途中で停止した簡易リフトの下に入って修復しようとして搬器の下敷きになる
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | ||||||
災害の種類(事故の型) | ||||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100855
発生状況
この災害は、菓子製造工場の簡易リフトにおいて発生したものである。
この工場では、団子、餅等を含めた多種の菓子を製造しており、被災者は菓子職人として長く勤務していた。 災害発生当日、朝6時頃に出勤し、製品のパック詰め、みたらし団子の製造を行っていた。午後6時頃に、工場に設けられている簡易リフト(搬器の大きさは幅85cm、奥行き120cm、高さ120cm、昇降路の長さ13m、つり上げ荷重1.02t、搬器の質量201kg)を操作して4階の倉庫に停止させ、倉庫に保管していたプラスチック製の鏡餅型の入ったダンボール箱(推定100個程度の型が入っていた)を翌日の作業のため搬器の中に運び込み、搬器の扉は開放したままで1階への操作ボタンを押した。 しかし、簡易リフトは少し下がったところで停止してしまった。被災者は1階に降りて同僚とともに点検することにし、1階の荷の積卸口扉を開けて同僚が懐中電灯で中を照らし、被災者が中に入ると、搬器が3階付近でダンボール箱が引っ掛って停止しているのが発見された。 そこで、被災者は、昇降路の中に椅子を持ち込んで、それからガイドレール沿いに搬器のところまで上ろうとしたところ、突然、搬器が落下し、被災者はその下敷きになって死亡した。 なお、巻き上げ用ワイヤロープ及びその取り付け部分に異常はなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | つり荷が搬器から飛び出ていたこと
搬器にプラスチック製の鏡餅型の入ったダンボール箱を積み込んで、搬器を1階に下ろそうとしたときに、搬器の扉を閉めなかった。このため、ダンボール箱が搬器から飛び出して昇降路に引っ掛った。 |
2 | 搬器の運転を停止しなかったこと
被災者は簡易リフトが停止したため1階に降りたが、リフトを停止しなかったため、巻き上げ用ワイヤロープは緩められ続けていた。 そのため、引っ掛かりが何らかの理由で外れたときに搬器が一気に降下した。 |
3 | 簡易リフトの点検等を行っていなかったこと
この簡易リフトは約20年前に設置されたものである。故障したときに修理を依頼することはあっても、会社として定期自主検査、作業開始前点検等は実施しておらず、安全装置も正常に稼動していなかった。 |
4 | 簡易リフトなど機械設備の取り扱いについての作業基準が定められていなくて、安全教育も行われていなかったこと
簡易リフトの操作者の指名と安全教育の実施、異常時の措置についての教育等も実施していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 簡易リフトの定期自主検査等を実施すること。
エレベーターのうち荷のみを運搬する簡易リフト(搬器の床面積が1m2 以下又はその天井の高さが1.2m以下のもの)については、設置後1年以内ごとに1回、1月以内ごとに1回定期自主検査を行って不良箇所の補修を行うとともに、その日の作業開始前にブレーキ等の機能の点検を実施する。 また、定期自主検査等の記録は、3年間保存する。(クレーン則第208〜211条) |
2 | 異常時の措置についてあらかじめ指示徹底しておくこと。
簡易リフトは多くの業種でかなり設置されており、荷のみを運搬する目的で製作されることから安易に取り扱われることが少なくない。使用中に突然停止する等の異常が生じた場合に停止ボタンの操作等により電源を遮断すること、管理者に直ちに連絡してその指示を受けるまで自己判断で修復作業等を行わないこと、修復は専門の業者等に依頼すること等の異常時の措置についてあらかじめ関係作業者に指示徹底する。 |
3 | 安全教育等の安全管理を実施すること。
簡易リフトの操作者については、あらかじめ特定者の指名を行うとともに、一定の合図を定めてそれによって操作を行うこと、搬器の扉は必ず閉めて操作すること(クレーン則第206条)など安全確保のための基本的な安全教育を実施する。 また、管理者は、定期あるいは随時に職場を巡視し、機械設備の点検状況の確認、安全作業の実施等についての確認と必要な指示を行う。 |