安全データシート
イプシロン-カプロラクタム
作成日2002年11月28日
改定日2006年10月23日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: イプシロン-カプロラクタム
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03−1234−5678
緊急連絡電話番号: 03−1234−5678
FAX番号: 03−1234−5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 合成繊維樹脂用原料(ナイロン-6)

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 分類対象外
可燃性固体 分類できない
自己反応性化学品 分類対象外
自然発火性液体 分類対象外
自然発火性固体 区分外
自己発熱性化学品 分類できない
水反応可燃性化学品 区分外
酸化性液体 分類対象外
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
人健康有害性 急性毒性(経口) 区分4
急性毒性(経皮) 区分4
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん) 区分外
急性毒性(吸入:ミスト) 分類対象外
皮膚腐食性・刺激性 区分3
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分2A
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 区分外
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 区分外
生殖毒性 区分外
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分1(神経系、循環器系)
区分4(麻酔作用)
区分3(気道刺激性)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分1(呼吸器)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境有害性 水生環境急性有害性 区分外
水生環境慢性有害性 区分外
ラベル要素
絵表示又はシンボル: 感嘆符 健康有害性
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 飲み込むと有害(経口)
皮膚に接触すると有害(経皮)
軽度の皮膚刺激
強い眼刺激
神経系、循環器系の障害
眠気及びめまいのおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
長期又は反復ばく露による呼吸器の障害
注意書き: 【安全対策】
適切な保護手袋、保護眼鏡、保護面、保護衣を着用すること。
粉じん、ヒュームを吸入しないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取り扱い後はよく手を洗うこと。
【応急措置】
吸入した場合、被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
皮膚に付着した場合、多量の水と石鹸で洗うこと。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
皮膚に付着した場合、皮膚刺激が生じた場合、医師の診断、手当てを求めること。
眼に入った場合、水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼に入った場合、眼の刺激が持続する場合は医師の診断、手当てを受けること。
飲み込んだ場合、口をすすぐこと。
飲み込んだ場合、気分が悪い時は、医師に連絡すること。
【保管】
容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。
国・地域情報 国内法は第15章適用法令を参照のこと。

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: イプシロン-カプロラクタム(epsilon-Capurorakutam)
別名: イプシロン-アミノカプロラクタム(epsilon-Aminocaprolactam)
2-オキソヘキサメチレンイミン(2-Oxohexamethylenimine)
2-アザシクロへプタノン(2-Azacycloheputanone)
化学式: C6H11NO
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 105-60-2
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
(5)-1097
分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし
濃度又は濃度範囲 情報なし

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。
多量の水と石鹸で洗うこと。
医師に連絡すること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
医師に連絡すること。
飲み込んだ場合: 直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:粘膜・上気道の刺激、中枢神経系に影響
皮膚:刺激
眼:刺激
経口摂取:腹痛、下痢、吐き気
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項: 情報なし

