製品安全データシート
メチルメルカプタン
作成日2002年12月5日
改定日2006年9月11日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: メチルメルカプタン
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03−1234−5678
緊急連絡電話番号: 03−1234−5678
FAX番号: 03−1234−5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: メチオニンの原料、医薬品、殺虫剤、プラスチック、メチルチオエーテル触媒活性調整剤、ガス付臭剤、有機合成中間体、反応促進剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 区分1
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 区分外
高圧ガス 低圧液化ガス
引火性液体 分類対象外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 分類対象外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 分類対象外
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
人健康有害性 急性毒性(経口) 分類対象外
急性毒性(経皮) 分類対象外
急性毒性(吸入:ガス) 区分3
急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 分類対象外
皮膚腐食性・刺激性 分類できない
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分2A-2B
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 分類できない
生殖細胞変異原性 分類できない
発がん性 分類できない
生殖毒性 分類できない
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分1(肺)、区分3(麻酔作用)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
分類できない
吸引性呼吸器有害性 分類対象外
環境有害性 水生環境急性有害性 分類できない
水生環境慢性有害性 分類できない
ラベル要素
絵表示又はシンボル: 炎 ガスボンベ どくろ 健康有害性
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 極めて可燃性・引火性の高いガス
加圧ガス:熱すると爆発するおそれ
吸入すると有毒(気体)
強い眼刺激
吸入ばく露による肺の障害
眠気及びめまいのおそれ
注意書き: 【安全対策】
熱、火花、裸火のような着火源から遠ざけること。−禁煙。
適切な耐熱手袋、保護面、保護眼鏡を着用すること。
ガスを吸入しないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
【応急措置】
漏洩ガス火災の場合、漏洩が安全に停止されない限り消火しないこと。
漏洩ガス火災の場合、安全に対処できるならば着火源を除去すること。
吸入した場合、被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
吸入した場合、医師に連絡すること。
取り扱い後はよく手を洗うこと。
眼に入った場合、水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼に入った場合、眼の刺激が持続する場合は医師の診断、手当てを受けること。
ばく露した場合、医師に連絡すること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
【保管】
容器を密閉して,日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。
国・地域情報

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: メチルメルカプタン(Methyl mercaptan)
別名: メタンチオール(Methanethiol)
化学式: CH3SH
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 74-93-1
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(2)-457(2)-464
分類に寄与する不純物及び安定化添加物:
濃度又は濃度範囲

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
気分が悪い時は、医師に連絡すること。
凍傷の場合、多量の水で洗い流し、衣服は脱がせない。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
医師に連絡すること。
飲み込んだ場合: 医師に連絡すること。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:咳、頭痛、吐き気、息切れ、咽頭痛、意識喪失、肺水腫、呼吸機能低下、昏睡、メトヘモグロビン血症。
皮膚:発赤、痛み、液体に触れた場合は凍傷。経皮吸収性がある。
眼:痛み、発赤、眼のかすみ
症状は遅くなって現れることがある。
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項: 安静と症状の医学的な経過観察が必要である。

