製品安全データシート
フタル酸ビス(2‐エチルヘキシル)
(別名 DEHP)
作成日2001年 3月 12日
改定日2006年 3月 13日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: フタル酸ビス(2‐エチルヘキシル)(別名 DEHP)
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03-1234-5678
緊急時の電話番号: 03-1234-5678
FAX番号: 03-1234-5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 本物質の主な用途は、可塑剤として塩化ビニル製品(シート、レザー、電線被覆材、農業用ビニルフィルム等)等に添加されている

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 区分外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 区分外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 分類できない
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
健康に対する有害性 急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮) 区分外
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 区分外
皮膚腐食性・刺激性 区分3
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分2B
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 区分外
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 区分2
生殖毒性 区分1B
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
分類できない
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分2(精巣、肝臓)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境に対する有害性 水生環境急性有害性 区分外
水生環境慢性有害性 区分4
ラベル要素
絵表示又はシンボル: 健康有害性
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 軽度の皮膚刺激
眼刺激
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
長期又は反復ばく露による精巣、肝臓の障害のおそれ
長期的影響により水生生物に有害のおそれ
注意書き: 【安全対策】
すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
個人用保護具や換気装置を使用し、ばく露を避けること。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを容易に外せる場合には外して洗うこと。
ばく露又はその懸念がある場合、医師の診断、手当てを受けること。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
皮膚刺激があれば、医師の診断、手当てを受けること。
【保管】
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報:

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: フタル酸ビス(2‐エチルヘキシル) (Phthalic acid bis(2-ethylhexyl))
別名: フタル酸ジ(2‐エチルヘキシル) (Phthalic acid di(2-ethylhexyl))
1,2‐ベンゼンジカルボン酸ビス(2‐エチルヘキシル)
(1,2-Benzenedicarboxylic acid bis(2-ethylhexyl))
ジエチルヘキシルフタラート (Diethylhexyl phthalate)
DEHP (DEHP)
化学式: C24H38O4
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 117-81-7
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(3)-1307
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲: 情報なし

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師の手当、診断を受けること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
皮膚刺激が生じた場合、医師の診断、手当てを受けること。
医師の手当、診断を受けること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
医師の手当、診断を受けること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
飲み込んだ場合: 口をすすぐこと。
医師の手当、診断を受けること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:咳、咽頭痛。
眼:発赤、痛み。
経口摂取:胃痙攣、下痢、吐き気。
最も重要な兆候及び症状:

5.火災時の措置
消火剤: 粉末消火剤、一般の泡消火剤、二酸化炭素、砂、噴霧水
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器と化学用保護衣を着用すること。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 関係者以外の立入りを禁止する。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
風上に留まる。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
環境中に放出してはならない。
回収、中和: 乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。後で廃棄処理する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行う。
安全取扱い注意事項: 使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
火気注意。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
眼との接触を避けること。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 酸化剤から離して保管する。
炎及び熱表面から離して保管すること。
冷所、換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 消防法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 設定されていない。
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 5mg/m3
ACGIH (2005年版) TLV-TWA 5mg/m3 A3
設備対策: この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
保護具
呼吸器の保護具: 換気が不十分な場合は、適切な呼吸保護具を着用すること。
手の保護具: 適切な手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣を着用すること。
衛生対策: 取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色〜薄く着色した液体1)
臭い: 特徴的な臭気 14)
pH: データなし
融点・凝固点: -50℃(融点) 1)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 385℃(沸点) 1)
引火点: 206℃(密閉式) 2)
爆発範囲: 下限  0.3vol%(245℃) 6)
蒸気圧: 1Pa(20℃) 1)
蒸気密度(空気 = 1): 13.46(計算値)
比重(密度): 0.9861(20℃/20℃) 6)
溶解度: 0.285mg/L(24℃)(水) 6)
鉱油、ヘキサンと混和.、四塩化炭素に微溶 6)
オクタノール/水分配係数: 7.60(測定値) 5)
自然発火温度: 350℃ 1)
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値: データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  該当しない
粘度: 81.4mPa・s(20℃) 6)

