作業にかかる危険性についての安全教育の徹底を図ること。 |