安全データシート
チオりん酸0,0‐ジメチル‐0‐(3‐メチル‐4‐メチルチオフェニル)
(別名フェンチオン)
作成日2002年12月13日
改定日2006年8月21日

1.化学物質等及び会社情報
化学物質等の名称: チオりん酸0,0‐ジメチル‐0‐(3‐メチル‐4‐メチルチオフェニル)
製品コード: ○○○
会社名: ○○○○株式会社
住所: 東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号: 03−1234−5678
緊急連絡電話番号: 03−1234−5678
FAX番号: 03−1234−5678
メールアドレス:
推奨用途及び使用上の制限: 農薬

2.危険有害性の要約
GHS分類
物理化学的危険性 火薬類 分類対象外
可燃性・引火性ガス 分類対象外
可燃性・引火性エアゾール 分類対象外
支燃性・酸化性ガス 分類対象外
高圧ガス 分類対象外
引火性液体 区分外
可燃性固体 分類対象外
自己反応性化学品 分類できない
自然発火性液体 区分外
自然発火性固体 分類対象外
自己発熱性化学品 分類できない
水反応可燃性化学品 区分外
酸化性液体 分類できない
酸化性固体 分類対象外
有機過酸化物 分類対象外
金属腐食性物質 分類できない
人健康有害性 急性毒性(経口) 区分4
急性毒性(経皮) 区分4
急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
急性毒性(吸入:粉じん) 分類対象外
急性毒性(吸入:ミスト) 区分3
皮膚腐食性・刺激性 区分外
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 区分外
呼吸器感作性 分類できない
皮膚感作性 区分外
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 区分外
生殖毒性 区分2
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露)
区分1(神経系)
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露)
区分2(神経系)
吸引性呼吸器有害性 分類できない
環境有害性 水生環境急性有害性 区分1
水生環境慢性有害性 区分1
ラベル要素
絵表示又はシンボル: どくろ 健康有害性 環境
注意喚起語: 危険
危険有害性情報: 飲み込むと有害(経口)
皮膚に接触すると有害(経皮)
吸入すると有毒(ミスト)
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系の障害
長期又は反復ばく露による神経系の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き: 【安全対策】
使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
適切な保護手袋、保護衣を着用すること。
必要に応じて換気装置を使用し、ばく露を避けること。
蒸気、ミストを吸入しないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
【応急措置】
吸入した場合、被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
吸入した場合、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合、多量の水と石鹸で洗うこと。
皮膚に付着した場合、気分が悪い時は、医師に連絡すること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
飲み込んだ場合、口をすすぐこと。
飲み込んだ場合、気分が悪い時は、医師に連絡すること。
ばく露又はその懸念がある場合、医師の手当、診断を受けること。
漏出物は回収すること。
【保管】
容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
【廃棄】
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。
国・地域情報

3.組成、成分情報
化学物質
化学名又は一般名: チオりん酸0,0‐ジメチル‐0‐(3‐メチル‐4‐メチルチオフェニル)
(O,O-dimethyl O-(3-methyl-4-methylthio phenyl)thiophosphate)
別名: フェンチオン(Fenthion)
MPP
化学式: C10H15O3PS2
化学特性(化学式又は構造式): 化学式又は構造式
CAS番号: 55-38-9
官報公示整理番号
(化審法・安衛法):
安衛法 4-(9)-130
分類に寄与する不純物及び安定化添加物:
濃度又は濃度範囲

4.応急措置
吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに多量の水と石鹸で洗うこと。
医師の手当、診断を受けること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
目に入った場合: 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
医師の手当、診断を受けること。
飲み込んだ場合: 直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。吐かせる(意識がある場合のみ)。
予想される急性症状及び遅発性症状: 吸入:倦怠感、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、多汗、縮瞳、唾液分泌過多、意識混濁、全身痙攣。
皮膚:軽度の炎症、吸入される可能性がある。
眼:発赤、眼のかすみ。
経口摂取:錯乱、息切れ、嘔吐、胃痙攣、下痢、唾液分泌過多。
最も重要な兆候及び症状:
応急措置をする者の保護: 救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項: 特別の治療法が必要である。
中毒症状が発現した場合には、至急 2-ピリジルアルドキシムメチオダイド(別名PAM,プラドキシム沃化メチル)製剤又は硫酸アトロピン製剤を用いた適切な解毒手当てを行なう。ただし、2-ピリジルアルドキシムメチオダイド製剤を使用しても効果が認められなかった場合には、硫酸アトロピン製剤に変えること。

