安全データシート
ジチオりん酸O,O−ジメチル−S−1,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル
(別名マラチオン)
作成日2003年 1月12日
改定日2006年10月15日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: ジチオりん酸O,O−ジメチル−S−1,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル(別名マラチオン)
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03-1234-5678
緊急時の電話番号: 03-1234-5678
FAX番号: 03-1234-5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 農薬(殺虫剤)

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 区分外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 区分外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 分類できない
水反応可燃性化学品 分類できない
酸化性液体 分類できない
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
人健康有害性 急性毒性(経口) 区分4
急性毒性(経皮) 区分外
急性毒性(吸入:気体) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 分類できない
皮膚腐食性・刺激性 区分外
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分外
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 区分1
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 区分外
生殖毒性 区分外
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分1(神経系)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分外
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境有害性 水生環境急性有害性 区分1
水生環境慢性有害性 区分1
GHSラベル要素
絵表示又はシンボル: 感嘆符 健康有害性 環境
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 飲み込むと有害(経口)
アレルギー性皮膚反応を引き起こすおそれ
神経系の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き: 【安全対策】
適切な保護手袋を着用すること。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
飲み込んだ場合、口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合、多量の水と石鹸で洗うこと。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
皮膚に付着した場合、皮膚刺激又は発疹が生じた場合は、医師の診断、手当てを受けること。
飲み込んだ場合、気分が悪い時は、医師に連絡すること。
漏出物は回収すること。
【保管】
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物、容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報:

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル
(S-1,2-bis(ethoxycarbonyl)ethyl O,O-dimethylphosphorodithioate)
別名: マラソン(malathon)
マラチオン(malathion)
ジメチルジカルベトキシエチルジチオホスフェート
(dimethyldicarbetoxyethyldithiophosphate)
化学式: C10H19O6PS2
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 121-75-5
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(2)-1963
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲: 情報なし

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
気分が悪い時は、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
多量の水と石鹸で洗うこと。
皮膚刺激又は発疹が生じた場合は、医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師に連絡すること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。
医師に連絡すること。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
飲み込んだ場合: 直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:運動失調、めまい、頭痛、息苦しさ、吐き気、意識喪失、嘔吐、縮瞳、筋痙直、唾液分泌過多。倦怠感、歩行困難、言語障害、意識混濁等を起こす。
皮膚:吸入される可能性あり。発赤、かぶれ等の薬傷がある。 吸入した場合と同様の症状を起こすことがある。
眼:粘膜の炎症・刺激がある。
経口摂取:胃痙攣、下痢、吐き気、嘔吐、縮瞳、筋痙直、唾液分泌過多。他の症状については、「吸入」参照
有機りん剤によるコリンエステラーゼ阻害の症状 1)
軽症: 倦怠感、違和感、頭痛、めまい、胸部圧迫感、不安感及び軽度の運動失調などの非特異的症状、嘔気、嘔吐、唾液、分泌過多、多量の発汗、下痢、腹痛、軽い縮瞳。
中等症: 軽症の諸症状に加えて縮瞳、筋線維性れん縮、歩行困難、言語障害、視力減退、徐脈。
重症: 縮瞳、意識混濁、対光反射消失、全身けいれん、肺水腫、血圧上昇、失禁。
最も重要な兆候及び症状:

5.火災時の措置
消火剤: 粉末消火剤、一般の泡消火剤、二酸化炭素、砂、噴霧水
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
低地から離れる。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
風上に留まる。
環境に対する注意事項: 環境中に放出してはならない。
河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行う。
安全取扱い注意事項: 火気注意。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 酸化剤から離して保管する。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 設定されていない。
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2006年版) 10mg/m3
ACGIH(2005年版) TLV-TWA 1mg/m3 Skin;A4
設備対策: この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 換気が不十分な場合には、適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な保護眼鏡を着用すること。
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣を着用すること。
衛生対策: この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色の液体 2)
臭い: 特有の臭気 2)
pH: データなし
融点・凝固点: 2.85℃(融点) 3)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 約210℃付近から分解のため測定不能 2) 156-157℃ (0.7mmHg) 3)
引火点: 163℃ (密閉式) 4)
爆発範囲: データなし
蒸気圧: 0.0053 Pa (30℃) 5)
蒸気密度(空気 = 1): データなし
比重(密度): 1.2 5)
溶解度: 60.5 mg/L (20℃) 2)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 2.74 (25℃) 2)
自然発火温度: データなし
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値 データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  該当しない
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 光の影響下で分解。
加熱や燃焼により分解して硫黄酸化物、リン酸化物などの有害なヒュームを生成する。
危険有害反応可能性: 水分によって緩慢な分解を受ける。
マグネシウム、強酸化剤と激しく反応。塩基、酸と反応。
避けるべき条件: 加熱、光。裸火、ミストの発生、酸化剤との接触。
混触危険物質: 鉄、スズ、鋼、銅、鉛、ある形質のプラスチック及びゴムを浸す。
危険有害な分解生成物: リン酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素

