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安全データシート
2,2‐ジクロロ1,1,1トリフルオロエタン
(別名HCFC‐123)
作成日2002年 3月12日
改定日2006年 2月15日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: 2,2‐ジクロロ‐1,1,1‐トリフルオロエタン(別名HCFC‐123)
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03-1234-5678
緊急連絡電話番号: 03-1234-5678
FAX番号: 03-1234-5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: エアゾール用噴射剤、発泡剤、遠心式冷凍機用冷媒

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性: 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 区分外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 区分外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 区分外
水反応可燃性化学品 分類対象外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
健康に対する有害性: 急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮) 区分外
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 区分外
急性毒性(吸入:粉じん、
ミスト)
分類対象外(粉じん)
急性毒性(吸入:粉じん、
ミスト)
分類できない(ミスト)
皮膚腐食性・刺激性 区分外
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分2B
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 区分外
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 分類できない
生殖毒性 区分外
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経、肝臓)
区分2(心臓)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分1(肝臓)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境に対する有害性: 水生環境急性有害性 区分3
水生環境慢性有害性 区分3
ラベル要素
絵表示又はシンボル: 健康有害性
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 眼刺激
中枢神経、肝臓の障害
心臓の障害のおそれ
長期又は反復ばく露による肝臓の障害
水生生物に有害
長期的影響により水生生物に有害
注意書き: 【安全対策】
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを容易に外せる場合には外して洗うこと。
ばく露又はその懸念がある場合、医師の診断、手当てを受けること。
眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
【保管】
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。
国・地域情報:

3.組成、成分情報
物質
化学名又は一般名: 2,2‐ジクロロ‐1,1,1‐トリフルオロエタン (2,2-Dichloro-1,1,1-trifluoroethane)
別名: フレオン123 (Freon 123)
エッチ・シー・エフ・シー123 (HCFC-123)
フロン123 (Fron 123)
化学式: C2HCl2F3
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 306-83-2
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(2)-97
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲: 99%以上

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
医師の手当、診断を受けること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
医師に連絡すること。
飲み込んだ場合: 口をすすぐこと。
医師に連絡すること。
予想される急性症状及び遅発性症状: 眼の発赤、痛み、吸入による錯乱、めまい、し眠、意識喪失、高濃度の場合は酸素欠乏症状などがある。
最も重要な兆候及び症状:

5.火災時の措置
消火剤: この製品自体は、燃焼しない。
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 火災によって刺激性、又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 周辺火災の場合、移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器と化学用保護衣を着用すること。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
風上に留まる。
低地から離れる。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。後で廃棄処理する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行う。
安全取扱い注意事項: 接触、吸入又は飲み込んではならない。
使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
蒸気を吸入しないこと。
ミストを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
特別に技術的対策は必要としない。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 施錠して保管すること。
容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
容器包装材料: 包装、容器の規制はないが密閉式の破損しないものに入れる。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 設定されていない
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 10ppm 62mg/m3
ACGIH (2005年版) 設定されていない
設備対策: この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
高熱工程で粉じん、ヒューム、ミストが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度以下に保つために換気装置を設置する。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具: 適切な手袋を着用すること。
眼の保護具: 保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣を着用すること
衛生対策: この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色の液体 1)
臭い: 特徴的な臭い 1)
pH:
融点・凝固点: -107℃(融点) 1) ・-107℃(凝固点) 47)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 27.82℃(沸点) 4)
引火点: なし(密閉式) 15)
爆発範囲: 不燃性、引火点なし(非危険物) 36)
蒸気圧: 95709Pa(25℃) 4)
蒸気密度(空気 = 1): 6.4 1)
比重(密度): 1.48 (4℃/15℃) 38)
溶解度: 0.21g/100mL (25℃) 1)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 2.17 (推定値) 16)
自然発火温度: 770℃ 15)
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値: データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  該当しない
粘度: 0.42mPa (25℃) 36)

