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安全データシート
3,3’−ジクロロベンジジン
作成日2003年12月06日
改定日2006年03月14日
改定日2006年03月27日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: 3,3’−ジクロロベンジジン
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03-1234-5678
緊急連絡電話番号: 03-1234-5678
FAX番号: 03-1234-5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 有機黄色顔料(ベンジジンエローG・GR、バルカン、ファストエローG,パーネントエローHR等)の中間物

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 分類対象外
可燃性固体 分類できない
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 分類対象外
自然発火性固体 区分外
自己発熱性化学品 分類できない
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
健康に対する有害性 急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮) 区分外
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん、
ミスト)
分類できない
皮膚腐食性・刺激性 分類できない
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分外
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 分類できない
生殖細胞変異原性 区分2
発がん性 区分2
生殖毒性 分類できない。 
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分3(気道刺激性)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
分類できない。 
吸引性呼吸器有害性 分類できない。 
環境に対する有害性 水生環境急性有害性 区分1
水生環境慢性有害性 区分1
ラベル要素
絵表示又はシンボル: 健康有害性 感嘆符 環境
注意喚起語: 警告
危険有害性情報: 遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれの疑い
呼吸器への刺激のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き: 【安全対策】
すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
個人用保護具や換気装置を使用し、ばく露を避けること。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
粉じんを吸入しないこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
ばく露又はその懸念がある場合:医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
漏出物は回収すること。
【保管】
容器を密閉して換気の良いところで施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国/地域情報

3.組成、成分情報
物質
化学名又は一般名: 3,3’−ジクロロベンジジン(3,3'-Dichlorobenzidine)
別名: 4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロビフェニル(4,4'-Diamino-3,3'-dichlorobiphenyl)
3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3'-Dichloro-4,4'-diaminobiphenyl)
化学式: C12H10Cl2N2
化学特性
(化学式又は構造式):
化学式又は構造式
CAS番号: 91-94-1
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(4)-800
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲: 98%以上

4.応急措置
吸入した場合: 新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は医師を呼ぶこと。
皮膚に付着した場合: 直ちに、すべての汚染された衣類を取り去ること。
皮膚を速やかに洗浄すること。
気分が悪い時は医師を呼ぶこと。
脱いだ衣類を再使用する前に洗濯し汚染除去すること。
目に入った場合: コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。洗浄を続けること。
水で数分間、注意深く洗うこと。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
飲み込んだ場合: 速やかに口をすすぎ、医師の診断を受けること。
予想される急性症状及び遅発性症状 眼・皮膚の発赤、膨化、痛み、咳、頻呼吸、喘鳴音、咽頭痛、嘔吐、下痢。
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別注意事項: 情報なし