11.有害性情報
急性毒性: 経口:ラットLD50 値:1390mg/kg 6) に基づき、区分4とした。
飲み込むと有害(経口)
経皮:ラットLD50 値は:>5000mg/kgであり、5000mg/kg以下では死亡が認められていない 6) ことから、区分外とした。
吸入(蒸気):データなし
吸入(ミスト):ラットLC50 (4時間)値は>3.450mg/Lとのデータのみ 6) で区分が特定できないことから、分類できないとした。
皮膚腐食性・刺激性: ウサギを用いた試験で局所反応が認められなかった 6) ことから、区分外とした。
眼に対する重篤な損傷・刺激性: ウサギを用いた試験で、技術上の指針に示された刺激性の判定基準に該当する変化が認められなかった 6) ことから、区分外とした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:情報がなく分類できない
ヒトでのパッチテスト及び光パッチテストでは接触アレルギー性及び光アレルギー性の何れも認められなかったが、モルモットを用いたMaximization法試験で陽性率が30%以上であった 6) ことから、区分1とした。
アレルギー性皮膚反応を引き起こすおそれ
生殖細胞変異原性: 体細胞を用いる in vivo 変異原性試験であるマウス骨髄細胞を用いた小核試験で陰性の結果である 6) ことから、区分外とした。
発がん性: IARCでグループ3 7) ACGIHでA4 8) に分類されていることから、区分外とした。
生殖毒性: ラットを用いた3世代繁殖性試験、並びにラット及びウサギを用いた妊娠中投与試験で生殖機能、生殖能力及び児の発生に対する悪影響が認められなかった 6) ことから、区分外とした。
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
WHO"Recommended health-based limits in occupational exposure to pesticides"にヒトの急性毒性症状として神経系への影響を示す症状が起こるとの記述がある 6) ことから、神経が標的臓器と考え、区分1(神経系)とした。
神経系の障害
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
ラット、マウス及びイヌを用いた経口投与試験で重大な毒性が認められなかったこと、ならびにヒトへの反復経口投与で重大な毒性が認められなかった 6) ことから、区分外とした。
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性 甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 0.72μg/L 9) から、区分1とした。
水生生物に非常に強い毒性
水生環境慢性有害性 急性毒性が区分1、生物蓄積性が低いと推定されるものの(log Kow = 2.36 10) )、急速分解性がない(BODによる分解度:22% 11) )ことから、区分1とした。
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。
スプレー缶を廃棄する場合は、自治体により廃棄方法が異なるので該当する自治体の規定に従うこと。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 IMOの規定に従う。
UN No.: 3082
Proper Shipping Name: ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, LIQUID, N.O.S.
Class: 9
Packing Group: III
Marine Pollutant: P
航空規制情報 ICAO/IATAの規定に従う。
UN No.: 3082
Proper Shipping Name: Environmentally hazardous substance, liquid, n.o.s.
Class: 9
Packing Group: III
国内規制
陸上規制情報 消防法の規定に従う。
海上規制情報 船舶安全法の規定に従う。
国連番号: 3082
品名: 環境有害物質(液体)
クラス: 9
容器等級: III
海洋汚染物質: P
航空規制情報 航空法の規定に従う。
国連番号: 3082
品名: 環境有害物質(液体)
クラス: 9
等級: III
特別の安全対策

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第268号)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法):
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第155号)
消防法: 第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体
(法第2条第7項危険物別表第1)
船舶安全法: 有害性物質
(危規則第2,3条危険物告示別表第1)
航空法 : その他の有害物件
(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
1) 農水省「農薬中毒の症状と治療法」
2) 農薬登録申請資料
3) PD 29 (Access on Mar 2006)
4) HSDB (Access on Mar 2006)
5) ICSC (J) (1995)
6) 農薬抄録
7) IARC (Suppl.7, 1987)
8) ACGIH 7th (2001)
9) 農薬登録申請資料 (2005)
10) PHYSPROP Database (2005)
11) 既存化学物質安全性点検データ
12) ACGIH-TLV (2005)
災害事例
(1) パキスタンでマラリア媒介をする蚊の駆除のためマラチオンを散布した際、作業員2800名以上が中毒、内5名が死亡した。原因の一つとしてマラチオン中の不純物による毒性相乗効果があげられている。
(2) 主婦が、隣家の植木に散布されていたマラチオンを台所で浴び中毒を起した。