送電線工事用昇降機で上半身を搬器から乗り出して挟まれる
業種 | 電気通信工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 電気通信工事 | ||||
災害の種類 | 工事用エレベータ、建設用リフト | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.100425
発生状況
この災害は、500kv送電線新設工事において、鉄塔上の作業現場に昇降機によって移動中、作業者が昇降機の搬器と鉄塔踊り場の間に挟まれたものである。災害発生当日の工事は、a〜d4本の鉄塔の間に架空地線を敷設するもので元請X社、1次下請Y社、2次下請Z社で作業を行った。
午前7時から全体朝礼、架線班打合わせ等を行った後作業を開始したが、鉄塔上の作業者から電話に雑音が入るとの連絡があったほかは異常なく午前中の作業を終えた。
昼食後、作業を再開し、作業者が地上約114mのa鉄塔上の作業現場に移動するため、工事用昇降機(積載荷重:240Kg)に2次下請Z社の作業者A、Bおよび運転者Cの3名が搭乗し上昇運転を開始したが、作業者Aは搬器上部の扉を開けて上半身を乗り出して電話線の点検を始めた。
昇降機の搬器が地上から2番目の鉄塔踊場(高さ 80m)を過ぎた付近で、Bが自分の身体にAの血が落ちてくるのに気づき、直ちに昇降機の運転を止めて調べると、Aが昇降機の搬器上部扉から上半身を乗り出した状態でぐったりとしていた。Aは病院に搬送されたが、頭部外傷出血、頚椎損傷により死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 作業者が指示を受けていないにもかかわらず、電話線の点検を行ったこと
午前中に鉄塔上の作業者から電話に雑音が入るとの連絡があり、午後の作業開始時に作業班長から架線作業を優先するよう指示があったが、被災者は電話が不調であると、地上と鉄塔上の連絡が困難であると自ら判断し、指示を受けていないにもかかわらず、工事用昇降機の上昇中に、搬器の上部扉から乗り出して電話線の点検を行った。
なお、被災者は鉄塔の踊場と工事用昇降機搬器との隙間が小さくて、はさまれる危険があるとの認識は全くなかった。
2 昇降中にエレベーターから乗り出すことを禁止する明確な指示がなされておらず、また、昇降機上部の扉にインターロック等の安全装置が取付けられていなかったこと
3 電話が故障すると、作業の安全にも大きく影響するので、他の作業に優先して補修する必要があったにもかかわらず、架空地線敷設作業を優先するように指示したこと
4 作業途中で電話が故障した場合等の点検の作業手順が明確でなかったこと
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 鉄塔上作業の連絡方法を確保すること
電線の敷設作業は、高い個所での作業であり、地上との連携が作業の円滑かつ安全な遂行のために不可欠である。したがって、電話に異常があったときには直ちに異常個所を点検し、修理等の措置を講ずることが必要である。
2 連絡設備の点検整備要領を定めること
電話の不調のような異常が発生した場合の対処要領、例えば電話線の点検要領などをあらかじめ定めておき、関係者に周知しておくことが重要である。
3 昇降機に安全装置を装備すること
工事用昇降機には、上部扉、出入口が完全に閉じていなければ昇降させることができない安全装置を装備する必要である。
また、上部扉は常に施錠しておき、上部扉を開けて使用する場合の作業要領を定め昇降機の見やすい個所にそのことを表示しておくことが必要である。
なお、昇降機等の導入に際しては、その安全性についてあらかじめ十分な検討と必要な対策を講じておくことが重要である。