アンケートにご協力お願いします。

トリクロロエチレンを用いる洗浄装置内での有機溶剤中毒

  労働災害事例イラスト イラストをクリックすると拡大表示されます
発生状況 災害が発生した事業場では、機械部品の製造を行っており、災害は、円筒形の金属部品(80mmφ×340mm)の仕上工程における洗浄装置内で発生した。
 この洗浄装置は、浸漬槽等の4つの槽からなり、各槽の上部に逆流凝縮器を有し、洗浄装置両端の天井に設けられたパレット出入口(300mm×1400mm、常時開口)及び点検口(400mm×500mm、通常閉鎖)以外は密閉されている。さらに、装置全体を密閉する形でおおい(以下「ブース部」という)が設けられていた。ブース部の壁面には、排気ダクトが設けられ、トリクロロエチレン回収装置に接続されている。また、ブース部には、蓋開閉が自動操作となっているパレット出入口2箇所と、出入用のドア3カ所が設置されている。
 金属部品は、洗浄装置の中で、まず、約50℃に加熱したトリクロロエチレン液の槽に浸漬(超音波併用)され、次に、加熱したトリクロロエチレン液のシャワーの中でブラシがけされ、続けて、常温のトリクロロエチレン液、加熱し蒸気となったトリクロロエチレンの順で洗浄される。部品は、1パレットに16個載せ、装置内の水平方向の移動はチェーンコンベヤー、垂直方向の移動はリフターで行われるようになっている(図1)。
 この洗浄装置では、24時間当たり200lのトリクロロエチレンが消費されているが、この消費量は、洗浄装置から蒸発してブース部に漏れている量と考えられる。
 ブース部におけるトリクロロエチレンの濃度は、この消費量及びブース部に設けられている排気ダクトの排気量1800m3/minからみて、相当の高濃度となることが予想されていた。
 洗浄装置は、災害発生時点で、設置後3年弱経過していたが設置当初より、チェーンコンベヤー、リフター等に故障が多く、ブース部、洗浄装置に修理のため作業者が入ることが多かった。
 災害発生当日、ブラシ槽に設けられた第4リフターに故障が生じた。
 このような場合、通常は機械の修理調整を行う修理工Aが修理作業を行うこととなっていたが、Aは洗浄装置から離れたところにあるコントロール室にいたため、その場に不在であったことから、運転員Cは、Aを呼びに、その場を離れた。その後、残された運転員BはAとCが戻って来るのを待ちきれずに、有機ガス用防毒マスクを使用し、洗浄装置に入った。
 10分後に、A及びCは現場に到着し、送気マスクを使用し、ブース内に入り、リフター出入口から、洗浄装置内を見たところ、Bが浸漬槽内で足をトリクロロエチレン液につけ、揺動架台にもたれるように倒れているところを発見した(図2)。Bは、すぐに救出されたが、有機溶剤中毒及び足部の皮膚炎症により3週間程度休業した。
 事業場に選任されていた有機溶剤作業主任者は、事業場で行われている洗浄作業を含む有機溶剤業務全般について、作業者に対する指揮を行っており、その中でブース部における作業に関しては、有機ガス用防毒マスクを使用すること、洗浄装置内における作業においては、送気マスクを使用することを指示していたが、そのことについて、修理工Aは承知していたものの、通常洗浄装置内に入らない運転員には十分知らされていなかった。
 また、洗浄装置が設置されている作業場のトリクロロエチレンの作業環境測定は実施されているが、その結果は第1管理区分であった。また、有機溶剤特殊健康診断は全員に対し実施されており異常者はいなかった。
 なお、災害発生後、トリクロロエチレンを加熱し、洗浄装置内のコンベヤー、リフター等を停止した状態で、ブース部洗浄装置内のトリクロロエチレン濃度を測定したところ、ブース内で120〜1000ppm、洗浄装置内(逆流凝縮器の下側)で62,000ppmであった。
原因 (1) 運転員Bが有機ガス用防毒マスクを使用しただけで、トリクロロエチレンの濃度が非常に高い洗浄装置内に入ったこと。
(2) 洗浄装置内で作業を行うときは、送気マスクを使用するという使用基準が、運転員に十分周知されていなかったこと。
(3) 運転員Cが修理工Aを探すために、洗浄装置から離れた時にBが洗浄装置内に入ったため、結果的に、1人作業を行うこととなったこと。
対策 (1) 洗浄装置に入る時は、作業者に送気マスクを使用させること。また、ブース部の作業においても、作業者に送気マスクを使用させることが望ましいこと。
(2) 洗浄装置の故障等のために、ブース部、洗浄装置内に立ち入る作業が少なくなるように搬送設備の改良等の整備を図ること。
(3) ダクト部、洗浄装置内における作業に関して、(2)の事項も含めた作業標準を定め、作業者に遵守させること。
(4) ダクト部、洗浄装置内における作業に従事する者に対して、有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育を実施するとともに、(3)に定めた作業標準等に関する教育を実施すること。
(5) ダクト部、洗浄装置内において作業を行う場合には、可能な限り、単独作業は行わないこと。また、監視人を置くこと等により、異常を早期に把握するために必要な措置を講じることが望ましいこと。
業種 機械(精密機械を除く)器具製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)
NO.823
このページのトップへ戻ります
アンケートにご協力お願いします。