製品安全データシート
塩化シアン

作成日2003年12月5日

改定日2006年02月02日


1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: 塩化シアン
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03-1234-5678
緊急連絡電話番号: 03-1234-5678
FAX番号: 03-1234-5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 軍用化学製剤の原料(毒ガス)

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 区分外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 区分外
高圧ガス 液化ガスグループ
引火性液体 分類対象外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 分類対象外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 分類対象外
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
健康に対する有害性 急性毒性(経口) 分類できない
急性毒性(経皮) 分類できない
急性毒性(吸入:ガス) 区分1
急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 分類対象外
皮膚腐食性・刺激性 区分1A-1C
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分1
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 分類できない
生殖細胞変異原性 分類できない
発がん性 分類できない
生殖毒性 分類できない
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分2(呼吸器系、中枢神経系)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分1(呼吸器系)、区分2(中枢神経系)
吸引性呼吸器有害性 分類対象外
環境に対する有害性 水生環境急性有害性 区分1
水生環境慢性有害性 区分1
絵表示又はシンボル: ガスボンベ どくろ 腐食性 健康有害性 環境
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 加圧ガス;熱すると爆発のおそれ
吸入すると生命に危険(気体)
重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
重篤な眼の損傷
呼吸器系、中枢神経系の障害のおそれ
長期又は反復ばく露による呼吸器系の障害
長期又は反復ばく露による中枢神経系の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き: 【安全対策】
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
呼吸用保護具を着用すること。
保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用すること。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
ガスを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
吸入した場合、空気の新鮮な場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを容易に外せる場合には外して洗うこと。
皮膚に付着した場合、多量の水と石鹸で洗うこと。
衣類にかかった場合、直ちに、すべての汚染された衣類を脱ぐこと、取り除くこと。
汚染された保護衣を再使用する場合には洗濯すること。
ばく露又はその懸念がある場合、医師の診断、手当てを受けること。
眼に入った場合、直ちに医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
吸入した場合、直ちに医師の診断、手当てを受けること。
漏出物は回収すること。
【保管】
日光から遮断し、容器を密閉して換気の良いところで施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報:

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: 塩化シアン (Cyanogen chloride)
別名: クロロシアン (Chloro cyanogen)
化学式: CCIN
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 506-77-4
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
化審法(1)-123
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲: 情報なし

4.応急措置
吸入した場合: 新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は医師を呼ぶこと。
皮膚に付着した場合: 直ちに、すべての汚染された衣類を脱ぎ取り去ること。
皮膚を水又はシャワーで洗うこと。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。洗浄を続けること。
水で数分間注意深く洗うこと。
直ちに医師を呼ぶこと。
飲み込んだ場合: 速やかに口をすすぎ、医師の診断を受けること。
吐かせないこと。
予想される急性症状及び遅発性症状: 低濃度の場合、気道の刺激、頭痛、あえぐような呼吸、めまい、手足の機能不全、催涙。高濃度の場合、意識喪失、肺水腫、場合により痙攣と死。 遅発性症状:肺水腫。
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具(青酸ガス用の防毒マスク等)を着用する。
医師に対する特別注意事項: 安静に保ち、医学的な経過観察が不可欠である。

