1.応募について
応募数は、昨年度の応募数320件とほぼ同じ程度の307件であった。昨年度に引き続き、安全衛生を高めるための活動は、自社だけでなく広く参考にしてもらいたいという気持ちの表れとして、企業・事業場の新しいアイデアによる活動や相当な試行錯誤の結果として取り組まれている活動が多数収集できたことは、大変高く評価できるものである。
また、応募された企業等が建設業、製造業や大企業に偏る傾向については例年と変わらなかった。このため、陸上貨物運送事業、第三次産業等の業種や中小企業に対し、建設業、製造業や大企業の優良な活動例を広く周知して頂くことにより、可能な事例から取り組んでもらうなど、活動の活性化を図る必要がある。
2.類型化について
昨年度類型化した7つの見える化の類型に分けて作品を募集した。
応募された活動を見ると、7つの類型は、「見える」安全活動に対する理解とその取組の活性化に一定の寄与はしているものの、類型への当てはめにバラツキがあったり、類型を念頭に新たな活動を実施しようという動きにまでは結びついていないなど、類型化が十分に機能していない面もあるが、類型化については、未だ緒に就いたばかりであることを考えると、引き続きこのような類型とその内容、類型ごとの活動例の周知に努める必要がある。
3.優良な活動について
上記の類型化についての方針を前提に、7つの類型化ごとに、活動のねらいがより明確化されている、さらに一歩工夫している、簡易な取組であるが効果的である等と思われる点で優良であると評価できる活動を選考した。
なお、上記1の後段の観点から、建設業、製造業や大企業以外の業種、企業規模の活動例について、特に明記した。
4.「見える」安全活動に取り組むに当たっての留意点について
(1)安全衛生対策の的確な実施について
安全衛生対策としては、安全衛生管理体制を確立し、機械設備に対する安全措置、作業の安全化、安全衛生教育等を的確に実施することが必要である。「見える」安全活動は、これらの安全衛生対策の実施に当たって、より効果的な対策となるような取組手法の一つであって、もととなる対策を的確に実施することなく、取組手法たる「見える」安全活動だけを好事例をまねて実施したとしても、十分な安全衛生対策とはならないことに留意する必要がある。
(2)見やすさに対する工夫について
見える安全活動の中には、小さい文字を使用した掲示物を利用している事例が少なからずあるが、高年齢労働者が増加している現状を踏まえ、可能な限り文字の大型化や写真・図絵を活用すること等により、「見える化」を目的として作成された資料等を実質的に見えやすくする工夫も重要である。
5.第12次労働災害防止計画との関係
平成25年度から第12次労働災害防止計画(以下「12次防」という。)が始まる。計画では、そのねらい(1 計画のねらい (1)計画が目指す社会)において、「誰もが安心して健康に働くことができる社会を実現するためには、国や労働災害防止団体だけでなく、労働者を雇用する事業者、作業を行う労働者、仕事を発注する発注者、仕事によって生み出される製品やサービスを利用する消費者など、全ての関係者が、働くことで命を脅かされたり、健康が損なわれたりするようなことは、本来あってはならないという意識を共有し、・・・それぞれが責任ある行動を取るような社会にしていかなければならない。」としているが、「見える」安全活動は、安全に対する「意識の共有」や「責任ある行動」に寄与するものであり、この点からも、更なる周知、普及を図る必要がある。
具体的な「見える」安全活動の取組については、12次防の関係事項(4 重点施策ごとの具体的取組 (3)社会、企業、労働者の安全・健康に対する意思変革の促進 ④労働災害防止に向けた国民全体の安全・健康意識の高揚、危険感受性の向上)を踏まえ、「労働者本人の無意識による不安全な行動を誘発するリスクや労働災害事例について、職長も含めた現場の労働者に情報提供を推進することにより、労働者1人1人の安全に対する意識や危険感受性を高め、労働災害防止に結びつける」ものとして、「働く場での安全や健康を確保するためのルールを守ることについて、地域、職域、学校が連携して取り組む」ことに配慮する必要がある。