5.火災時の措置
消火剤: 小火災:二酸化炭素、粉末消火剤、泡消火剤、
大火災:散水、噴霧水、泡消火剤
使ってはならない消火剤: 情報なし
特有の危険有害性: 容易に発火するおそれがある。
加熱により容器が爆発するおそれがある。
破裂したボンベが飛翔するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 漏洩が安全に停止されない限り消火しないこと。
安全に対処できるならば着火源を除去すること。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
ガスの滞留しない場所で風上より消火し、漏洩防止処置を施す。
漏洩部や安全装置に直接水をかけてはいけない。凍るおそれがある。
粉末消火剤を用いて初期消火に努める。この際防毒マスク等を使用する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
損傷したボンベは専門家だけが取り扱う。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
容器が火炎に包まれた場合には、爆発の危険があるので近寄らない。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣の上に適切な防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を着用する。
風上に留まる。
低地から離れる。
密閉された場所に立入る前に換気する。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 供給源を遮断する;それが不可能でかつ周辺に危険が及ばなければ、燃え尽きるにまかせる。
その他の場合は粉末消火薬剤、二酸化炭素を用いて消火する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
可能ならば、漏洩している容器を回転させ、液体でなく気体が放出するようにする。
蒸発を抑え、蒸気の拡散を防ぐため散水を行う。
漏出物を取扱うとき用いる全ての設備は接地する。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
水を漏洩物に接触させない。
ガスが拡散するまでその場所を隔離する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項: 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
内容物を故意に吸い込まないこと。
目や口に入ると刺激を受けることがあり、使用の際には十分気を付けること。
容器は丁寧に取り扱い、衝撃を与えたり、転倒させない。
容器の取り付け、取り外しの作業の際は、漏洩させないよう、十分注意する。
漏洩すると、発火、爆発する危険性がある。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取り扱い後は手を洗う。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 専用の高圧ガス容器に保管する。
容器は保安上使用開始後1年以内に、速やかに販売事業者に返却すること(高圧ガス保安協会指針)。
保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。−禁煙。
強酸化剤、酸から離して保管する。
換気の良い場所で保管すること。
容器は直射日光や火気を避け、40℃以下の温度で保管すること。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 高圧ガス保安法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 未設定
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 未設定
ACGIH (2005年版) TLV-TWA 0.5ppm
設備対策: 防爆仕様の局所排気装置を設置する。
気中濃度を推奨された許容濃度以下に保つために、工程の密閉化、局所排気、その他の設備対策を使用する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具: 保温用手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具: 適切な顔面用の保護具を着用すること。
衛生対策: 取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色気体 1)
臭い: 特異臭 1)
pH: データなし
融点・凝固点: -123℃(融点)1)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 5.9℃(沸点) 4)   6℃(沸点) 1)
引火点: -17.78℃ (開放式) 12)   -18℃ 6)
爆発範囲: 3.8-21.8 voL% 2)   3.9-21.8vol% 1)
蒸気圧: 202 kPa(26.1℃) 1)  105000Pa(21℃) 2)
蒸気密度(空気 = 1): 1.66 1) , 2)  1.7 3)
比重(密度): 0.9 1) (20℃/4℃)(比重) 5)  0.9600 (25℃/4℃)(比重) 12)
溶解度: 15.4g/L(水・25℃) (実測値) 4)  2.3 g/100 mL(水・20℃) 1)  アルコールエーテル 石油ナフサに可溶。 12)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 0.78 (推算値) 4)  log Kow = 0.65 12)
自然発火温度: データなし
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値 0.0016ppm 20)
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  可燃性
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 加熱又は燃焼すると分解して、引火性の有毒なガスを生成する。
危険有害反応可能性: 強酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
酸と反応し、引火性の硫化水素ガスを生成する。
  水蒸気、あるいは酸と反応し、引火性で有毒な気体を生成する。
避けるべき条件: 混触危険物質との接触。
混触危険物質: 強酸化剤、強酸。
危険有害な分解生成物: 燃焼により、一酸化炭素、二酸化炭素、イオウ酸化物などを発生する。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 GHSの定義によるガスである。
経皮 GHSの定義によるガスである。
吸入(ガス) ラットLC50 (4時間)値:675ppm 8) , 9) , 10) , 11) 及びLC50 (1時間)値:1680ppm(4時間換算値 840ppm) 8) , 10) に基づき、区分3とした。
吸入すると有毒(ガス)
吸入(蒸気) GHSの定義によるガスである。
吸入(ミスト) GHSの定義によるガスである。
皮膚腐食性・刺激性: データ不足のため分類できない
眼に対する重篤な損傷・刺激性: 気体であることから眼に直接適用したデータはないが、ヒトへの影響として眼刺激性が認められる 9) との記述から、区分2A-2Bとした。
強い眼刺激
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:データなし
皮膚感作性:データなし
生殖細胞変異原性: 体細胞を用いる in vivo 変異原性試験であるマウス赤血球を用いた小核試験の結果について、monoweakly positiveと記載されている 9) ものと、陰性であると判断している 8) ことから、専門家の判断を要する。
発がん性: データがなく分類できない。
生殖毒性 データなし
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ラットを用いた吸入ばく露試験において、正向反射の消失、運動失調などの麻酔作用を示唆する中枢神経系への影響及び肺の病理変化が区分1のガイダンス値範囲のばく露濃度(1500ppm、30分)で認められた 8) , 9) , 10) , 11) との記述、ヒトでのばく露例が肺水腫により死亡した8) との記述から、区分1(肺)及び区分3(麻酔作用)とした。
吸入ばく露による肺の障害
眠気及びめまいのおそれ
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
データなし
吸引性呼吸器有害性: GHSの定義によるガスである。