5.火災時の措置
消火剤: 小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水
大火災:散水、噴霧水、泡消火剤
使ってはならない消火剤: 棒状注水
特有の危険有害性: 極めて毒性が強い。
加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
大火災の場合、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合には、その場所から避難し、燃焼させておく。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用すること。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置: 作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
風上に避難する。
低地から離れる。
環境に対する注意事項: 環境中に放出してはならない。
河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
回収、中和: 蒸気、ミストの拡散を防ぐため、水で湿らせてから密閉可能な容器に回収する。
封じ込め及び浄化の方法・機材: 危険でなければ漏れを止める。
二次災害の防止策: 排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項: 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
蒸気、ミストの拡散を防ぐ。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後は、顔、手足など皮膚の露出部を石鹸でよく洗い、うがいをすること。
環境への放出を避けること。
接触回避: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管
技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 食品類と一緒に保管しない。
容器は直射日光や火気を避けること。
容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
施錠して保管すること。
容器包装材料: 国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度: 未設定
許容濃度(ばく露限界値、生物学的
ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 0.2mg/m3 (皮)
ACGIH (2005年版) TLV-TWA 0.2mg/m3 (skin)
設備対策: 気中濃度を推奨された管理濃度・許容濃度以下に保つために、工程の密閉化、局所排気、その他の設備対策を使用する。
この物質を貯蔵又は取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸器の保護具: 必要に応じて適切な呼吸器保護具を使用すること。
手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具: 必要に応じて個人用の眼の保護具を使用すること。
皮膚及び身体の保護具: 適切な保護衣、顔面用の保護具を着用すること。
衛生対策: この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態、形状、色など: 無色−黄色液体 3) , 7)
臭い: 僅かににんにく臭
pH: データなし
融点・凝固点: 7.5℃(融点) 13) 7℃(融点) 5)
沸点、初留点及び沸騰範囲: 90℃(1Pa)(沸点) 7) 87℃(1.3Pa)(沸点) 2) 105℃(1.3 Pa)(沸点) 3)
引火点: 170℃ 1)
爆発範囲: データなし
蒸気圧: 3.9mPa(20℃) 3) 0.004Pa(20℃) 2)
蒸気密度(空気 = 1): データなし
比重(密度): 1.25(比重) 7)
溶解度: 水に微溶。 4.2mg/L・水 7) 7.5 mg/L・水 11)
アセトン キシレン 酢酸エチル DMF アセト二トリル ジクロロエタンに可溶。 7)
オクタノール/水分配係数: log Pow = 4.09 (測定値) 5) , 11)
自然発火温度: データなし
分解温度: データなし
臭いのしきい(閾)値 データなし
蒸発速度(酢酸ブチル = 1): データなし
燃焼性(固体、ガス):  可燃性
粘度: データなし

10.安定性及び反応性
安定性: 通常の取り扱い条件においては安定。
加熱すると分解し、りん酸化物、イオウ酸化物などの有毒なヒュームを生ずる。
危険有害反応可能性: pH 9までのアルカリには安定。
避けるべき条件: 加熱。
混触危険物質: 情報なし。
危険有害な分解生成物: 燃焼により、一酸化炭素、二酸化炭素、りん酸化物、イオウ酸化物などを発生する。