5.火災時の措置
消火剤: 粉末消火剤、一般の泡消火剤、二酸化炭素、砂、噴霧水
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器を含め完全な防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を着用する。
風上に留まる。
環境に対する注意事項: 環境中に放出してはならない。
河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 漏洩物を掃き集めて空容器に回収する。
湿らせてもよい場合は、粉じんの発生を防ぐために湿らせてから漏洩物を掃き集める。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項: 接触、吸入又は飲み込んではならない。
使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
粉じん、ミストを吸入しないこと。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 特別に技術的対策は必要としない。
保管条件: 容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。
施錠して貯蔵すること。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
容器包装材料: ポリエチ内装ファイバードラムを使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 設定されていない。
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 設定されていない。
ACGIH(2005年版) 設定されていない。
設備対策: 工程の密閉化、局所排気その他の設備対策を使用する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な眼の保護具(顔面シールド又は呼吸用保護具と眼の保護具の併用等)を着用すること。
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣、保護靴を着用すること。
衛生対策: 取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 灰色〜紫色の結晶 5) 褐色針状結晶 4) ,6) 
臭い: データなし
pH: 弱アルカリ性
融点・凝固点: 132.4℃ 6) 132-133℃ 5)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 368℃ 5) 402℃ 7)
引火点: データなし
爆発範囲: データなし
蒸気圧: 6×10-7Pa (20℃) 6) 2.56×10-7mmHg (25℃) (推定値)8) 4.2×10-7 mmHg (25℃) (推定値) 12)
蒸気密度(空気 = 1): データなし
比重(密度): データなし
溶解度: 3.10mg/L水(25℃) 8) エタノール、ベンゼンに易溶。4) アルコール、ベンゼン、氷酢酸に易溶。1)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 3.51 (25℃) (測定値) 8) log Pow = 3.5 (23℃) (測定値)6)
自然発火温度: 350℃ 5)
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値: データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  燃焼する。
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 通常の取扱条件下(常温、常圧)で安定。
加熱すると分解し、有毒で腐食性のヒューム(窒素酸化物、塩化水素)を生じる。
危険有害反応可能性: イソシアネート、有機ハロゲン化物、過酸化物、酸性のフェノール類、エポキシ化合物、酸無水物、酸ハロゲン化物と反応する。
避けるべき条件: 加熱、混触危険物質との接触。
混触危険物質: イソシアネート、有機ハロゲン化物、過酸化物、酸性のフェノール類、エポキシ化合物、酸無水物、酸ハロゲン化物。
危険有害な分解生成物: 一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、塩化水素。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラット  LD50 7070mg/kg 2) , 10) , 13)
7000mg/kg 3)
経皮 ウサギ LD50 >8000mg/kg 2) ,10)
皮膚腐食性・刺激性: ヒト職業ばく露例に皮膚炎が認められたとの記述があり、12) ,13) ,14) 皮膚炎の原因について皮膚感作性の可能性が示唆されている。2) また、皮膚一次刺激性の可能性は低いことを示唆するデータがあるが、これらを証明する動物実験データはない。10)
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: ウサギの眼に刺激性はみられなかった。2) ,10) ,14) ヒトのばく露例で眼刺激性を示す報告はない。 
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作;データなし。
皮膚感作性:ヒト職業ばく露例に皮膚炎が認められたとの記述があるが、刺激性に因るか感作性に因るか判断するに足るデータが不足している。 2) ,10) ,13) ,14)
生殖細胞変異原性: 体細胞を用いる in vivo 変異原性試験のほ乳類骨髄細胞を用いる染色体異常試験 14) 及びほ乳類赤血球を用いる小核試験 3) ,10) ,14) で陽性の報告があるが、生殖細胞 in vivo 遺伝子毒性試験で陽性の結果はない。
遺伝性疾患のおそれの疑い(区分2)
発がん性: ACGIHは、 グループA3(動物発がん性が確認され、ヒトの関連は不明な物質)。 IARCは、グループ2B(ヒトに対して発がん性があるかもしれない物質)。日本産業衛生学会は、グループ2Bグループ(人間に対して発がん性がある物質、証拠が比較的に十分でない物質)。NTPは、グループR(合理的にヒト発がん性が予測される物質)。EPAは、グループB2(恐らくヒト発がん性物質、動物での十分な証拠があり、かつ疫学的研究でヒトでの発がん性の不十分な証拠があるか、又はない物質)。EUは、カテゴリー2(ヒトに対して発がん性とみなされるべき物質)。
発がんのおそれの疑い(区分2)
生殖毒性: データなし
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ラットへの吸入ばく露により刺激性と中等度の肺の充血(some irritation and moderate pulmonary congestion)を起こす。3)  ヒトのばく露例で喉の痛みの頻度が高い。10) ヒトへの影響として短期ばく露によって気道を刺激する。23)
呼吸器への刺激のおそれ(区分3)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
皮膚接触による皮膚炎や、肝臓に影響を与える可能性があるとの報告があるが、具体的な症例の記述はない。23)
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
生態毒性 長期的影響により水生生物に非常に強い毒性がある。
ブルーギル LC50 0.5mg/L/96H 13)
水生生物に非常に強い毒性(区分1)
残留性・分解性 難分解性であるが、生物濃縮性は低いと推定される。(BOD分解度 = 1%) 18)
生体蓄積性 高濃縮性でないと判断される物質である。BCF=213 18)
急性毒性が区分1、生物蓄積性が低いものの、急性分解性がないことから、区分1とした。
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性(区分1)

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
燃焼法 アフターバーナ及びスクラバ付き焼却炉の中で焼却する。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 非該当
航空規制情報 非該当
国内規制
陸上規制情報 非該当
海上規制情報 非該当
航空規制情報 非該当
特別の安全対策 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 特定化学物質第1類物質
(製造許可物質)
(特定化学物質障害予防規則第2条1項第1号)
名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法)
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第138号)
化審法: 第2種監視化学物質
(法第2条第5項)

16.その他の情報
参考文献
1) Merck (13th, 1996)
2) ATSDR
3) ACGIH (7th, 2001)
4) 有機化合物辞典 (1985) p391
5) ICSC (J) (1994)
6) Verschueren (4th, 2001)
7) HSDB (Access on Oct 2005)
8) Howard (1997)
9) NIOSH : Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (2003)
10) (財)化学物質評価研究機構:既存化学物質安全性評価シート  (2000)
11) 日本産業衛生学会 (2004)  
12) Gangolli vol.3 (1st, 1993)
13) CaPSAR (1993)
14) CICAD 18 (1999)
15) Patty's Industrial Hygiene and Toxicology, (51th, 2001)
16) 化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 (1992)
17) 発がん性物質の分類とその基準第6版 日本化学物質安全・情報センター (2004)
18) 通産省公報「既存化学物質の安全性点検結果」(1982.12.28)
19) GHS分類結果(JETOC)
20) 日化協「緊急時応急措置指針、容器イエローカード(ラベル方式)」
21) 日化協「化学物質法規制検索システム」(CD-ROM) (2005)
22) 日本ケミカルデータベース(株)「化学品総合データベース」 (2005)
23) 環境省リスク評価第3巻 (2004)
災害事例
(1) 有機工業薬品製造業でジクロロベンジジンベース(粉末)を容器に入れる作業をしていたとき、発散粉末が皮膚に付着した。保護具は着用していなかった。