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: データ不足のため分類できない
水生環境慢性有害性: データ不足のため分類できない

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上、処理を委託する。
酸化法 水酸化ナトリウム水溶液中へ徐々に吹き込んで処理した後、酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉など)の水溶液を加えて酸化分解する。これに硫酸を加えて中和した後、多量の水を用いて希釈し、処理する。(臭気が強いので、吹き込み速度は十分に押さえて行う。)
燃焼法 アフタバーナ及びスクラバ付き焼却炉の火室へ噴霧して、焼却する。
汚染容器及び包装: 空容器を廃棄する時は、内容物を完全に除去した後に処分する。
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 IMOの規定に従う。
UN No.: 1064
Proper Shipping Name: METHYL MERCAPTAN
Class: 2.3
Sub Risk: 2.1
航空規制情報 ICAO/IATAの規定に従う。
UN No.: 1064
Proper Shipping Name: Methyl mercaptan
Class: 2.3
Sub Risk: 2.1
国内規制
陸上規制情報 高圧ガス保安法、毒劇法の規定に従う。
海上規制情報 船舶安全法の規定に従う。
国連番号: 1064
品名: メチルメルカプタン
クラス: 2.3
副次危険: 2.1
航空規制情報 航空法の規定に従う。
国連番号: 1064
品名: メチルメルカプタン
クラス: 2.3
副次危険: 2.1
輸送に際しては、移動、転倒、衝撃、摩擦などを生じないように固定する。
火気、熱気、直射日光に触れさせない。
鋼材部分と直接接触しないようにする。
重量物を上乗せしない。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第596号)
危険物・可燃性のガス
(施行令別表第1第5号)
毒物及び劇物取締法 毒物
(法第2条別表第1)
高圧ガス保安法 液化ガス
(法第2条3)
可燃性ガス、毒性ガス
(一般高圧ガス保安規則第2条1,2)
船舶安全法 高圧ガス
(危規則第2,3条危険物告示別表第1)
航空法 高圧ガス
(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
1) ICSC (J) (2003)
2) ホンメル (1991)
3) NFPA (12th, 1997)
4) SRC (Access on Feb 2006)
5) Merck (13th, 2001)
6) Sax (8th, 1992)
7) RTECS (2004)
8) DFGOT vol.20 (2003)
9) ACGIH 7th (2001)
10) PATTY 4th (1994)
11) ATSDR (1992)
12) HSDB (Access on Dec 2005)
13) M (13th, 2003)
14) HSFS (2005)
15) 化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 1992
16) GHS分類結果(住化・NITE)
17) 日化協「緊急時応急措置指針、容器イエローカード(ラベル方式)」
18) 日化協「化学物質法規制検索システム」(CD-ROM) (2005)
19) 日本ケミカルデータベース(株)「化学品総合データベース」(2005)
20) Amoore,J.E. and Haulata,E. Jouranal of Applied Toxicology, 3(6) 272 (1983)
災害事例
(1) 排液回収のための排水受けタンク内で作業中の作業員が底部に滞留していたメチルメルカプタンと硫化水素により中毒し、これを救助しようとした者も中毒した。
(2) メチオニン製造工程に設置されている減圧蒸留用真空ポンプが故障したため、その分解、整備作業を行っていたところ、構内下請作業員が真空ポンプ内のオイルに混入されていたメチルメルカプタンを吸入し、被災した。