8階建病院の窓ガラス清掃中に墜落
業種 | ビルメンテナンス業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の用具 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置がない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置の調整を誤る |
No.100672
発生状況
この災害は、8階建病院の窓の清掃中に発生したものである。災害発生当日、被災者は、病院の窓清掃のため午後1時に職長と病院で合流したのち病院のビル管理会社の責任者とともに屋上に行き、責任者は屋上に出る鍵を開けて自分の詰所に戻った。
職長と被災者は作業に取り掛かり、まず職長が当日に清掃を行う箇所の2つのリング(間隔6m)に親綱を横方向に結び、その間に被災者はバケツに水を入れブランコ(作業用の椅子)を身体につけた。
それから職長は、ブランコの下降用ロープを親綱に取り付け、一度ロープを引っ張って見たうえで被災者に「見ておいてくれ」といったが、被災者は「大丈夫でしょう」と言ってロープの取り付け状況を確認しないで脚立に登り脚立の上から屋上のパラペットを乗り越えて外壁に張り付いた。
それを見た職長は、ガラス清掃に使用するスクイジー、モコモコと言っている掃除道具をパラペット越しに手渡そうとしたところ、ブランコのロープが親綱から外れて被災者はブランコと共に29m下の1階事務所の屋上まで墜落した。
直ちに、被災者は病院で手当を受けたが、全身打撲のため約1時間後に死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 墜落防止用のロープを使用していなかったこと いわゆるブランコを使用してビル等の窓ガラスの清掃を行うときには、ブランコ下降用のロープの他にこのロープが切断しても作業者が墜落しないよう安全帯を取り付けるためのロープを併置する必要があるのに、それを設置していなかった。 |
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2 | 吊り下げロープの親綱への固定方法が誤っていたこと ブランコ下降用のロープの固定方法は、ロープの端を二重にして2回親綱に巻きつけ、二重にしたロープの輪にシャックルを通して固定する必要があったのに、その方法で実施していなかった。 |
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3 | ロープの固定を熟練した者が行わなかったこと ブランコ下降用のロープを親綱に取り付けた職長はこの現場は初めてであり、しかもブランコのロープを親綱に結ぶのは約1年ぶりであった。 |
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4 | 安全教育を実施していなかったこと ブランコのロープを結ぶ方法については、作業員の入社時に上司が教えていたが、マニュアルを作成して訓練するようなことは実施していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 適切な作業計画を作成すること ビルの窓ガラスの清掃作業を行う場合には、まず作業を行う建物の高さ、形状、清掃のための設備(ゴンドラ、ワイヤー取り付けロープ等)の設置状況等を調査し、適切な作業計画を作成する。 |
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2 | 墜落防止用のライフラインを設置すること 安全帯を取り付けるためのライフライン(安全帯取り付け用のロープ)の設置を必ず行う。また、ライフラインは、ブランコとは別のロープで別の箇所に固定させた十分な強度と長さを有するものとする。 |
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3 | 安全な作業のためのマニュアルを作成し教育訓練を実施すること 高い建物の窓ガラスの清掃等を行う場合には、ゴンドラの使用、ブランコの使用など基本的な作業用機器材に対応した安全な作業のためのマニュアルを作成し、作業者に対して繰り返し教育訓練を実施する。 |
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4 | 安全管理を実施すること 建物の窓ガラスの清掃等は、墜落危険の高い作業であるので墜落危険とその防止措置について十分な安全管理を実施する。 また、経営トップが定期および随時に作業現場を巡視し、作業マニュアルの遵守状況あるいはマニュアルの適否の確認、作業用機器材の安全性と作業性等について確認するとともに、必要な改善を行う。 |