5.火災時の措置
消火剤: この製品自体は、燃焼しない。
大火災:散水、噴霧水、一般の泡消火剤
使ってはならない消火剤:
特有の危険有害性: 火災によって刺激性、毒性又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
加熱により容器が爆発するおそれがある。
破裂したボンベが飛翔するおそれがある。
消火に用いる水により、有毒で腐食性の塩酸及び青酸が生じる。
特有の消火方法: 火災をおさえる。消火が必要であれば、注水又は水噴霧が推奨される。
容器内に水を入れてはいけない。
火災の種類に応じて適切な消火剤を用いる。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
損傷したボンベは専門家だけが取り扱う。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
ガスが拡散するまでその区域を立入禁止とする。
漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を着用する。
風上に留まる。
低地から離れる。
密閉された場所に入る前に換気する。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
大量の場合、盛土で囲って流出を防止し、ポンプで汲み取る。
塩化第一鉄及び水酸化ナトリウム溶液又は鉄塩及び石灰乳を用いて、解毒する。
封じ込め及び浄化方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
可能ならば、漏洩している容器を回転させ、液体でなく気体が放出するようにする。
蒸発を抑え、蒸気の拡散を防ぐため散水を行う。
二次災害の防止策: 漏洩物又は漏洩源に直接水をかけない。
住居地域及び工業地域の住民に直ちに警告し、危険地域から避難する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行う。
安全取扱い注意事項: 容器は丁寧に取り扱い、衝撃を与えたり、転倒させない。
容器の取り付け、取り外しの作業の際は、漏洩させないよう、十分注意する。
使用後は、バルブを完全に閉め、口金キャップを取り付け、保護キャップを付ける。
吸入すると、死亡する危険性がある。
作業時のどの時点でも、許容濃度(天井値)を越えてはならない。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 容器は保安上使用開始後1年以内に、速やかに販売事業者に返却すること(高圧ガス保安協会指針)。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 容器は直射日光や火気を避け、40℃以下の温度で保管すること。
容器を密閉して換気の良いところで貯蔵すること。
施錠して貯蔵すること。
容器包装材料: 高圧ガス保安法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 設定されていない。
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 設定されていない。
ACGIH (2005年版) TLV-TWA 0.3ppm C  
設備対策: 空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
完全密閉系及び完全密閉装置でのみ取り扱うこと。
密閉された装置、機器又は局所排気装置を使用しなければ取扱ってはならない。
気中濃度を推奨された管理濃度以下に保つために、工程の密閉化、局所排気その他の設備対策を使用する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 呼吸用保護具を着用すること。
ばく露の可能性のあるときは、送気マスク、空気呼吸器、又は酸素呼吸器を着用する。
手の保護具: 保温用手袋を着用すること。
保護手袋を着用すること。
二トリルゴム及び塩ビは適切な保護材料ではない。ネオプレンが推奨される。
眼の保護具: 眼の保護具を着用すること。
皮膚及び身体の保護具: 保護手袋及び眼、顔面用の保護具を着用すること。
衛生対策: 取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色気体 1) , 2) , 4) , 15)  13℃以下の温度では無色の液体。 2)
臭い: 低い濃度でも耐えられない刺激臭。
pH: データなし
融点・凝固点: -5℃ 15) -6℃ 1) , 4) , 6)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 13℃ 15) 12.7℃ 15) 13.8℃ 1) , 4)
引火点: データなし
爆発範囲: データなし
蒸気圧: 134.633KPa(20℃) 9) 176.000KPa(21℃) 2) 1987KPa(21.1℃) 4)
蒸気密度(空気 = 1): 1.98g/cm3 9) 2.0g/cm3 2) 2.16g/cm3 4)
比重(密度): 1.186 1) 1.2(4/12℃) 2) , 15)
溶解度: 水に25倍可溶 2) 6×104 mg/L (0℃)(水) (測定値) 13)
エタノールに100倍可溶 (20℃) 、エチルエーテル 50倍可溶(20℃) 3)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 0.64 14) log Pow = -0.38 (推定値) 13)
自然発火温度: データなし
分解温度: データなし
臭いのしき(閾)値: データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  該当。
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 重合防止剤を加えないと重合する。
危険有害反応可能性: 湿気、水と徐々に反応して、有毒で腐食性の塩酸、青酸を生成する。
アルカリ性物質との接触、混合により、金属酸化物と金属シアン化物が生成する。
鉄塩と水と反応して発生する塩化水素又は塩酸の作用により、激しく爆発的な塩化シアヌルの三量化反応が起こる。
避けるべき条件: 水、湿気、加熱、混触危険物質との接触回避。
混触危険物質: アルカリ性物質、鉄塩。
危険有害な分解生成物: 塩酸、青酸、塩化水素。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 情報なし
吸入(ガス) ヒト LC 48ppm/30M(1.0mg/L) で死亡。 7)
吸入(ガス) マウス LC50 500ppm/3M(1.0mg/L) 3)
吸入(ガス) イヌ LC50 48ppm/6H(0.12mg/L) 3)
吸入(ガス) ネコ LC50 120ppm/3.5M(0.3mg/L) 3)
吸入(ガス) ウサギ LC50 1200ppm/2M(3.0mg/L) 3)
吸入すると生命に危険(区分1)
皮膚腐食性・刺激性: ヒトの皮膚に対する刺激性は蒸気の状態で見られ、液体の状態(13℃以下)になると強くなる。5) 液体に触れた場合、凍傷を起す。 4)
重篤な皮膚の薬傷、眼の損傷(区分1A-1C)
眼に対する重篤な損傷・刺激性: ヒトにばく露した場合、重度の眼刺激性を示す。 3) 液体の状態(13℃以下)で刺激性が強くなり、眼に焼傷、 5) 凍傷、発赤、痛みを生ずる。 4)
重篤な眼の損傷(区分1)
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性: データなし。皮膚感作性: データなし。
生殖細胞変異原性: データなし
発がん性: データなし
生殖毒性: データなし
特定標的臓器・全身毒性-単回ばく露: 低濃度での症状として"pulmonary irritant and lacrimator effects" 5) と記述されているが、一般に呼吸器系に対し肺水腫を含む急性あるいは遅延性の影響が認められ 5)、さらに、し眠、錯乱、意識消失など中枢を介した症状の記載 4) もあり、区分2(呼吸器系、中枢神経系)とした。
呼吸器系、中枢神経系の障害のおそれ(区分2)
特定標的臓器・全身毒性-反復ばく露: 本物質は細胞呼吸に影響し、 4) ヒトで気道や眼の刺激性以外に、毒性影響として肺のうっ血・浮腫、 3) , 4) めまい、痙攣、意識喪失を起こす。 4) , 5)
長期又は反復ばく露による呼吸器系の障害(区分1)
長期又は反復ばく露による中枢神経系の障害のおそれ(区分1)
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: 甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50 = 0.029mg/L 16) から、区分1とした。
水生生物に非常に強い毒性(区分1)
水生環境慢性有害性: 急性毒性が区分1、水中での挙動及び生物蓄積性が不明であるため、区分1とした。
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性(区分1)

