職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

火災報知設備の作動用ケーブル付け替え工事中、消火用炭酸ガスが室内に噴出して、作業者が酸欠症となる

火災報知設備の作動用ケーブル付け替え工事中、消火用炭酸ガスが室内に噴出して、作業者が酸欠症となる
業種 機械器具設置工事業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の電気設備
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 機械器具設置工事
災害の種類 酸欠
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:9人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 機械、装置、用具、什器の配置の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 有害な場所に近づく

No.100448

発生状況

 この災害は、変電所建物改修工事において、火災報知等設備作動用ケーブル付け替え作業中、消火用ガス放出弁が作動し、放出した炭酸ガスにより作業者が酸欠症となったものである。
 建物改修はX社が元請で作業が行われた。
 災害発生当日、下請Y社が火災報知設備改修工事、下請Z社が変圧器室壁面アスベスト撤去工事を行った。
 火災報知設備改修工事は作動用ケーブルを埋設型から露出型に改修するもので、壁面2箇所に孔を開け、ケーブルを通す必要があった。
 孔開け作業は穿孔(せんこう)機を使用して注水しながら行うもので、一つ目の孔を指示された場所に開けた後、次の孔に取りかかったが、現場責任者は図面で指定された場所は建物の強度が低下する可能性があると判断し、図面で他の埋設ケーブルがないことを確認した別の場所を選定して孔を開けさせた。
 ところが、この箇所には消火設備用のケーブルが埋設されていたため、ケーブルが切断され、注水していた水でショートして、消火用ガスの弁が開き、変圧器各室に瞬時に大量の炭酸ガスが放出され、室内でアスベスト撤去工事中の作業者等9名が酸欠症になった。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 消火設備の制御信号用ケーブルの埋設経路が明確に示されていない図面を使用して搾孔する場所を定めたこと
 下請会社の現場責任者が新たに選定した孔開け位置には、火災報知設備および消火設備の作動用ケーブルが埋設されており、穿孔(せんこう)中に穿孔(せんこう)機の刃がケーブルを切断し、注水していた水により、火災報知設備用ケーブルの電流が消火設備の制御用ケーブルに流れ、ガス放出弁が作動して消火用炭酸ガスを瞬時に大量に放出した。
2 孔開け予定場所を現場責任者が独自の判断で変更したこと
 発注者が作成した設計図により施工することが定められていたが、小規模な変更については現場の判断に任されていた。
3 ガス放出弁が誤作動する危険性について、発注者、元請、下請とも全く認識していなかったこと
4 事故によって炭酸ガスが放出されたので、ガス噴出の30秒前の避難警報が鳴らなかったこと、また、必要な装備なしで救助活動を行ったこと

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 工事現場における安全衛生管理体制を確立すること
 工事現場での安全衛生管理組織の責任権限を明確にして、権限の無いものが計画を変更しないよう、発注者を含む安全衛生管理体制を確立し、徹底する必要がある。
2 工事に伴う消火設備の誤作動について危険性の事前評価を十分に行い、改修工事の安全作業手順を作成し、周知徹底すること
 消火設備の誤作動による危険防止のため、消火用炭酸ガスが放出するおそれのある設備を工事する場合には、消火用炭酸ガスボンベのすべての弁を閉じること、火災報知設備および消火設備の作動電流を遮断することなど消火設備が誤って作動しないようにするとともに、炭酸ガスが放出するおそれのある場所で行う作業は中止することなどの安全作業手順を作成し、周知徹底し、作業の安全を図る必要がある。
3 安全衛生教育を実施すること
 火災防止設備の危険性および酸素欠乏危険性について、作業関係者に周知することが大切である。