支保工の切梁(きりばり)を移動クレーンで吊上げたときに、腹起(はらおこ)しが落下し2名が死傷
業種 | 道路建設工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 支保工 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 道路建設工事 | ||||
災害の種類 | クレーン等で運搬中のものが飛来・落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 安全帯を備え付けていない | |||||
発生要因(人) | 錯誤など | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100424
発生状況
この災害は、地下道建設工事において、土止め支保工の一部を解体するため、切梁(きりばり)を移動式クレーンで搬出する作業中、腹起(はらおこ)しが落下し、作業者2名が死傷したものである。災害発生当日、工事を進めるうえで土止め支保工の切梁(きりばり)が邪魔になったため、盛り変え作業を行うことになり、3次下請X社の作業者3名とクレーン運転者で作業を行った。
切梁(きりばり)の搬出作業は、地上から7mの深さのブラケット上に載せてある腹起(はらおこ)しと切梁(きりばり)を結合しているボルトをはずした後、切梁(きりばり)を地上の覆工板(ふっこうばん)上に設置した25tの移動式クレーンで吊り上げて搬出するもので、Aが覆工板(ふっこうばん)上で作業指揮と合図を行い、地下でBと Cが玉掛けとボルト外しを行った。搬出する切梁(きりばり)4本のうち最後の1本は、Bが玉掛けした後、腹起(はらおこ)しと切梁(きりばり)を固定しているボルトを腹起(はらおこ)しに乗って上から外そうとしたが、1本外れなかったので、Cが腹起(はらおこ)しの下から手伝った。
これを見ていたAが合図してクレーン運転者Dが切梁(きりばり)を吊り上げたが、腹起(はらおこ)し(質量約1.2トン)も一緒に持ち上がり、これがブラケット上に落下した。ブラケットは衝撃で壊れ、腹起(はらおこ)しは落下してCが下敷きになって死亡し、腹起(はらおこ)しの上のBも墜落して重傷を負った。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 腹起(はらおこ)しと切梁(きりばり)の結合ボルトの外れを確認せずに切梁(きりばり)を吊り上げたこと
腹起(はらおこ)しからボルトが完全に外れていないのに搬出する切梁(きりばり)を吊り上げたため、腹起(はらおこ)しもいったん吊り上げられ、その後落下した。
2 墜落の危険のある箇所にとどまっていたこと
作業者Cがボルトを外した後も、作業者Bは腹起(はらおこ)しの上で墜落の危険があるところにとどまっていた。
また、作業者Cは吊り荷などが落下する危険のある場所に居た。
3 ブラケットの強度が不十分であったこと
ブラケットは、土止め支保工に溶接されていたが、溶接時の溶け込みが不足していたため、ブラケットの溶接強度が十分でなかった。
4 作業指揮者の指示が適切でなかったこと
作業指揮者の指示が適切ではなく、作業の確認や作業者を危険場所から退避させる等の措置を講じなかった。
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。1 移動式クレーンで荷を吊り上げる場合には、吊り荷の状態を十分確認した後に巻き上げを実施すること
移動式クレーンで切梁を完全につり上げるためには、腹起しと結合しているボルトを完全に取り外すことが必要であり、取外しを担当する者だけではなく、合図者も吊り上げる前にこれを確認することが必要である。
2 荷の下への立ち入りを禁止すること
移動式クレーンなどで切梁(きりばり)を運搬するときには危険のある範囲への立ち入りを禁止する。
3 墜落危険のある場所では、墜落防止措置を行うこと
高所作業などで墜落の危険がある場所で作業を行わせるときには、安全帯の着用等を作業者に励行させることが必要である。
4 ブラケット等の溶接は十分な技能を有する者に行わせること
5 統括安全管理体制を整備し、現場の巡視、作業指揮者の安全再教育の実施等安全管理を徹底すること