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安全データシート
りん酸トリ(オルト‐トリル)
作成日2003年5月6日
改定日2006年10月15日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: りん酸トリ(オルト‐トリル)
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03-1234-5678
緊急時の電話番号: 03-1234-5678
FAX番号: 03-1234-5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 可塑剤、難燃剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 区分外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 区分外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 区分外
水反応可燃性化学品 区分外
酸化性液体 区分外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 区分外
人健康有害性 急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮) 区分外
急性毒性(吸入:気体) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 分類できない
皮膚腐食性・刺激性 区分外
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 分類できない
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 分類できない
生殖細胞変異原性 分類できない
発がん性 区分外
生殖毒性 分類できない
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分1(神経系)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分1(神経系)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境有害性 水生環境急性有害性 分類できない
水生環境慢性有害性 分類できない
GHSラベル要素
絵表示又はシンボル: 健康有害性
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 神経系の障害
長期又は反復ばく露による神経系の障害
注意書き: 【安全対策】
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
【応急措置】
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
【保管】
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物、容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報:

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: りん酸トリ(オルト‐トリル)(o-Tolyl phosphate)
別名: トリ‐o‐クレジルりん酸 (Tri-o-cresyl phosphate)
(Phosphoric acid tris(2-methylphenyl) ester)
TOCP
化学式: C21H21O4P
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 78-30-8
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(3) -2613、(3) -2522〔総称名〕
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲: 情報なし

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
皮膚刺激が生じた場合、医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
飲み込んだ場合: 口をすすぐこと。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入 :頭痛、吐き気、嘔吐、筋肉の痛み。症状は遅れて現れることがある。ばく露の程度により定期的な検診を受けることがのぞましい。
皮膚 : この物質は皮膚を経由しても体内に吸収される。
この中毒症状は1−3週間後はじめて筋肉麻痺として現れる。
1−3週間後、筋肉痛、両足、両腕及び両手にかゆみ感、続いて筋肉麻痺。
最も重要な兆候及び症状:

5.火災時の措置
消火剤: 小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水
大火災:散水、噴霧水、通常の泡消火剤
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
大火災の場合、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合には、その場所から避難し、燃焼させておく。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
風上に留まる。
低地から離れる。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
環境中に放出してはならない。
回収、中和: 少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
容器内に水を入れてはいけない。
プラスチックシートで覆いをし、散乱を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行う。
安全取扱い注意事項: 火気注意。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 酸化剤から離して保管する。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 設定されていない。
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2006年版) 設定されていない。
ACGIH(2006年版) TLV-TWA 0.1 mg/m3 Skin:A4
設備対策: この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
高熱工程でミスト、ガスが発生するときは、空気汚染物質を許容濃度以下に保つために換気装置を設置する。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
防毒マスクには有機ガス用吸収缶を使用する。
手の保護具: 適切な手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な保護眼鏡を着用すること。
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣を着用すること。
衛生対策: 取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色あるいは淡黄色の液体 1)
臭い: データなし
pH: データなし
融点・凝固点: 11℃(融点) 1)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 410℃ (分解) 1)
引火点: 225℃ 1)
爆発範囲: データなし
蒸気圧: 2.2mbar[220 Pa] (25℃) 2)
蒸気密度(空気 = 1): 12.7 1)
比重(密度): 1.1955 (20℃/4℃) 3)
溶解度: 不溶 1)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 5.11 (tricresylphosphateとして) 4)
自然発火温度: 385℃ 1)
分解温度: 410℃ 1)
臭いのしきい(閾)値 データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  該当しない
粘度: 動粘性率:35.11mm2 /s (38℃; tricresyl phosphate として) 5)

10.安定性及び反応性
安定性: 通常の条件下では安定。
高温の表面、火花又は裸火により発火。
危険有害反応可能性: 酸化剤と反応する。
避けるべき条件: 高温の表面、火花又は裸火により発火。
混触危険物質: 酸化剤。
危険有害な分解生成物: 一酸化炭素、二酸化炭素、リン酸化物又はホスフィン。

