この災害は、貸ビルの電気室に設備管理のため常駐している責任者以下8名で毎年実施している定期点検中に発生したものであるが、臨時的な作業や初めて電気室に入った者ならいざ知らず周辺状況、作業内容を熟知している者の災害として注目される。
 直接的な災害原因は、負荷のかかった状態で断路器を開放したことにあり、そのため遮断アークが発生し、断路器の開放作業を行なっていた3名がそれを浴びたものであるが同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 作業方法の徹底
 停電作業を行なう場合には、作業者に対し、作業を行なう期間、作業の内容、取り扱う電路、近接する電路の系統に周知させ、かつ、指揮者を定めて次のことを行なわせること。
  (1) 作業者にあらかじめ作業の方法、順序を周知するとともに、作業を直接指揮すること。
(2) 電路を開路して作業を行なうときには、電路の停電の状態、開路に用いた開閉器の施錠、通電禁止の表示、監視人の配置の状態等を確認した後に作業の着手を指示すること。
2 断路器の開放時の措置の徹底
 高圧又は特別高圧の断路器等で負荷電流をしゃ断するためのものでないものを開路するときには、断路器等の誤操作を防止するため、当該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ、当該電路の系統を判別するためのタブレット等により、操作を行なう者に電路が無負荷であることを確認させること。
3 作業者に対する再教育
 高圧又は特別高圧の電路の修理等に従事する作業者については、労働安全衛生法の定めるところにより、安全に関する次のような内容の「特別教育」を実施することが義務づけられているが、作業場所の設備の変更、作業方法の変更等のほか慣れによる危険も予測されるので一定の時期ごとに再教育を実施すること。
  (1) 高圧又は特別高圧の電気に関する基礎知識
(2) 高圧又は特別高圧の電気設備に関する基礎知識
(3) 高圧又は特別高圧用の安全作業用具に関する基礎知識
(4) 高圧又は特別高圧活線作業又は活線近接作業の方法
(5) 関係法令
 なお、高圧又は特別高圧の回路を停電して作業を行なう場合、充電電路を取り扱う作業を行なう場合には、次のような措置を徹底することも重要である。
  (1) 停電作業を行なう場合
・ 開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する表示し、又は監視人をおくこと。
・ 回路した電路が電力ケーブル、電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により残留電荷を確実に放電させること。
・ 検電器具により、停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に接地すること。
・ 停電作業中、又は作業が終了し通電するときには、作業者に感電の危険がないことを必ず確認すること。
(2) 充電電路の点検、修理等の取り扱い作業を行なう場合
・ 作業者に絶縁用保護具を着用させ、また、取り扱っている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより危険のある場所には絶縁用防具を取り付けること。
・ 作業者に活線作業用器具を使用させること。
・ 作業者に活線作業用装置を使用させること。
・ 作業者は、絶縁用防具の使用、絶縁用保護具の着用、活線作業用器具、活線作業用装置の使用を命ぜられたときには確実に実行すること。