食品機械による労働災害の多くは、スライサーやカッターによる手指の切傷と、ミキサーやロールによる手指の巻き込まれです。これらの災害に対しては、丸のこ盤や帯のこ盤、粉砕機や混合機、及びロール機の災害防止対策が活用できます。ただし、食品機械では安全だけでなく食品衛生にも配慮する必要があります。例えば、食品と接触する部分のステンレス化、突起のない構造、洗浄しやすい構造などは、いずれも食品衛生上の配慮からです。したがって、災害防止対策に利用するガードや保護装置なども当然これらの条件を満足する必要があります。
具体的な対策としては、作業者が運転中の可動部に接触するおそれのあるときは、固定式ガード、インタロック式ガードまたは安全装置を設ける必要があります。このとき、ガードを取り外したときは機械を運転できないこと、及びインタロック式ガードに設けたスイッチ類は容易に無効化できないことが必要です。
また、可動部に近接して清掃などの作業を行うときは、機械の運転を停止する必要があります。これが困難なときは、機械を手動で操作できる装置を設けるか、または機械の運転を低速で行い、かつ、作業者が操作しているときに限って機械が運転を継続するホールド・ツー・ラン装置などを設ける必要があります。このとき、複数の作業者が共同して作業を行うときは、他の作業者が誤って機械を起動するという問題が考えられます。そこで、このような場合は、必要に応じてロックアウトなどの施錠装置を利用し、他の作業者による誤った起動を防止する必要があります。
以上の対策は、現在のところ食品機械のユーザーが実施しているケースが大部分です。しかし、機械の本当の危険性を知っているのは設計・製造者であり、設計・製造段階での対策が最も効果的で、対策に要する必要も少ないと考えられます。したがって、今後の食品機械に対する設備対策は原則としてメーカーが中心となって行い、残留リスクに対してのみユーザーが取り組むなどの役割分担を明確にすべきです。