11.有害性情報
急性毒性: 経口:ラットLD50 値:3000-10000mg/kg 6) , 7) に基づき、区分外とした。
経皮:ウサギLD50 値:>3700mg/kg 8) 及び最小致死量は3160−5160mg/kgの範囲内にある 9) との記述に基づき、区分外とした。
吸入(蒸気):データなし
吸入(ミスト):データなし
皮膚腐食性・刺激性: 皮膚刺激性ではないとの記述 7) から、区分外とした。
眼に対する重篤な損傷・刺激性: データなし
呼吸器感作性又は皮膚感作性: いずれも情報がなく分類できない。
生殖細胞変異原性: 体細胞を用いる in vivo 遺伝毒性試験であるラット(肝臓、腎臓、肺、心臓)の体細胞DNAとの付加体形成試験において陽性の結果 8) があるが、in vitro 変異原性試験で陽性の結果がないことから、分類できないとした。
発がん性: ACGIHでA4 6) に分類されていることから、区分外とした。
生殖毒性: データ不足のため分類できない
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ヒト経口摂取例において神経系への影響が報告されているとの記述 6) , 7) から、区分1(神経系)とした。
神経系の障害
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
職業ばく露例において神経系への影響が認められているとの記述 6) , 7) から、区分1(神経系)とした。また、ラットを用いた経口投与試験では神経系への影響が区分2のガイダンス値範囲の投与量で認められている 8)
長期又は反復ばく露による神経系の障害
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性 データ不足のため分類できない
水生環境慢性有害性 データ不足のため分類できない

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。
スプレー缶を廃棄する場合は、自治体により廃棄方法が異なるので該当する自治体の規定に従うこと。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 IMOの規定に従う。
UN No.: 2574
Proper Shipping Name: TRICRESYL PHOSPHATE
Class: 6.1
Packing Group: II
Marine Pollutant: PP
航空規制情報 ICAO/IATAの規定に従う。
UN No.: 2574
Proper Shipping Name: Tricresyl phosphate
Class: 6.1
Packing Group: II
国内規制
陸上規制情報 消防法の規定に従う。
海上規制情報 船舶安全法の規定に従う。
国連番号: 2574
品名: リン酸トリトリル
クラス: 6.1
容器等級: II
海洋汚染物質: PP
航空規制情報 航空法の規定に従う。
国連番号: 2574
品名: リン酸トリトリル
クラス: 6.1
等級: II
特別の安全対策 危険物は当該危険物が転落し、又は危険物を収納した運搬容器が落下し、転倒もしくは破損しないように積載すること。
危険物又は危険物を収納した容器が著しく摩擦又は動揺を起こさないように運搬すること。
危険物の運搬中危険物が著しく漏れる等災害が発生するおそれがある場合には、災害を防止するための応急措置を講ずると共に、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
消防法: 第4類引火性液体、第四石油類
(法第2条第7項危険物別表第1)
船舶安全法: 毒物類・毒物
(危規則第2,3条危険物告示別表第1)
航空法 : 毒物類・毒物
(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
1) ICSC (J) (1994)
2) ホンメル (1991) Card No.906
3) HODOC (2nd, 1989)
4) HSDB (Access on Feb 2006)
5) Ullmanns (E) (5th, 1995) A15
6) ACGIH 7th (2001)
7) PATTY 4th (1994)
8) RTECS (2006)
9) HSDB (2006)
10) ACGIH (2006)
11) ICSC (2006)
災害事例
(1) アメリカでTCP混入ジャマイカジンジャー飲用による集団中毒が発生した。
(2) モロッコでTCP混入食用油による中毒が発生した。
(3) 日本でTCP混入食用油による一家族集団中毒が発生した。
(4) TCP製造現場における多発性神経炎が発生した。