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労働災害事例

警備会社の作業者が屋上の駐車場から自動車専用エレベーターに誘導中、搬器から墜落

警備会社の作業者が屋上の駐車場から自動車専用エレベーターに誘導中、搬器から墜落
業種 警備業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) エレベータ、リフト
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 機械、装置等を指定外の方法で使う

No.100850

発生状況

 この災害は、屋上の駐車場から、乗用車を自動車専用エレベーターの搬器に載せるために誘導していた作業者が、搬器の後ろ端から墜落したものである。
 厨房機器販売会社が警備会社に対して、屋上に駐車場のあるショールーム開店の警備を委託した。この建物は、厨房機器販売会社が中古自動車販売会社の建物を買って、その設備を使用しているもので、エレベーターは自動車専用として製造許可されたものである。
 エレベーターは油圧式で、自動車が運転者ごと1Fの入り口から搬器に乗り込み、屋上で1Fとは反対側の出口から出ることができる構造になっていて、搬器は前後の出入り口に扉はなく、左右は高さ1.8mの囲いが設けられている。操作盤が搬器の左右両サイドの中央にあり、運転者は自動車の運転席の位置が右側でも左側でも自動車に乗ったまま、自動車の運転席から操作盤を操作できるようになっている。
 災害発生当日、警備会社の作業者が誘導員としてエレベーターの搬器に乗り込み、1Fで客が運転して乗り込んだ車を、操作盤を操作して3F屋上駐車場まで運搬して車を搬器から出たところで、入れ違いに乗り込んでくる乗用車を搬器に載せるため、搬器の床上を後ろ向きに後ずさりしながら誘導していて、搬器の後ろ端と昇降路との約50cmの隙間から墜落したものである。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  出入り口に扉がなく、また、床端と昇降路との間に隙間のある自動車専用エレベーターの搬器へ誘導者を乗せて運転させたこと。
 このエレベーターは操作盤が搬器の両側面の中央にあり、エレベーターの運転は自動車に乗ったまま、自動車の運転席から操作するように設計されている。
 自動車販売会社が使用しているときは、社員が自動車を運転し、車内に乗ったまま操作するため搬器の出入り口には扉が設けられていない特別な構造のエレベーターとして製造許可され、搬器に人が直接乗用することは禁止されていた。
 厨房機器販売会社が建物をエレベーターごと購入してショールームに変更してからは、 多数のエレベーターの操作を知らない客がくるようになり、搬器に直接誘導者が搭乗してエレベーターを操作させていた。
2  警備会社にエレベーターを使用させた場合、搬器には人は乗用禁止であることなど安全な使用方法について十分指示していないこと。
 操作盤に乗用禁止の表示があるにもかかわらず、搬器に直接誘導者が搭乗して操作させるなど、設備貸与会社による取扱いの説明が十分でなく、かつ、安全についての打合わせも十分行っていなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  エレベーターの搬器の出入り口に扉を設けること。
 自動車に乗ったまま操作する乗用禁止の特別な構造のエレベーターとして、扉が設けられていなかったが、搬器の出入り口に扉を設け、エレベーターの搬器に乗って運転操作する方式に改める。
2  業務を委託してエレベーター等の設備を委託業者の作業者に使用させる場合には、安全な取り扱い方法について説明し、安全に作業が遂行できるように指導すること。
 業務を委託するときにエレベーター等の設備については、委託業者に取扱説明書の写しを交付するなどにより、安全作業について十分な打ち合わせを行う必要がある。
3  他社に出張して、その設備を使用する場合には、設備を貸与される会社から安全な使用方法について説明を受け、作業者に周知徹底すること。
4  設備を使用させる発注会社においても現場の安全管理を徹底すること。
 安全担当者を選任して定期に安全パトロールを実施し、作業の安全を確認するとともに、その他リスクについても点検する。なお、初回は作業開始時に行うことが必要である。