10.安定性及び反応性
安定性: 高温面や炎の接触により分解し、有毒ガス(塩化水素、フッ化水素)を生成する。
危険有害反応可能性: 情報なし
避けるべき条件: 高温面や炎との接触
混触危険物質: 情報なし
危険有害な分解生成物: 塩化水素、フッ化水素等の有害ガスが発生。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラット LD50 9000mg/kg 47)
経皮 ラット(雄5、雌5) LD50 >2000mg/kg 47)
2000mg/kgでは致死に至らず、病的異常も認められない。
経皮 ウサギ (雄5、雌5)LD50 >2000mg/kg 47)
2000mg/kgでは致死に至らなかったが、処理後5日以内で10匹中6匹に中程度の紅斑が認められた。
吸入(蒸気) ラット LC50 35000ppm(218.47mg/L) 47)
吸入(蒸気) ラット LC50 32000ppm(199.75mg/L) 47)
吸入(ミスト) 情報なし
皮膚腐食性・刺激性: OECDガイドラインに準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果、紅斑や浮腫の発生はなく皮膚刺激性は認められていない。 47)
区分外とした。
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: ウサギの眼に本物質の原液あるいは50%溶液を適用により、主に軽度から中等度の結膜刺激、軽度の角膜混濁が観察されている 47) が、3〜7日以内に完全に回復したとの記述がある。 33)
区分2Bとした。
眼刺激(区分2B)
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:情報なし。
皮膚感作性:モルモットを用いた皮膚感作性試験において、感作処置後の皮内注射による惹起でアレルギー反応を示さず、皮膚感作性が認めれていない。 47)
区分外とした。
生殖細胞変異原性: ラットのリンパ球を用いた染色体異常試験とマウス赤血球を用いた小核試験(いずれも in vivo 変異原性試験)において陰性結果が得られている。 47)
区分外とした。
発がん性: ラットに2年間吸入ばく露した試験において、ばく露に起因すると考えられる悪性腫瘍の発生はなかったが、肝細胞腺腫、胆管線維腫、ライディッヒ細胞腺腫、膵の腺房細胞腺腫の有意あるいは用量依存的な増加が認められている。 47) DFGによる分類(3B)を除き、他の評価機関の分類はなされておらず、分類できないとした。
生殖毒性: ラット及びウサギに妊娠期間中ばく露による児の生存・発生に及ぼす影響は認められない。 15) , 47)
ラットの2世代(F0の交配前から妊娠期間と授乳期間、F1の交配前から妊娠期間と授乳期間)にわたるばく露では、性機能・生殖能への影響は認められない。 47)
ラット及びサルで、主に分娩前後ばく露により乳汁あるいは新生児血中に代謝物が検出されているが、授乳による影響は認められなかった。 47)
区分外とした。
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
工業用冷却機が破裂し本物質のばく露を受けた40人の労働者にめまいや頭痛など中枢症状が報告されている。 47)
ドライクリーニングに従事する労働者が本物質を含む溶剤のばく露を受け肝機能検査値が上昇し、急性肝炎を発症した(ウイルス感染は否定されている)との報告がある。 15)
区分1(中枢神経、肝臓)とした。
肝への影響は、モルモットの吸入単回ばく露で肝機能検査値の上昇と肝に変性と壊死が観察されている。 47)
中枢神経、肝臓の障害(区分1)
フルオロカーボンをばく露されたヒトに冠状動脈疾患が発症した報告例がある。 4)
短期ばく露の影響として心臓障害の記述が見られる。 1)
イヌの、本物質のばく露では、心臓にアドレナリン過敏症を起こすとの試験結果が得られている。 47)
区分2(心臓)とした。
心臓の損傷のおそれ(区分2)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
職業的に本物質の反復ばく露を受け、肝機能検査値の上昇あるいは肝障害に至った複数のヒトの報告がある。 15) ,47)
区分1(肝臓)とした。
動物に2〜13週間反復投与した場合、肝への毒性影響が認められている。 47)
長期又は反復ばく露による肝臓の障害(区分1)
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: 甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 17mg/L 48) 他から、区分3とした。
水生生物に有害(区分3)
水生環境慢性有害性: 急性毒性が区分3、生物蓄積性が低いものの(BCF = 36 49) )、急速分解性がない(BODによる分解度:6% 49) )ことから、区分3とした。
長期的影響により水生生物に有害(区分3)

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 非危険物
海洋汚染物質: 非該当
航空規制情報 非危険物
国内規制
陸上規制情報 非該当
海上規制情報 非危険物
海洋汚染物質: 非該当
航空規制情報 非危険物
特別の安全対策 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法):
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第124号)
高圧ガス保安法: 不活性ガス(一般高圧ガス保安規則第2条4)
オゾン層保護法: 特定物質議定書付属書CのグループI(施行令第1条)

16.その他の情報
参考文献
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2) ホンメル (1991)
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8) DFGOT(1996)
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13) UNRTDG (13th, 2004)
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15) ECETOC JACC (2005)
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19) AQUIRE(2003)
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25) ECETOC TR48(2) (1998)
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28) ACGIH (1996)
29) RTECS(VZ200000) HSDB Full record
30) 産衛学会勧告 (2004)
31) IARC (2005)
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33) EHC 123(1992)
34) EHC(J) 134(1997)
35) Renzo (3rd, 1986)
36) 溶剤ポケットブック (1997)
37) Lange (16th, 2005)
38) Chapman ( 2005)
39) 環境省リスク評価第3巻(2002)
40) 混触危険ハンドブック(第2版 1997)
41) ATSDR (1997)
42) BSDB(2005)
43) CAMD(Access on May, 2005)
44) J Occup Health 45:137-139 (2003)
45) Eur Respr J. 25(1):201-204(2005)
46) DFGOT vol.12(1999)
47) NICNAS(1999)
48) CICAD23(2000)
49) 既存化学物質安全性点検データ
災害事例
(1) 電気機械器具製造業研究所の、密閉性の高い作業場において、HCFC-123を小出しビーカーに移し注射器により、ヒートパイプへ注入、漏洩検査を行っていた作業者4名が急性肝炎にかかり12〜31日間休業した。
(2)ホテルにてブライダル衣装の部分洗浄作業を市販の洗浄剤を使用して行っていたところ、1名に胸やけ、倦怠感、黄疸の症状がでた。その後、調査により、使用していた洗浄液に1,1−ジクロロ−2,2,2−フルオロエタンが含まれていたことが判明した。