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労働災害事例

ゴルフ場で伐倒木の片付け中にトラクターショベルが横転し下敷となる

ゴルフ場で伐倒木の片付け中にトラクターショベルが横転し下敷となる
業種 ゴルフ場
事業場規模 100〜299人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 整地・運搬・積込み用機械
災害の種類(事故の型) 転倒
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100894

発生状況

 この災害は、ゴルフ場において伐倒した枯れ木の片づけ作業中に発生したものである。
 このゴルフ場では、コース管理を管理部が自ら実施しており、毎日の業務として散水、芝刈りのほか虫害や水不足による枯れ木の伐採・処理等を行っている。
 災害発生当日、被災者ら8名は、コース内の既に伐採していた黒松の枯れ木等の片づけを行うことになり、午前中はチェンソーを使用して枝払いをし、幹は2m程度に切断してトラクターショベル(機体総質量2.5t)でトラックに積み込む作業を行った。
 午後になって、黒松(根元の直径24cm,外周72cm,長さ10m)の処理を行おうとしたが、木が沼地に伐倒されていたため、その場でチェンソーによる切断を行うことは無理と考えられたので、作業のしやすいところまでトラクターショベルで牽引することにした。
 被災者がトラクターショベルに乗り、後進で牽引することにし、主任がワイヤロープ(直径10mm)をトラクターショベルのアーム部分に結びつけ、バケットをかなり高い位置にした状態で約11m後進したときに、トラクターショベルが横転し、被災者はその下敷きになった。
 主任等によってトラックを使用してトラクターショベルを起こし、被災者を救出したが全く反応がなく、救急車で病院に移送されて間もなく死亡した。
 なお、このゴルフ場には、車両系建設機械(整地・運搬・積み込み)の技能講習修了者は、被災者を含めて3名いたが、被災者が入社前に建設会社で車両系建設機械の運転を専門に行っていたことから、最近ではトラクターショベルの運転は専ら被災者が行っていた。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 作業場所が傾斜地であったこと
 被災者がトラクターショベルで黒松の枯れ木を牽引した場所は、黒松が伐倒されていた位置から約3m高い位置(ワイヤロープの長さは約13m)にあって、しかもアームの位置をかなり高くして、運転席が横に傾いた状態で枝が付いたままの黒松を牽引したため、横方向の力が強く働いて横転したものと推定される。
2 作業手順の検討を行わずに作業を実施したこと
 被災者は、黒松の牽引に当たり特段の検討や指示も受けることなく、トラクターショベルのアームにワイヤロープを結び付け後進で運転する方法を採用した。
 このゴルフ場で同様の作業方法を行ったことは皆無ではなかったが、限定的に行われていたものであり、一般的にはトラクターショベルの後方に取り付けてある牽引用ピンにワイヤロープを取り付けて前進で牽引しており、コース管理者もそのような作業方法であると認識していた。
3 誘導者を配置していなかったこと
 傾斜地等で車両系建設機械を用いて作業を行うときには、転倒又は転落による危害を防止するため誘導者を配置し、その者に機械の誘導を行わせる必要があるのに、誘導者を配置していなかった。
4 安全管理が不十分であったこと
 このゴルフ場では、安全管理者の選任がなされてはいたが、コース管理で機械を使用する場合の機械の運行経路、作業手順の策定、作業の分担等に関しては関与しておらず、実質的な職務は行っていなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を明確に定めること
 車両系建設機械を使用して作業を行う場合には、あらかじめ地形等を調査して次の事項が示されている作業計画を作成する。(安衛則第155条)
(1)  使用する車両系建設機械の種類および能力
(2)  車両系建設機械の運行経路
(3)  車両系建設機械による作業の方法
 なお、作業途中において作業方法等を変更する場合には、作業の責任者に連絡し、その指示を受ける。
2 誘導者を配置して作業を行うこと
 車両系建設機械を用いて路肩、傾斜地等で作業を行う場合で、機械の転落又は転倒による危険が生ずるおそれがあるときには、誘導者を配置し、その者に機械の誘導を行わせる。(安衛則第157条)
 また、誘導に当たっては、一定の合図を定めておきそれに基づいた誘導を行わせる。(安衛則第159条)
3 安全衛生管理を行うこと
 ゴルフ場においては、コース管理作業に伴った災害が少なからず発生しているので、定型的な車両系建設機械を使用する作業等について、あらかじめ安全作業のための手順を定め関係者に教育訓練するとともに、毎日の作業の前に危険予知等により安全作業のポイントの確認と指示を行う。
 また、安全管理者は、コース内における作業の安全、キャディの安全等について安全衛生委員会等を通じで周知するとともに、定期あるいは随時にコース内の作業場所等を巡視し、作業の実態把握と必要な指示を行う。