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労働災害事例

傾斜地の崩壊防止対策工事中に熱中症となる

傾斜地の崩壊防止対策工事中に熱中症となる
業種 砂防工事業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 高温・低温環境
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
建設業のみ 工事の種類 砂防工事
災害の種類 高熱物等による
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100794

発生状況

 この災害は、急傾斜地の崩壊防止対策工事で発生したものである。
 被災者の所属する会社は、急傾斜地の崩壊防止対策工事の1次下請として6か月ほど前から作業を行っていた。
 災害発生当日、職長のほか被災者を含む4名の土工が3名と2名に分かれて午前8時頃から山の法面(のりめん)と擁壁(ようへき)との間の埋め戻し作業を開始した。
 作業は、スコップで山から土を崩し、それをジョレンで均してランマーで固める作業を繰り返し行うもので、この日はかなり暑かったので午前9時30分頃から30分ほど休憩を取って作業を続けていた。
 午前11時30分頃、被災者が元請の現場代理人に対し「仕事の切りがいいのでお昼にしましょう」と提案し、昼の休憩に入った。
 このとき、同僚の1人が、被災者の調子が悪そうに見えたので、「どう」と声を掛けたところ、「大丈夫だよ。昼に休めば直るだろう」と言って被災者は自分の乗ってきたトラックの中でクーラーをかけて休んでいたが、車から降りたり、また、乗ったりの動作を繰り返していた。
 昼の休憩が終わり、現場代理人が戻ってきたときに、被災者はまだ車の中にいて昼食も採っていなかったので、「身体の具合が悪かったら帰っていいよ」と言ったところ、「悪いなー」と応え、自分の運転してきたトラックで自宅に帰ったが、ベッドの上で死亡しているのを午後4時30分頃に帰宅した妻が発見した。

原因

  この災害の原因としては、次のようなことがあげられる。
1  熱中症に罹ったこと
 当日の午前11時の気温は29℃、湿度73%であったが、被災者が作業を行っていた箇所は山の裾で山と高さ124cmの擁壁との間の風が通りにくい状態であったため、体感温度は38℃〜39℃以上であったと考えられる。
 そのため、被災者は、重度の熱中症に罹ったものと推定される。なお、死後に検死した時に、クーラーの効いた自宅にいたにもかかわらず直腸温度が35℃と高かったことが判明している。
 また、被災者らは、会社から持参したクーラーボックス(10リットル)の中の麦茶を1時間に1回位のペースで飲んでいたが、被災者のペースは明らかではない。
2  健康管理を十分に行っていなかったこと
 被災者は、2ヶ月ほど前に健康診断を行っていたが、その結果では血圧が140-86とやや高めであり、尿の糖分も高いほか、血管が細いため採血ができず血液にかかる検査ができないので、要再検査となっていたがその後の検査は実施していなかった。
3  作業者の管理を行っていなかったこと
 被災者が当日の作業開始直後から体調が悪そうなことを同僚が気づいていたが、作業場所の責任者である職長が特に体調の確認を行うことがなかったなど現場における作業管理、健康管理が十分ではなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  熱中症についての教育を実施すること
 屋外で直射日光を浴びながら作業を行っているときに、体温調節が乱されて熱痙攣や発汗停止、中枢神経系の障害などの病的症状を呈する熱中症について、事業者等が情報を収集するとともに、その予防対策の教育等を実施する。
 予防対策としては、連続作業時間の調節、水分や塩分の補給などを行う。
2  作業開始前に体調等の確認を行うこと
 作業者の体調は日々変化しているものであり、特に夏期の高温、多湿の時期においては暴飲等のほか睡眠不足、食欲不振などによって体調不良になることが少なくないので、その日の作業開始前、昼の休憩後等に作業者の体調の確認を行い、体調不良の者については無理をさせないで作業の中止、医師の診断等の処置を行う。
3  健康診断の実施等の安全衛生管理を行うこと
 毎年の定期に行う健康診断については、確実に受診させるとともに、その結果に基づく事後措置を確実に実施する。特に、要精密検査の対象となった者については、早期に精密検査を受診させ、必要な治療等を行わせる。
 夏期の作業で、熱中症のおそれが高い場所での作業においては、あらかじめ労働時間の短縮を行うとともに、水分・塩分の補給要領の確認、涼しい休憩場所の確保を行うほか、十分な休養、睡眠の確保等についての指導を行う。