11.有害性情報
急性毒性: 経口 ラットLD50 320mg/kg  509mg/kg 7) のデータは共に区分4の範囲であることに基づき区分4に分類した。
飲み込むと有害(経口)
経皮 ラットLD50 2000mg/kg  2000mg/kg 7) に基づき区分4に分類した。
皮膚に接触すると有害(経皮)
吸入(蒸気) データなし
吸入(ミスト) ラットLC50 1.2mg/L0.8mg/L 7) のうち、低い値に基づき区分3に分類した。
吸入すると有毒(ミスト)
皮膚腐食性・刺激性: ウサギの試験で、ほとんど刺激性がない(ドレイズスコア 0.4) 7) に基づき区分外に分類した。
眼に対する重篤な損傷・刺激性: ウサギの試験において、刺激性なしとの結果 7) に基づき区分外に分類した。
呼吸器感作性又は皮膚感作性: 呼吸器感作性:データなし
皮膚感作性:モルモットを用いたMaximization法により感作性が認められなかったこと 7) に基づき区分外に分類した。
生殖細胞変異原性: 生殖細胞を用いる in vivo 経世代変異原性試験(マウスの優性致死試験)及び体細胞を用いる in vivo 変異原性試験(マウスの骨髄細胞を用いる染色体異常試験、マウスの小核試験)で陰性の結果 7)  そしてそれ以外に陽性結果を示す試験がないことに基づき区分外に分類した。
発がん性: ACGIHでA4に分類されていること 4) に基づき区分外に分類した。
なお、マウスの発がん試験でも発がん性を示す所見はなかった。 7)
生殖毒性 ウサギの妊娠期投与により親動物で影響がある用量で後期吸収胚の増加が認められたこと、又、ラットの二世代試験において親動物に影響がある用量で受胎率、出生率、生存率、哺育率の低下、平均着床数及び平均同腹児数の低下、死産児数の増加が認められたこと7) に基づき区分2に分類した。
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
特定標的臓器・全身毒性
(単回ばく露):
ヒトで神経系への影響(コリンエステラーゼ阻害による影響、かすみ目、ふらつき、昏睡、刺激に対する反応なし、呼吸困難)が見られたこと 4) , 9) に基づき区分1(神経系)に分類した。
なお、ラットの試験においてもコリン作動性の影響や振戦、痙攣、自発運動の低下、流涎等の神経系への影響 6) , 7) が見られている。
神経系の障害
特定標的臓器・全身毒性
(反復ばく露):
ラットでの3ヶ月間の反復経口投与試験で、コリンエステラーゼ阻害とコリン作動性の症状(振戦、痙攣等)が認められ、その用量は区分1のガイダンス値の範囲であること7) に基づき区分1(神経系)に分類した。
長期又は反復経口ばく露による神経系の障害のおそれ
吸引性呼吸器有害性: データ不足のため分類できない
12.環境影響情報
水生環境急性有害性: 甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 0.00087mg/L 8) から、区分1とした。
水生生物に非常に強い毒性
水生環境慢性有害性: 急性毒性区分1、急速分解性がないと推定され、生物蓄積性がある(BCF≧500) 8) ことから、区分1とした。
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性

13.廃棄上の注意:
残余廃棄物: 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上、処理を委託する。
燃焼法 木粉(おが屑)等に吸収させるか、可燃性溶剤とともにアフタバーナ及びスクラバ付き焼却炉の火室で、焼却する。
汚染容器及び包装: 空容器を廃棄する時は、内容物を完全に除去した後に処分する。
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務を委託すること。

14.輸送上の注意
国際規制
海上規制情報 IMOの規定に従う。
UN No.: 3018
Proper Shipping Name: ORGANOPHOSPHORUS PESTICIDE, LIQUID, TOXIC
Class: 6.1
Packing Group: III
Marine Pollutant: Not applicable
航空規制情報 ICAO/IATAの規定に従う。
UN No.: 3018
Proper Shipping Name: Organophosphorus pesticide, liquid, toxic
Class: 6.1
Packing Group: III
国内規制
陸上規制情報 毒物及び劇物取締法の規定に従う。
海上規制情報 船舶安全法の規定に従う。
国連番号: 3018
品名: 有機リン系殺虫殺菌剤類(液体)(毒性のもの)
クラス: 6.1
容器等級: III
海洋汚染物質: 非該当
航空規制情報 航空法の規定に従う。
国連番号: 3018
品名: 殺虫殺菌剤(有機リン系)(液体)(毒性のもの)
クラス: 6.1
等級: III
特別の安全対策 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
重量物を上積みしない。
移送時にイエローカードの保持が必要。

15.適用法令
労働安全衛生法: 名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法)
第1種指定化学物質
(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
(政令番号 第193号)
毒物及び劇物取締法 劇物
(法第2条別表第2)
船舶安全法 毒物類・毒物
(危規則第2,3条危険物告示別表第1)
航空法 毒物類・毒物
(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
1)バイエルクロップサイエンス株式会社資料
2)Merck (2006)
3)Ullmanns (E) (5th, 1995)
4)ACGIH (2001)
5)HSDB (2006)
6)JMPR (1965)
7)農薬抄録
8)農薬登録申請資料(2004)
9)JMPR (1980)
10)SRC(2006)
11)Howard (1997)
12)Verschueren (4th, 2001)
13)PM (10th, 1994)
14)NITE「既存化学物質安全点検データ」
15)化学物質の危険・有害性便覧 中央災害防止協会 1992
16)GHS分類結果(JETOC・NITE)
17)日化協「緊急時応急措置指針、容器イエローカード(ラベル方式)」
18)日化協「化学物質法規制検索システム」(CD-ROM) (2005)
19)日本ケミカルデータベース(株)「化学品総合データベース」(2005)
20)Amoore,J.E. and Haulata,E. Jouranal of Applied Toxicology, 3(6) 272 (1983)
災害事例
情報なし