安全データシート
メチレンビス(4,1‐フェニレン)=ジイソシアネート(別名 MDI)
作成日2002年12月26日
改定日2006年9月11日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: メチレンビス(4,1‐フェニレン)=ジイソシアネート(別名 MDI)
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03−1234−5678
緊急連絡電話番号: 03−1234−5678
FAX番号: 03−1234−5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 接着剤、染料、合成皮革用スパンデックス繊維、ウレタンフォームエラストの原料

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 分類対象外
可燃性固体 分類できない
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 分類対象外
自然発火性固体 区分外
自己発熱性化学品 分類できない
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
人健康有害性 急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮) 分類できない
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん) 区分2
急性毒性(吸入:ミスト) 分類対象外
皮膚腐食性・刺激性 区分2
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分2A-2B
呼吸器感作性 区分1
皮膚感作性 区分1
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 区分外
生殖毒性 区分外
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分3(気道刺激性)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分1(呼吸器)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境有害性 水生環境急性有害性 分類できない
水生環境慢性有害性 分類できない
ラベル要素
絵表示又はシンボル: どくろ 健康有害性
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 吸入すると生命に危険(粉じん)
皮膚刺激
強い眼刺激
吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ
アレルギー性皮膚反応を引き起こすおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
長期又は反復ばく露による呼吸器の障害
注意書き: 【安全対策】
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
呼吸用保護具を着用すること。
換気が十分でない場合には呼吸用保護具を着用すること。
保護手袋、保護眼鏡、保護面を着用すること。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
粉じんを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
【応急措置】
吸入した場合、空気の新鮮な場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを容易に外せる場合には外して洗うこと。
皮膚に付着した場合、多量の水と石鹸で洗うこと。
汚染された保護衣を再使用する場合には洗濯すること。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
吸入した場合、直ちに医師の診断、手当てを受けること。
呼吸に関する症状が出た場合には、医師の診断、手当てを受けること。
皮膚刺激があれば、医師の診断、手当てを受けること。
【保管】
容器を密閉して換気の良い場所で施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: メチレンビス(4,1‐フェニレン)=ジイソシアネート
(Methylenebis(4,1-phenylene) diisocyanate)
別名: 4,4’‐メチレンビスフェニルイソシアナート
(4,4'-Methylene bispheyl isocyanate)
4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアナート (4,4'-MDI)
Monomeric MDI
化学式: C15H10N2O2
化学特性(化学式又は構造式):
化学式又は構造式
CAS番号: 101-68-8
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(4)-118
分類に寄与する不純物及び安定化添加物:
濃度又は濃度範囲

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合: 汚染された衣類を脱ぐこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
多量の水と石鹸で洗うこと。
直ちに医師に連絡すること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
飲み込んだ場合: 口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
気分が悪い時は、医師に連絡すること。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:頭痛、吐き気、息切れ、咽頭痛、喘息様症状。
皮膚:発赤、痛み。
眼:痛み、発赤。
症状は遅くなって現れることがある。
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項: 安静と症状の医学的な経過観察が必要である。

