製品安全データシート
1,1,2−トリクロロ-1,2,2−トリフルオロエタン
作成日2002年3月12日
改定日2006年9月19日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: 1,1,2−トリクロロ-1,2,2−トリフルオロエタン
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03−1234−5678
緊急連絡電話番号: 03−1234−5678
FAX番号: 03−1234−5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 洗浄用溶剤、ドライクリーニング溶剤、冷却用、プラスチック(ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂)の原料

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 区分外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 区分外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 区分外
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
人健康有害性 急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮) 区分外
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 区分外
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 分類できない
皮膚腐食性・刺激性 区分3
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分外
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 分類できない
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 区分外
生殖毒性 区分外
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分3(気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分1(中枢神経系、肝臓)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境有害性 水生環境急性有害性 区分2
水生環境慢性有害性 区分2
ラベル要素
絵表示又はシンボル: 健康有害性 感嘆符 環境
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 軽度の皮膚刺激
呼吸器への刺激のおそれ、眠気又はめまいのおそれ
長期又は反復ばく露による中枢神経系、肝臓の障害
水生生物に毒性
長期的影響により水生生物に毒性
注意書き: 【安全対策】
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
吸入した場合、空気の新鮮な場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
皮膚刺激があれば、医師の診断、手当てを受けること。
漏出物は回収すること。
【保管】
容器を密閉して換気の良い場所で施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: 1,1,2−トリクロロ-1,2,2−トリフルオロエタン
(1,1,2-Trichloro-1,2,2-trifluoroethane)
別名: トリクロロトリフルオロエタン(Trichlorotrifluoroethane)
フロンR-113(CFC-113)
化学式: C2Cl3F3
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 76-13-1
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(2)-95
分類に寄与する不純物及び安定化添加物:
濃度又は濃度範囲

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
気分が悪い時、皮膚刺激が生じた場合、医師の診断、手当てを受けること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。
医師に連絡すること。
飲み込んだ場合: 口をすすぐこと。
医師に連絡すること。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:錯乱、息切れ、し眠、意識喪失、不整脈。
皮膚:発赤。
眼:刺激、発赤。
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項:  

5.火災時の措置
消火剤: 特定の条件下で可燃性。周辺火災の適応した消火剤を用いる。
使ってはならない消火剤: データなし
特有の危険有害性: 加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
風上に留まる。
低地から離れる。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 漏れた液は密閉可能な容器に回収する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: 排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項: 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取扱い後は、顔、手足など皮膚の露出部を石鹸でよく洗い、うがいをすること。
環境への放出を避けること。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
金属や合金から離しておくこと。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 包装、容器の規制はないが密閉式の破損しないものに入れる。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 未設定
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 500ppm 3800mg/m3
ACGIH (2005年版) TLV-TWA 1000ppm A4
TLV-STEL 1250ppm A4
設備対策: 空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な眼の保護具を着用すること。
皮膚及び身体の保護具: 適切な顔面用の保護具、保護衣を着用すること。
衛生対策: この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色の揮発性液体 1) , 6)
臭い: 特異臭 1) , 6)
pH: データなし
融点・凝固点: -36℃(融点) 1)   -33℃(融点) 2)  -36.4℃(融点) 4)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 48℃ 1)  47.7℃ 2)   47.633℃ 4)
引火点: データなし
爆発範囲: データなし
蒸気圧: 36kPa (20℃) 1) , 2)
蒸気密度(空気 = 1): 6.5 1)
比重(密度): 1.5635 (25℃/4℃)(比重) 7) 1.561)
溶解度: 0.2g/L (水・20℃) 1)   0.17g/L (水・25℃)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 3.16 (測定値) 4)  log Pow = 3.30 1)
自然発火温度: 680℃ 1)
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値 データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  データなし
粘度: 0.627mPa・s (30℃) (粘性率) 5)

