天井クレーンより墜落し死亡
業種 | 非鉄金属精練・圧延業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.516
発生状況
本事故は、天井クレーンのガーダー上での清掃作業中、天井クレーンの横行装置上に移動しようとした際、横行装置が動きだし、約20m下の床に墜落し、即死したものである。事故の発生した事業場は製錬工場で、天井クレーンの年1回の定期整備を行うため、天井クレーンに付けられている防熱板の清掃および天井クレーンの抵抗器の碍子の清掃を、それぞれ第1班(5名)および第2班(3名)が同時に行うことになっていた。
災害発生当日、抵抗器の碍子の清掃を行う第2班は、作業者AとBが、天井クレーンのガーダーの上に立ち、天井クレーンのガーダー上に設置されている抵抗器の碍子を、ワイヤーブラシを用いて清掃していた。
第2班の作業と同時に第1班も、天井のクレーンの横行装置が走行する部分に設置されている防熱板を清掃していたが、現在横行装置が停止している部分以外の清掃は終了したため、横行装置を動かし、横行装置が停止していた残りの部分の清掃を行うことになった。
このため、第1班の天井クレーンの運転手より、「横行装置を動かしてもよいか」との連絡が、AおよびBとは離れた場所で、たまたま別の作業を行っていた第1班の作業者Cに入った。
このため、Cは、AおよびBに対し、横行装置を動かすので待機するよう連絡した。
Cは、AおよびBがガーダーそばの足場に待機したのを見て、天井クレーンの運転手に「準備よし」の合図を送り、その場を離れた。
Aは、ガーダーそばの足場に待機していたが、横行装置がなかなか動かず、Cの姿も見えなかったので、横行装置の移動は、当分行われないものと判断し、横行装置に移動しようと、ガーダーそばの足場から出て、横行装置に足をかけた。
その際、横行装置が動きだし、Aは、バランスを崩し約20m下の床に墜落した。
なお、AおよびBは、入社してから2カ月目で、安全衛生教育は何も受けておらず、また「待機解除」等の具体的な連絡合図方法、天井クレーンのガーダーの上で作業を行う場合の安全上の留意については、何も指示されていなかった。
原因
[1] 天井クレーンのガーダー上での作業中に天井クレーンの運転を行ったこと。[2] 天井クレーンのガーダー上での作業中に天井クレーンの運転を行うにもかかわらず、作業指揮者を設置し作業の指揮をさせていなかったこと。また作業者と天井クレーンを運転する者との具体的な連絡合図の方法も定められていなかったこと。
[3] 作業者と天井クレーンを運転する者との連絡合図が十分に行われる体制になかったために、作業者が独自の判断に基づき行動したこと。
[4] 雇入れ時の安全衛生教育等が実施されていなかったため、天井クレーンのガーダーの上で作業を行う場合の安全上の知識が乏しかったこと。
対策
[1] 天井クレーンのガーダー上での作業中は、天井クレーンの運転を禁止し、その旨の表示を行うこと。[2] 天井クレーンのガーダー上等での作業中に天井クレーンを運転しなければならない場合には、作業指揮者を置き、ガーダー上等で作業を行う者と天井クレーンを運転する者との連絡合図の方法を定め、両者間の十分な連絡合図の下に、天井クレーンの運転を行うこと。
[3] 安全衛生教育の実施を徹底すること。