5.火災時の措置
消火剤: 小火災:粉末消火剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤: 情報なし
特有の危険有害性: 加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
火災時、温度上昇により爆発するおそれがあるので、消火活動は、有効に行える十分な距離をとる。
容器内に水を入れてはいけない。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
専門家に相談する。
関係者以外の立入りを禁止する。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
風上に留まる。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 漏出物を密閉できる空容器に回収する。
衝撃、静電気により火花が発生しない装置、材質の用具を用いる。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
漏出物を取扱うとき用いる全ての設備は接地する。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項: 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
容器を転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずるなどの取扱いをしてはならない。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
この物質により喘息様症状を示した者は、以後この物質に物質に接触しないこと。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。−禁煙。
混触危険物質から離して保管する。
容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 包装、容器の規制はないが密閉式の破損しないものに入れる。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 未設定
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 0.05mg/m3
ACGIH (2005年版) TLV-TWA 0.005ppm
設備対策: 空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
ばく露の可能性のあるときは、有機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器、又は酸素呼吸器を着用する。
手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具: 適切な顔面用の保護具、保護衣を着用すること。
衛生対策: この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 白色-淡黄色の結晶又は薄片無色液体 1) , 2)
臭い: 情報なし。
pH: データなし
融点・凝固点: 37℃(融点) 1)     39.5℃(融点) 5)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 208℃ (1kPa)(沸点) 5)   314℃ (100kPa)(沸点) 1)
引火点: 196℃(密閉式) 1)   218℃(開放式) 4)
爆発範囲: データなし
蒸気圧: <1mPa (25℃) 5)  0.1Pa(40℃) 6)
蒸気密度(空気 = 1): 8.6 1)
比重(密度): 1.19 (50℃/4℃)(比重) 2)   1.2 (20℃)(比重) 4)  1.2(水=1)1)
溶解度: 水と反応する。 1)   アセトン ベンゼン ジオキサン 四塩化炭素に可溶。 2)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 5.22 (推定値) 8)
自然発火温度: 232℃ 3)   240℃ 1)
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値 データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  可燃性1)
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 通常の取り扱い条件においては安定。
204℃以上の温度で重合することがある。
危険有害反応可能性: 酸化剤、酸、アルコール、アミン、塩基と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
水と反応し、不溶性のポリ尿素を生成する。
避けるべき条件: 混触危険物質との接触。
混触危険物質: 酸化剤、酸、アルコール、アミン、塩基、水。
危険有害な分解生成物: 燃焼により、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、シアン化水素などを発生する。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラットLD50 値:31600mg/kg 11) に基づき、区分外とした。
経皮 データがなく分類できない。
吸入(蒸気) データなし
吸入(粉じん) ラットLC50 (4時間)値:0.369mg/L 9) に基づき、区分2とした。
吸入すると生命に危険(粉じん)
皮膚腐食性・刺激性: ウサギの皮膚を刺激する 10) との記述から、区分2とした。
皮膚刺激
眼に対する重篤な損傷・刺激性: ウサギの眼を刺激する 10) との記述から、区分2A-2Bとした。
強い眼刺激
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性: 日本産業衛生学会で気道:第1群 12) 、DFGでSah 13) に分類されており、日本職業・アレルギー学会で気道感作性物質としてリストアップされている14) ことから、区分1とした。
吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ
皮膚感作性:Mouse Ear Swelling Test (MEST)の結果に基づき皮膚感作性の明確な証拠がある 11) と記載されていることから、区分1とした。
アレルギー性皮膚反応を引き起こすおそれ
生殖細胞変異原性: 体細胞を用いる in vivo 変異原性試験であるヒトの末梢血リンパ球における染色体・小核分析及びマウス赤血球を用いる小核試験で陰性の結果15)があることから、区分外とした。
発がん性: IARCでグループ310)EPAでCBD 17) に分類されていることから、区分外とした。
生殖毒性 ラットを用いた妊娠中吸入ばく露試験において親動物に一般毒性が認められる用量でも明確な生殖毒性は認められなかった 10) , 11) , 17) との記述から、区分外とした。
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ヒトに対して気道刺激性がある 10) , 15) との記述から、区分3(気道刺激性)とした。
呼吸器への刺激のおそれ
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
ラットを用いた吸入ばく露試験において巣状・多巣状の肺胞及び細気管支肺胞増殖(focal/multifocal alveolar and bronchioalveolar hyperplasia)や肺の間質性線維化(interstitial fibrosis)といった呼吸器への影響が区分1のガイダンス値範囲の濃度で認められた 11) , 17) との記述、ヒト職業ばく露例において呼吸機能の低下や肺疾患の発生増加認められる 9) , 11) , 15) , 16) との記述から、区分1(呼吸器)とした。
長期又は反復ばく露による呼吸器の障害
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: データ不足のため分類できない
水生環境慢性有害性: データ不足のため分類できない

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上、処理を委託する。
汚染容器及び包装: 空容器を廃棄する時は、内容物を完全に除去した後に処分する。
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 非危険物
航空規制情報 非危険物
国内規制
陸上規制情報 規制なし
海上規制情報 非危険物
航空規制情報 非危険物
特別の安全対策 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
重量物を上積みしない。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第599号)
変異原性が認められた既存化学物質
(法第57条の5、労働基準局長通達)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法):
第2種指定化学物質
(法第2条第3項、施行令第2条別表第2)
(政令番号 第78号)

16.その他の情報
参考文献
1) ICSC (J) (1999)
2) 有機化合物辞典 (1985)
3) ホンメル (1991)
4) Weiss (2nd, 1986)
5) Ullmanns (E) (5th, 1995)
6) Sax (8th, 1992)
7) RTECS (2004)
8) Howard (1997)
9) ACGIH 7th(2001)
10) IARC 19 (1979)
11) CICAD 27, 2000)
12) 産衛学会勧告 (2005)
13) MAK/BAT(2004)
14) 日本職業・環境アレルギー学会雑誌 (2004)
15) DFGOT vol.8 (1997)
16) IARC 71(1999)
17) IRIS (1998)
18) 化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 1992
19) GHS分類結果(住化・NITE)
20) 日化協「緊急時応急措置指針、容器イエローカード(ラベル方式)」
21) 日化協「化学物質法規制検索システム」(CD-ROM) (2005)
22) 日本ケミカルデータベース(株)「化学品総合データベース」(2005)
23) Amoore,J.E. and Haulata,E. Jouranal of Applied Toxicology, 3(6) 272 (1983)
災害事例
(1) ステレンレス浴槽の外部に保温用ウレタン樹脂の吹付け注入作業終了後、樹脂のカス取り作業を行っていたところひどく咳込んだ。
(2) 漆器製造工場でろ過装置に付着したメチレンビス(4-フェニルイソシアネート)をガスバーナで加熱し除去する作業を行っていたところ、加熱によって昇華したメチレンビス(4-フェニルイソシアネート)を他の作業を行っていた労働者が吸入し、被災した。
(3) 中学校校舎の改築工事で、地下室で硬質ウレタン塗装を行っていたところ、塗装に用いるメチレンビス(4-フェニルイソシアネート)のガスが別室に流入し、配線作業を行っていた作業者が被災した。
(4) ポリウレタン成形工程において、その原料のメチレンビスフェニルイソシアネートを加熱して原料タンクヘ補給していたところ、当該物質の蒸気を吸入し1名中毒した。
(5) 事業場建屋前で、硬質ウレタンフォームの原液が残留していたドラム缶を溶接加工するため、原液を地上に流したところ、呼吸困難になった(中毒1名)。
(6) ポリウレタンスクリーンの製造工程において、主に溶融圧着作業に従事していた作業員が、熱可塑性ポリウレタンの分解物を吸入し、「過敏性肺臓炎」等により休業した。