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労働災害事例

道路清掃作業に従事していた作業員が熱中症にかかる

道路清掃作業に従事していた作業員が熱中症にかかる
業種 その他の廃棄物処理業
事業場規模 1〜4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 高温・低温環境
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 温湿度の不適当
発生要因(人) 身体機能
発生要因(管理) 不安全な行動のないもの

No.100842

発生状況

 この災害は、7月中旬の大阪で道路清掃作業に従事していた作業者が、午後2時頃熱中症により死亡したものである。
 被災者が所属する事業場は国道の清掃作業を請け負っており、今回の作業は、片側3車線道路の上りの車線の路側帯の清掃及び車線迂回コーナー部フェンス内側雑草の除去である。清掃作業は枯れ草、砂、缶などの収集である。
 作業方法は清掃車線上に2tトラックを止め、その後方に警備員が配置され、トラックの前方約20mの範囲をカラーコーンで仕切り、その内側で作業者が縦一列に並び先頭の者から、手ほうき、ちり取り、袋、スコップというように順にもち、ゴミなどを袋に収集し、トラックに積み込んで行き、トラックを前方に移動させ順次進んで行くものである。
 災害発生当日、被災者は午前9時に現場に到着し、直ちに清掃作業に取りかかった。10時に道路の下の日陰で約15分の休憩をとり、再び清掃作業を開始した。約45分の作業の後、日陰で15分の2度目の休憩をとった。12時から午後1時まで昼食と休憩をとった後、作業に戻った。
 午後2時頃、被災者が座り込んだ。作業指揮者は被災者に日陰での休憩を指示して作業に戻った。しばらく経って様子を見に戻った作業指揮者が、被災者が座り込んだ場所から約80m離れた場所で倒れているのを発見した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  災害発生前日と当日は最高気温が36度を超えており、災害発生時の午後2時の気温は36.4度であり、舗装した路上では輻射熱により更に高い温度であったと推定されること
 作業場所は路上であり、気温、湿度、風速など作業場所の気象条件によっては、熱中症を発症しやすくなる。
 熱中症は、高温高湿環境下で、体温調節や循環機能が障害を受けたり、水分塩分代謝の平衡が著しい失調をきたして、作業を行うことが困難又は不能に陥った状態を総称していう。一般に、熱射病、日射病といわれるものは、熱中症の一種である。
2  被災者は経験年数は3年であるが、68歳と高齢であったこと。
3  健康診断が実施されておらず、被災者の健康状態、既往歴などが把握されていないこと。
4  被災者が気分が悪くなって休んだとき、顔色の確認と被災者との会話で、症状が軽いと判断したこと。
 熱中症との認識はなく、一人で休憩をとらせ、症状が悪化して病院に搬送した。
5  労働衛生管理体制が不備で、労働衛生管理が不十分であったこと。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  作業場所に、温度計や湿度計を設置し、温度、湿度に基づく、作業の中止、休憩時間管理を行うこと。
 早朝など涼しい時間に作業を行うなど作業計画を変更することも効果がある。
2  直射日光を遮ることのできる簡易な日よけを設備を設けること。
 作業車に日よけを設けるなど涼しい休憩場所を確保する必要がある。
3  トラックにスポーツドリンクを備え付ける等水分や塩分を容易に補給できるようにすること。
4  熱を吸収、保熱しやすい服装を避け、吸湿性、通気性の良い服装とすること。また、通気性の良いヘルメット、帽子などをかぶらせること。
5  健康診断を実施し、その結果に基づき、適切な健康管理、適正配置を行うこと。また、作業者の睡眠時間、栄養指導等日常の健康管理について指導を行うこと。
6  作業管理者に対し、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
(1)  熱中症の症状
(2)  熱中症の予防方法
(3)  緊急時の救急措置
(4)  熱中症の事例
7  少しでも熱中症の症状が見られた場合は、救急措置として涼しいところで身体を冷やし、水分及び塩分の補給を行うこと。