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
高圧ガスを廃棄する場合は、高圧ガス保安法一般高圧ガス保安規則に従うこと。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。
高圧ガスの容器を廃棄する場合は、製造業者等専門業者に回収を依頼すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 IMOの規定に従う。
UN No.: 1589
Proper Shipping Name: CYANOGEN CHLORIDE, STABILIZED
Class: 2.3
Sab Risk 8
Packing Group:
Marine Pollutant: Not applicable
航空規制情報 ICAOの規定に従う。
UN No.: 1589(forbidden)
国内規制
陸上規制情報 毒劇法、高圧ガス保安法の規定に従う。
海上規制情報 船舶安全法の規定に従う。
国連番号: 1589
品名: 塩化シアン(安定剤入りのもの)
クラス: 2.3
副次危険: 8
容器等級:
海洋汚染物質: 非該当
航空規制情報 航空法の規定に従う。
国連番号: 1589(積載禁止)
特別の安全対策 毒劇法、高圧ガス保安法の規定に従う。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
移動、転倒、衝撃、摩擦などを生じないように固定する。 
火気、熱気、直射日光に触れさせない。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
鋼材部分と直接接触しないようにする。
重量物を上積みしない。           
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第97号)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法)
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第108号)
毒物及び劇物取締法 毒物
(指定令第1条)
高圧ガス保安法 圧縮ガス
(法第2条1)
可燃性ガス
(一般高圧ガス保安規則第2条1)
船舶安全法: 高圧ガス
(危規則第2,3条危険物告示別表第1)
航空法 : 高圧ガス
(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
1) Merck(13th, 2001)
2) ホンメル(1991)
3) ACGIH (2005)
4) ICSC (1999)
5) HSDB(2003)
6) EHC 207 (1998)
7) NIOSH : Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (2005)
8) 日本産業衛生学会 (2005)  
9) Sax(11th, 2004)
10) 化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 1992
11) 後藤稠 他編:産業中毒便覧、医歯薬出版(株)(1977)
12) 発がん性物質の分類とその基準第6版 日本化学物質安全・情報センター(2004)
13) SRC (Access on July. 2005)
14) Gangolli(2nd1999)
15) Chapman(2005)
16) ECETOC TR91 (2003)
災害事例
情報なし