5.火災時の措置
消火剤: 小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水、耐アルコール性泡消火剤
大火災:散水、噴霧水、耐アルコール性泡消火剤
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用すること。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(8.ばく露防止及び保護措置の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
風上に留まる。
低地から離れる。
環境に対する注意事項: 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 漏洩物を掃き集めて空容器に回収する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項: 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
粉じん、ヒュームの吸入を避けること。
眼に入れないこと。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 強酸化剤、強塩基から離して保管する。
容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 包装、容器の規制はないが密閉式の破損しないものに入れる。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 未設定
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 未設定
ACGIH(2005年版) TLV-TWA 5mg/m3 (吸入性粉じん、蒸気)
設備対策: 高熱工程で粉じん、ヒュームが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度・許容濃度以下に保つために換気装置を設置する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具: 適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣、顔面用の保護具を着用すること。
衛生対策: この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質 1) , 4) , 7) , 17) , 21)
物理的状態、形状、色など: 白色粉末(潮解しやすい)
臭い: 特徴的な臭気(弱い有機臭)
pH: データなし
融点・凝固点: 70℃(融点)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 267℃ 1)
引火点: 125℃(開放式)(引火点)
爆発範囲: 下限 1.4vol%  上限 8vol%
蒸気圧: 0.26Pa(25℃)
蒸気密度(空気 = 1): 3.91
比重(密度): 1.02(77/4℃)(密度)
溶解度: 5.25kg/L (水・25℃)
エタノール、エーテル、クロロホルム、ベンゼンに易溶。
シクロヘキサン、へキサンに難溶。
オクタノール/水分配係数: log Pow = -0.19
自然発火温度: 375℃
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値 データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  可燃性
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 潮解しやすい白色粉末
危険有害反応可能性: 水、アルカリ金属の存在下で開環重合してポリアミド(6-ナイロン)を生成する。
避けるべき条件: 湿気、混触危険物質との接触。
混触危険物質: 強酸化剤、強塩基
危険有害な分解生成物: 燃焼により、有害なガス(一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物など)を発生する。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラットを用いた経口投与試験のLD50 値 1475mg/kg 11) ,876mg/kg 11) 1210mg/kg 5) に基づき、計算式を適用して得られたLD50 = 1,210mg/kg から、区分4とした。 
飲み込むと有害(経口)
経皮 ウサギを用いた経皮投与試験のLD50 = 1,438mg/kg 4) に基づき、区分4とした。
皮膚に接触すると有害(経皮)
吸入(ガス) GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
吸入(蒸気) データ不足のため、分類できないとした。
吸入(ミスト) ラットを用いた吸入ばく露試験のLC50 (4時間) = 8.16 mg/L 11) に基づき、区分外とした。
皮膚腐食性・刺激性: ウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果 4) の記述から、4時間適用試験はないが軽度の刺激性を有すると考えられるので、区分3とした。
軽度の皮膚刺激
眼に対する重篤な損傷・刺激性: ウサギを用いた眼刺激性試験結果 4) の記述から、中等度 (moderate) の刺激を有すると考えられるので、区分2Aとした。
強い眼刺激
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:データがなく、分類できないとした。
皮膚感作性:2つのモルモットを用いた皮膚感作性試験の結果の記述にnot sensitizing 11) とあることから、区分外とした。
生殖細胞変異原性: 生殖細胞 in vivo 経世代変異原性試験なし、生殖細胞 in vivo 変異原性試験なし、体細胞 in vivo 変異原性試験(染色体異常試験、小核試験)で陰性である 7) , 8) , 11) , 12) ことから、区分外とした。
発がん性: ACGIHでA5 13) IARCで4 8) に分類されていることから、区分外とした。
IARC グループ4(ヒトに対しておそらく発がん性がない)
生殖毒性: 生殖細胞in vivo経世代変異原性試験なし、生殖細胞 in vivo 変異原性試験なし、体細胞 in vivo 変異原性試験(染色体異常試験、小核試験)で陰性である 6) , 8) , 10) ことから、区分外とした。
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ヒトについては、神経過敏、傾眠、鼻血、上気道カタル、鼻と口唇の乾燥、亀裂 4) 神経系、循環器系の障害 4) 等の記述があることから、神経系、循環器系が標的臓器と考えられ、気道刺激性、麻酔作用を持つと考えられた。以上より、分類は、区分1(神経系、循環器系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。
神経系、循環器系の障害
眠気又はめまいのおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
ヒトについては、鼻、上気道の刺激の後に、気管支の反応亢進、喘息反応、肺機能の低下の症状を含む呼吸器障害 14) 等の記述、実験動物については、努力性呼吸や鼻汁、湿性ラ音、鼻甲介呼吸粘膜の杯細胞で中程度の肥大及び過形成、嗅粘膜上皮細胞内のエオジン好性物質の蓄積 14) 等の記述があることから、呼吸器が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1に相当するガイダンス値の範囲でみられた。以上より、分類は、区分1(呼吸器)とした。
長期又は反復ばく露による呼吸器の障害
吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報
水生環境急性有害性: 魚類(ヒメダカ)の96時間LC50 >100mg/L 15) 他から、区分外とした。
水生環境慢性有害性: 難水溶性でなく(水溶解度 = 7.72×105 mg/L )10) 急性毒性が低いことから、区分外とした。

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
燃焼法 可燃性溶剤に溶解又は混合し、アフターバーナ及びスクラバ付き焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
汚染容器及び包装: 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 非該当
航空規制情報 非該当
国内規制
陸上規制情報 規制なし
海上規制情報 非該当
航空規制情報 非該当
特別の安全対策 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法)
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第61号)
海洋汚染防止法: 有害液体物質(D類)

16.その他の情報
参考文献
1) ICSC
2) RTECS (2004)
3) Gangoli (2nd, 1999)
4) CERIハザードデータ集 (1999)
5) 環境リスク評価第2巻(2003)
6) ACGIH (7th, 2001)
7) HSDB (2006)
8) IARC 71 (1999)
9) ECETOC TRI91 (2003)
10) APHYSPROP Database (2005)
11) SIDS(2003)
12) NTP DB (Access on September 2005)
13) ACGIH (2003)
14) 環境リスク評価第3巻 (2004)
15) 環境省生態影響試験 (2001)
16) 日本化学物質安全・情報センター化審法既存化学物質安全性点検データ集
17) 化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 (1992)
18) GHS分類結果 (NITE)
19) 日化協緊急時応急措置指針、容器イエローカード(ラベル方式)
20) 日化協化学物質法規制検索システム(CD-ROM) (2005)
21) 日本ケミカルデータベース(株)化学品総合データベース (2005)
22) Amoore,J.E. and Haulata,E. Jouranal of Applied Toxicology, 3(6) 272 (1983)
災害事例
(1) 61mg/m3 (12ppm)で重合過程の作業員が、口中に苦味、口唇粘膜の乾燥、鼻出血、上気道刺激症状などが見られた。
(2) 湿度の高いモノマー工場で、最高14ppmであったが、症状を訴えるものがなく、一方湿度の低いポリマー工場では100ppmで著明な鼻、咽頭粘膜刺激症状が認められたが、25ppm以下では眼粘膜刺激症状は見られなかった。しかし10ppmでも鼻及び咽頭の刺激が一過性に見られた。