化学工場の定期補修工事に使用する足場の組立て作業中に作業者が熱中症にかかる
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 心不全等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 遮蔽なし、不十分 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具の選択、使用方法の誤り |
No.100841
発生状況
この災害は、化学工場の定期補修工事に使用する足場の組立て作業中に、熱中症にかかったものである。
災害が発生した日、朝礼が終わった後、被災者ら3名の作業者は、前日に組み立てた足場の手直しを行い、10時に休憩をとった。休憩後、足場材を、積載型トラッククレーンを用いて、200mほど離れた足場を組み立てる場所まで運搬し、昼食をとった。 昼の休憩後、足場の組立て作業を開始した。被災者は地上から足場材を組立て中の足場上にいる2名の作業者に手渡し、手渡された作業者らが共同で足場材を固定して足場を組み上げていった。 午後3時に休憩をとり、作業者らは適宜水分を補給していた。 足場の組立て作業を再開し、1時間ほど経過した頃、足場固定用クランプが不足してきたので、被災者は作業場所から100mほど離れた場所にクランプを取りに行った。その後、10分ほど経過した頃、構内道路を、ふらふら蛇行しながら歩き、構内道路上にかがみこんだ被災者を工場の従業員に目撃され、直ちに救急車で病院に搬送したが、7時間後に熱中症による多臓器不全で死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 災害が発生した時期、35度を超える真夏日が続き、災害発生当日も最高気温37度、災害発生時の午後4時頃においても、気温が34.9度、湿度が70%というかなり高温多湿の気象状況であったこと。 |
2 | 作業場所が、日陰のない直射日光の強い場所であったこと。 |
3 | 保護帽のみの着用で、直射日光を遮るような対策が十分に講じられていなかったこと。 |
4 | 炎天下において、筋力を必要とする質量10kgから20kgの部材の運搬などの作業を連続して行っていたこと。 |
5 | 現場事務所内に飲料水が置かれていたものの、作業中に発汗が激しく水分および塩分の補給が必要であったが作業場所近くに飲料水および塩分を補給する設備が設けられていなかったこと。 |
6 | 事業者はもとより作業者全員が熱中症の危険や予防に関する知識が不足していたこと。 |
7 | 災害が発生した時期、連日連夜、30度を超える真夏日と25度を超える熱帯夜が続き、被災者は睡眠不足と疲労の蓄積など身体的な不調があったものと考えられること。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 屋外作業においては、可能な限り直射日光を遮ることのできる措置を講じること。 |
2 | 作業場所には、作業中に容易に水分および塩分を補給することのできる物品を備え付けること。 |
3 | 作業場所に近接する場所に、冷房室や日陰などの涼しい休憩場所を設けること。 |
4 | 作業場所に環境温度を評価する指標(WBGT)を把握するための環境温度計を設置し、作業中の温湿度の変化に対応した管理を行うこと。 |
5 | 気温条件、作業内容等を考慮して、休止時間や休憩時間の確保に努めること。 |
6 | 熱を吸収、保熱しやすい服装は避け、綿など吸湿性、通気性のよい生地で、明るい色調の服装にすること。 |
7 | 高温環境下における作業に従事する者に対し、熱中症に関する労働衛生教育を行うこと。また、熱中症にかかりやすい要因としての、二日酔い、睡眠不足、疲労の蓄積など夏バテしない体力作りに関する健康教育を実施すること。 |
8 | 作業中に、身体の異常を自覚し、または他の作業員の異常を目撃したときは、すぐに職長へ通報するように全作業員に周知すること。 |