10.安定性及び反応性
安定性: 通常の取扱状態では安定である。
加熱すると分解し、刺激性のヒュームを生じる。
危険有害反応可能性: 強酸化剤、酸、アルカリ、ニトラートと反応する。
避けるべき条件: 加熱、高温。
混触危険物質: 強酸化剤、酸、アルカリ、ニトラート。
危険有害な分解生成物: 火災時の燃焼により、一酸化炭素、二酸化炭素などの有害ガスが発生する。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラット LD50 >20000mg/kg 42)
経口 ラット LD50 >40000mg/kg 42)
経口 ラット LD50 30600mg/kg 57)
経口 ラット LD50 33800mg/kg 10)
区分外とした。
経皮 ウサギ LD50 24500mg/kg 42)
経皮 ウサギ LD50 25000mg/kg 35)
経皮 ウサギ LD50 24750mg/kg 10)
区分外とした。
吸入(蒸気) 情報なし
吸入(ミスト) ラット LC50 >10.62mg/kg(4時間) 42)
区分外とした。
皮膚腐食性・刺激性: 皮膚刺激性なし又は軽微な刺激性を有する 42)
軽度の皮膚刺激(区分3)
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: 軽微な刺激性を有する 42) , 35) , 10)
眼刺激(区分2B)
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:データなし
皮膚感作性:「モルモットを用いたマキシマイゼーション法及びビューラー(Buehler)法で調べた限り、皮膚感作性を示さなかった。」 42) ことから、皮膚感作性なしと考えられ、区分外とした。
生殖細胞変異原性: 生殖細胞in vivo 変異原性試験のデータがなく、体細胞in vivo 変異原性試験が陰性で、経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性である 52)
発がん性: IARCではグループ3であるが、NTP(2005)でR、EPA (2002)でB2、ACGIH(2001)でA3、日本産業衛生学会で第2郡B に分類されていることから、区分2とした。
発がんのおそれの疑い(区分2)
生殖毒性: U.S.NTP-CERHR 2000の報告 52) において親に影響のない用量で、次世代に影響がみられたことによる。
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ(区分1B)
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
情報なし
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
実験動物については「精巣にセルトリ細胞の空胞化がみられる」 52) 、「肝細胞の腫大、門脈周囲の脂肪沈着、リソゾームでの脂質の充満、グリコーゲンの枯渇、胆管構造の変化、ペルオキシゾーム酵素及びチトクロームP-450 の誘導」 22) の記載があることから、精巣、肝臓が標的器官と考えられる。区分2(肝臓、精巣)とした。
長期又は反復ばく露による精巣、肝臓の障害のおそれ(区分2)
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: 水溶解度(0.003mg/L 58) )までの濃度で急性毒性が報告されていないことから、区分外とした。
水生環境慢性有害性: 難水溶性物質で水溶解度までの濃度で急性毒性が報告されておらず、環境中での分解速度は速くなく(水中での生分解性半減期:50日 58) )、かつ生物蓄積性がある(BCF=840 58) )ことから、区分4とした。
長期的影響により水生生物に有害のおそれ(区分4)

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
本製品を含む廃液及び洗浄排水を直接河川等に排出したり、そのまま埋め立てたり投棄することは避ける。
特別管理産業廃棄物のため、廃棄においては特に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の特別管理産業廃棄物処理基準に従うこと。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 非危険物
航空規制情報 非危険物
国内規制
陸上規制情報 消防法の規定に従う。
海上規制情報 非危険物
航空規制情報 非危険物
特別の安全対策 危険物は当該危険物が転落し、又は危険物を収納した運搬容器が落下し、転倒もしくは破損しないように積載すること。
危険物又は危険物を収納した容器が著しく摩擦又は動揺を起こさないように運搬すること。
危険物の運搬中危険物が著しく漏れる等災害が発生するおそれがある場合には、災害を防止するための応急措置を講ずると共に、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第481号)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法):
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号第272号)
消防法: 第4類引火性液体、第四石油類
(法第2条第7項危険物別表第1)

16.その他の情報
参考文献
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30) 日本産業衛生学会誌 (2005)
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32) IRIS (2005)
33) 環境省リスク評価第2巻 (2003)
34) ALGY学会(感)物質リスト(案)
35) EHC131 (1992)
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41) J Occup Health 45:137-139 (2003)
42) EU-RAR No.42 (2003)
43) CICAD 58(2004)
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45) NTP RoC(11th, 2005)
46) ACGIH (2001)
47) 溶剤ポケットブック (1996)
48) Ullmanns (E) (5th, 1995)
49) IRIS (Access on Aug 2005)
50) CERI・NITE有害性評価書 No.16 (2004)
51) 既存化学物質安全性点検データ
52) CERI・NITE有害性評価書No.7(2004)
53) NFPA(13th,2001)
54) NITE初期リスク評価書No.16 (2005)
55) ACGIH-TLV (2005)
56) Dean(15th Ed.)
57) ATSDR (2002)
58) EU-RAR (2001)
災害事例
(1) ポリ塩化ビニル加工の男性作業者にばく露濃度は不明であるが、ぜんそくが報告されている。(日本産業衛生学会許容濃度暫定値の提案理由1998)より