10.安定性及び反応性
安定性: 高温面や炎との接触により分解し、有毒なガス(フッ化水素など)を生成する。
危険有害反応可能性: 金属粉末(カルシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウムなど)や有機金属化合物と激しく反応して、火災と爆発の危険性をもたらす。
避けるべき条件: 高温、混触危険物質との接触。 
混触危険物質: 金属粉末
危険有害な分解生成物: 燃焼により、塩化水素、フッ化水素、ホスゲンなどを発生する。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラットLD50 値 43g/kg 3) , 10) ,11) , 12) , 13) , 14) , 15) に基づき、区分外とした。
経皮 ウサギの致死量は11000mg/kg又はそれを上回るとのデータ 10) , 13) , 14) に基づき区分外とした。
吸入(蒸気) ラットLC50 値(4時間ばく露):52000ppm11) , 13)  52500ppm 15)  68000ppm11) , 13) の3データについて統計計算した値397.68mg/L(統計計算値が計算に用いたデータの最低値よりも小さいため最低値のデータを採用:52000ppm)から、ミストをほとんど含まない蒸気ばく露によるLC50値と判断され、ppm濃度による基準値を適用して、区分外とした。
皮膚腐食性・刺激性: ウサギでのドレイズ法(24時間ばく露)による皮膚刺激性試験では軽度の刺激性が認められた 13) との記述に基づき区分3とした。
軽度の皮膚刺激
眼に対する重篤な損傷・刺激性: ウサギを用いた試験で、刺激性の判定基準に達していない 12)  及び刺激性は見られない 13) ことから、区分外とした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:データなし
皮膚感作性:モルモットでのMaximization法では陰性であった 13) が、他に明確に皮膚感作性を否定する記述が無いことから、データ不足のため分類できないとした。
生殖細胞変異原性: 生殖細胞を用いるin vivo経世代変異原性試験であるマウスを用いた優性致死試験で陰性である 10) , 12) , 13) , 15) との記述のほか、 in vivo 試験の報告がないことから、区分外とした。
発がん性: ACGIHではA4に分類している 13) ことから、区分外とした。
生殖毒性 ラットの胎児器官形成期に吸入ばく露した試験では、母動物に一般毒性が現れる用量においても、胚・胎児毒性ならびに催奇形性は認められなかった 10) , 13) , 15) との記述、及びラットでの吸入ばく露による一世代繁殖試験では、標準的な繁殖性に関する指標において異常が認められなかった 10) , 13) , 15) との記述から、区分外とした。
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ボランティア又は事故等によるヒトのばく露例では、一過性の精神運動能力の低下、傾眠、めまい、記憶障害などの麻酔作用に随伴する症状、気道刺激性が認められた 12) , 15) との記述、及びラット、モルモット、イヌでの吸入ばく露により気道刺激性及び麻酔作用が認められた 10) , 12) , 13) との記述から、区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。
呼吸器への刺激のおそれ
眠気及びめまいのおそれ
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
ヒトでの職業的長期ばく露作業者に神経心理学的症状、精神作業テストにおける能力低下及び肝臓に脂肪浸潤を伴う肝機能障害が認められた 13) , 16) との記述により、区分1(中枢神経系、肝臓)とした。
長期又は反復ばく露による中枢神経系、肝臓の障害
吸引性呼吸器有害性: データ不足のため分類できない

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: 甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50  4290μg/L 17) から、区分2とした。
水生生物に毒性
水生環境慢性有害性: 急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いものの(BCF = 86) 18) 急速分解性がない(BODによる分解度:2%) 18) ことから、区分2とした。
長期的影響により水生生物に毒性

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上、処理を委託する。
汚染容器及び包装: 空容器を廃棄する時は、内容物を完全に除去した後に処分する。
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 非危険物
航空規制情報 非危険物
国内規制
陸上規制情報 規制なし
海上規制情報 非危険物
航空規制情報 非危険物
特別の安全対策 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第386号)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法)
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第213号)
オゾン層保護法 特定物質議定書付属書AのグループI
(施行令第1条)

16.その他の情報
参考文献
1) ICSC (J) (2002)
2) Ullmanns (E) (5th, 1995)
3) IUCID(2000)
4) Howard (1997)
5) Lange (14th, 1992)
6) ホンメル(1991)
7) HODOC (2nd, 1989)
8) 溶剤ポケットブック (1994)
9) HSDB (Access on Sep 2005)
10)A CGIH(7th, 2001)
11) 産衛学会勧告 (1993)
12)D FGOT vol.3 (1999)
13) CERIハザードデータ集 (1999)
14) RTECS (2005)
15) EHC 113(1990)
16) 産衛学会勧告 (1994)
17) 環境省リスク評価第3巻(2004)
18) 既存化学物質安全性点検データ
19) Amoore,J.E. and Haulata,E. Jouranal of Applied Toxicology, 3(6) 272 (1983)
20) 化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 1992
21) GHS分類結果(住化・NITE)
22) 日化協「緊急時応急措置指針、容器イエローカード(ラベル方式)」
23) 日化協「化学物質法規制検索システム」(CD-ROM) (2005)
24) 日本ケミカルデータベース(株)「化学品総合データベース」(2005)
災害事例
データなし